神奈川大学副学長、国際センター所長 的場 昭弘
専門は社会思想史、とりわけマルクスの研究で有名。
超訳『資本論』祥伝社、『マルクスだったらこう考える』光文社新書、『カール・マルクス入門』作品社など著書多数。
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■建学の理念に通じるSDGs
神奈川大学のルーツは1928年、京浜工業地帯の若者たちが働きながら学べるようにとスタートした夜間学校にあります。この建学の思いは、 SDGs が目指す「誰一人取り残さない」持続可能で多様性と包摂性のある社会の実現という理念に一致するとわたしは思っています。それからおよそ1世紀を経た2019年、わたしたちは「SDGs への神奈川大学のコミットメント」を策定、事業計画の重点項目に「SDGs の推進」を掲げました。その前年には「神奈川大学ダイバーシティ宣言」を発表。世界の恒久平和と人類の幸福に貢献できる市民を育成し、差別や偏見の根源的な解決を目指すことを誓っています。
SDGs、そしてその実現に欠かせないダイバーシティ(多様性)への取り組みは、先生方による教育・研究の成果として早くも現れており、SDGs を軸に大学の社会貢献度を測る、イギリスのTimes Higher Education(THE)による「THE University Impact Ranking」においては、2019年・2020年の2年連続で指標となる全 SDG でランクインしたのみならず、四つの目標では世界101〜200位にランクづけされました。本学の自治体・地元コミュニティーとの連携等の取り組みも評価されたものと考えています。
■国際学生寮はダイバーシティの象徴
このSDGsとダイバーシティへの 取り組みの象徴とも言えるのが、2019年に完成した地上4階、209の居室を備える国際学生寮「栗田谷アカデメイア」ではないでしょうか。アカデメイアとは哲学者プラトンの開設した学園の名前ですが、そこでは諸国から集まった多くの若者たちが自由に学び語り合っていたように、「栗田谷アカデメイア」は日本人の学生と留学生たちがともに生活しながら主体的に学び、SDGs を推進するグローバルな人間として成長できるように設計されています。寮内は新しい発見や出会いのある「まちのような学生寮」をコンセプトに、個性豊かな多目的空間や“ストリート”が数多く配置されており、また、個室には寝室の機能だけが与えられているので、おのずと寮生たちは共有空間において触れ合い、国籍を超えたコミュニティーが自然に形成されるようになっています。
3棟のうち2棟がジェンダーフリーで、シェアキッチンの一カ所はハラール用としました。寮内ではわたしたちが設計したSDGs-PBL(課題解決型)プログラムなどにもとづいて、グローバル人材としての必要なスキルを学ぶことができます。この先進的な環境のもとで、寮生たちが自主ゼミなどのかたちで、自らが学びを創造してくれることを願っています。
■グローバル教育の拠点みなとみらいキャンパス
ランドマークタワーや横浜美術館などがある横浜の顔ともいえる街に、2021年にオープンする「みなとみらいキャンパス」もまた、「『国際・日本』の融合した未来『創造・交流』キャンパス」をコンセプトに、SDGs推進の拠点とすることを目指しています。21階建ての高層の校舎には、国際日本学部などグローバル教育に重点を置く学部が集められます。一方、低層階には国内外から集う多様な人々が交流するグローバルラウンジなど、ダイバーシティを体現するさまざまな施設を整備し、学生だけでなく広く横浜市民の皆さんに向けて提供する予定です。ここにかつてフランスで流行した哲学カフェのようなものが生まれないだろうかと、わたしは心密(ひそ)かに夢想しているところです。
寛容と自由。それが神奈川大学の伝統と特色であり、「対立と分断」「排除と不寛容」が錯綜する国際社会に向けてわたしたちが積極的に発信していくべき価値です。 神奈川大学にはグローバルな環境とダイバーシティ──すなわち「世界」がすでに目前に開かれています。SDGsの理想を実現するためにも、柔軟でありつつ、ものおじしない、世界基準の学生を育てていくことが、わたしたちの使命なのです。
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