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流暢でなくても… メトロが「肉声」英語放送に挑む理由

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朝日新聞デジタル掲載
英語アナウンスの導入を進めた検討チームの運転士、松住紘樹さん(左)と車掌の大室知志さん

 ディス トレイン イズ バウンド フォー ○○(この電車は○○行きです)――。東京メトロが2019年から、乗務員の肉声による英語の車内放送に取り組んでいることに気づきましたか。流暢(りゅうちょう)な人もいれば、片仮名を読み上げるようなちょっとたどたどしい人もいて個性豊かです。録音された自動アナウンスもあるのに、なぜ?

 きっかけは東京五輪・パラリンピックの招致決定だった。「海外からのお客さんのためにメトロに何ができるのか考えてほしい」。15年、社の上層部から各路線の現場の車掌や運転士に声がかかり、計8人の特命チームができた。

 検討を進める中で世界的な旅行ガイドブック「ロンリープラネット」を開いてみると、日本の鉄道について「速く正確で信頼できる。でも英語はインドやシンガポールに比べて通じない」と書かれていた。

 有楽町線・副都心線の統括運転士、松住紘樹さん(39)は「寸分たがわない評価だと思った」と苦笑い。外国人にどんなニーズがあるのか探ろうと、浅草駅と銀座駅でインタビュー調査をしてみた。「非常時のアナウンスに英語がなく不安」という声があった。また、緊急停車が長時間に及んだ場合にどうするか尋ねた問いに、「車外に脱出する」を選ぶ人がいたことに驚いた。

 非常用の自動アナウンスは用意されているものの、感情がこもる肉声の方が緊迫感が伝わりやすい。いざという時、「車内にとどまってください」「私についてきてください」などの英語が自然に出るよう平時から慣れておこう。そのために普段から肉声での放送に挑もう。目標が定まった。

 まずは「終点です」や間隔調整の「少々お待ちください」など三つの基本フレーズから始めることにした。YouTubeでニューヨークやロンドンの地下鉄の動画を探しては文面を練り、最終的に社の国際業務部に監修してもらった。(伊木緑)

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