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追い風が吹く電動自転車 試乗してみてわかったこと

ニューヨークタイムズ 世界の話題
New York Times writer Brian Chen rides the electric Ride 1Up 700, which sells for $1,495, in San Francisco on March 28, 2020. A VanMoof S3 e-bike cost $1,998. (Jim Wilson/The New York Times)
米サンフランシスコでRide1Up700を試乗する筆者のBrian Chen=2020年3月28日、Jim Wilson/©2020 The New York Times

コロナ禍がもたらした現実と、どうつき合うか。そんな自問をしながら、当初の嘆きは「適応」という新たな段階に入ったようだ。

その一例として米国で目立つのは、電動自転車(訳注=electric bike,e-bike~電動アシスト自転車も含む訳語とした)の購入だ。そこには、(訳注=誰と乗り合わせるか分からない)公共交通機関や配車サービスのウーバーの利用を避けたいという通勤者の切実な選択がある。自宅に長らく閉じ込められた後で、待ち焦がれていた新鮮な空気に触れたいという願いも込められている。

だから、現在の電動自転車の品薄状況は、とくに驚くことではないだろう(少し前まで、手指の消毒剤が手に入りにくかったようなものだ)。

売れ行きは、2020年3月に前年同月比で85%もはね上がった(米市場調査会社NPDグループ調べ)。どのモデルも、アマゾンや小売り大手のウォルマート、総合サイクリングブランドのSpecialized(訳注=以下、自転車のブランド名は原文表記)では、ほぼ売り切れ状態になっている。より規模の小さなブランドRide1UpとVanMoofでも、順番待ちのリストができている。

The control panel of the Ride1Up e-bike in San Francisco on March 28, 2020. The panel offers nine pedal-assist levels. (Jim Wilson/The New York Times)
Ride1Up700のハンドルにある制御パネル=サンフランシスコ、2020年3月28日、Jim Wilson/©2020 The New York Times

電動自転車にとっては、大きな変化だ。一昔前までは、ペダルをこぐのが嫌な怠け者か年配者の乗り物という烙印(らくいん)を押されていたからだ。しかし、今では、ボタン一つでペダルを軽くしてくれる。自転車に乗ることは、きつさから解き放たれ、楽に走って楽しむものへと変わった。

「電動自転車は、世界の街の様子を今後10年で根本的に変える」。VanMoof(本拠オランダ・アムステルダム)の最高経営責任者タコ・カーリエは、もともとそう確信していた。それが、「あと3、4カ月で実現しそうな勢いになった」とコロナ禍の影響に驚く。

もし、あなたも電動自転車の購入を真剣に考えているのなら、その代償も頭に入れておくべきだろう。一つには、バッテリー容器や電動機(モーター)がかさばることだ。もう一つ。人目を引くだけに、盗難にあいやすいという問題もある。

お金をつぎ込んで、どれだけの対価があるのか。筆者は、急な坂道が多いサンフランシスコで2週間、電動自転車2台に乗って試してみた。

The Ride1Up e-bike, which is faster, in front of the VanMoof, which has a longer range on a full battery charge, in San Francisco on March 28, 2020. The benefits of owning a battery-powered two-wheeler far outweigh the downsides, especially in a pandemic.  (Jim Wilson/The New York Times)
今回試乗した2台の電動自転車。手前がRide1Up700、もう一つがVanMoof・S3=サンフランシスコ、2020年3月28日、Jim Wilson/©2020 The New York Times

1台は、インターネットの世界とリンクしているスマートバイク、VanMoof・S3(1998ドル)。もう1台は、もっと普通の電動自転車に近いRide1Up700(1495ドル)。いずれも、オンラインで注文できる。

試乗を終えて、とことん納得した。あくせくせずに、あちこち気楽に動き回りたい人にはピッタリ、というのが私の結論だ。

そう思う人は、かなり多いに違いない。そこで、知っておくべきことを記してみた。

■まず比べてみよう

一口に電動自転車といっても、多種多様だ。価格にも、数百ドルから数万ドルまで、かなりのばらつきがある。それでも、一般的には二つのグループに大別できる。

ペダルアシスト型(訳注=日本の電動アシスト自転車は、こちらに入る)

電動システムやセンサーを駆使して走行速度やペダルをこぐ力の強さを探知し、それに合わせてパワーを供給する。坂を上るのに、速度が落ち、きつくこぎ始めれば、電動機がより強くアシストするようになる。このタイプでよく知られるブランドは、TrekやSpecialized、Fujiなどだ。

スロットル型

オートバイや原付きの(訳注=ハンドルのグリップをひねる)ツイストスロットルと同じようなスロットル(訳注=電動機に流す電流を調整する装置。自動車のアクセルに相当)がある。加速するには、ハンドルにある引き金を指で引くか、グリップをひねって操作する。最近のこのタイプの多くは、ペダルアシスト機能も備えている。ブランドとしては、Rad PowerやLuna Cycle、Aventonなどがある。

VanMoof・S3は、20年4月に売り出されたばかりのペダルアシスト型だ。ハンドルの右側には、ターボブースト・ボタンがスロットルの代わりに取り付けてある。これを押せば、即座にパワーがアップする。最大時速は約20マイル(32キロ)。フル充電で、90マイル(144キロ)ほど走ることができる。

VanMoofは、優れた盗難防止技術でも知られている。後輪ブレーキのボタンをキックすると、電子ロックがかかり、後輪が動かなくなる。この状態で自転車を持ち上げようとすれば、大きな警報音が鳴り出す。加えてスマホにも接続されていて、盗まれてもVanMoofのアプリを使えば、どこにあるのか追跡することができる。

Ride1Up700は、スロットルとペダルアシストの併用タイプだ。ハンドルの左側に小さな液晶画面があり、表示ボタンを押してペダルアシストの度合いを調節する。ハンドルの右側にある変速機でギアを変える。電動機はVanMoofより大型で、速度が出る。最高時速は28マイル(45キロ弱)。フル充電で50マイル(80キロ)ほど走れる。

■テストずくめ

この2台の自転車に交互に乗って2週間、テストに明け暮れた。双方の違いは、価格に応じたものということに尽きるだろう。1500ドル出せば、Ride1Upのようにすてきな電動自転車が手に入るが、慣れるには時間がかかる。もう500ドル足せば、より高性能で、この上なく簡単に走れるVanMoofを確保することができる。

VanMoofの電動システムは、より自然でスムーズなペダルの回転を可能にした。普通の自転車と変わらず、ペダルからはそれなりの活力も伝わってくる。電動機の音はすごく静かで、電動自転車に乗っていることを忘れてしまったことがあるぐらいだ。坂でペダルが重くなっても、ターボブースト・ボタンを使えば、必要な力を加えてくれる。

Ride1Up700は、そこまで操作しやすくはない。ペダルアシストの度合いには九つの段階があり、ハンドルにある制御パネルで切り替える。普通に走るには、3で十分だった。坂を上るには、5にした方がよかった。ときどき5を下げ忘れて止まり、走り出すときに急発進してヒヤリとした。

ペダルアシストの度合いは、それぞれの段階ごとに調整する方法がYouTubeで提供されている。私の場合は、4と5の強さを下げたところ、ペダルをよりスムーズにこげるようになった。

それと、ハンドルの左にあるスロットルについても一言。ペダルをこぎ疲れたときに、こがなくても走れるこの選択肢があるのに助けられた。インチキしているような後ろめたさは感じたけれど……。

The tail light of the VanMoof S3 e-bike in San Francisco on March 28, 2020. The benefits of owning a battery-powered two-wheeler far outweigh the downsides, especially in a pandemic.  (Jim Wilson/The New York Times)
VanMoof・S3のリアライト=サンフランシスコ、2020年3月28日、Jim Wilson/©2020 The New York Times

■短所もある

今回の試乗で、いくつかの短所もはっきりした。

ともかく重い

VanMoof・S3が41ポンド(約18.6キロ)。Ride1Up700は55ポンド(約24.9キロ)。平均的なロードバイクの重さ(20ポンド=約9キロ)の倍以上にもなる。(訳注=保管などのために)長い階段をしょっちゅう担ぎ上げないといけない人は、欲しいとは思わないだろう。

保守管理にご用心

VanMoof、Ride1Upの両社とも、利用者自身で保守できるように設計されているとしている。また、ブレーキパッドのような単純な部品は、地元の自転車修理業者でも交換できるという。

しかし、特許があるような電子部品で大きな問題が生じれば、メーカーに頼らざるを得ない。これは、電動自転車全般についていえることだ。その意味では、修理が可能な地元の自転車店で買った方が、後のリスクがより小さくなるだろう。

盗難の標的になりやすい

VanMoof・S3の駐輪は、いつも心配のタネになった。ロックをかけると、通行人の視線をあちこちから浴びた。優雅に設計されたハイテク製品のように見えるからだ。

VanMoofの広報担当によると、同社製品の盗難は世界中で起きており、その数は最大で月20台になることもある。そのうち70%は、2週間以内に見つかっている。いずれにせよ、盗難保険などの対応策をしっかりとることをお勧めしたい。なお、VanMoof自体も、340ドルで3年間の盗難保険を付けてくれる。

高価なバッテリー

スマホと同様に、電動自転車もいずれはバッテリーを交換せねばならない。通常の使い方だと、VanMoofもRide1Upも3~5年で消耗し、新しいバッテリーに約350ドルを払うことになる。

■はるかに勝る長所

確かに懸念もあるが、長所が短所をはるかにしのぐということを試乗して実感した。

最も大きな発見は、試乗期間中はマイカーに乗ろうとは思わなかったことだ。雑貨店に行くとか、友人のところに焼きたての食べ物を届けるとか、外出の必要があるときは電動自転車を優先した。

このことは、これから何カ月かの間にますます重要になるだろう。職場の再開にあたって米疾病予防管理センター(CDC)は、車での通勤は相乗りしないように勧告している。つまり、車が増え、悪夢のような渋滞が予想される。その対策として、電動自転車は大いに重宝されることになりそうだ。

もう一つ、こういう困難な時代だからこそ、大切にしておきたい利点がある。電動自転車がもたらす楽しさだ。私は、サンフランシスコで自転車を乗り回すような愛好家ではなかった。でも、試乗中は、他の人と一定の距離を保ちながら、普段よりたくさん外の様子を見ることができた。これは、自宅でNetflixを見まくることよりよいことに違いない。

だから、順番待ちをしてでも、近いうちに私はきっと電動自転車を買うだろう。 この楽しみを、少しでも多くみんなで分かち合えるようになる――そんな思いを描きながら。(抄訳)

(Brian X. Chen)©2020 The New York Times

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