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アメリカに学びに来たのに…キャンパス閉鎖で住む場所も働く場所も失った留学生

ニューヨークタイムズ 世界の話題
In a photo provided by Anna Scarlato, Anna Scarlato a University of Chicago student student from Italy, who is staying in California for now. Campus closures around the country have created much greater calamity in the lives of the more than a million international students who left their home countries to study in the United States, as many had been living in college dorms and were left to try to find new housing in a country under lockdown.
シカゴ大学のイタリア人留学生アンナ・スカラート(左)。キャンパスの閉鎖で、寮を出ることを余儀なくされ、カリフォルニアの友人宅に寝泊まりしている=写真は本人提供/©2020 The New York Times

新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)のため、大学が3月に突然閉鎖され、多くの学生は両親の家に戻り、社会生活やキャンパスでの重要な人脈づくりの機会を放棄しなければならなくなり、困惑した。卒業を控えた4年生はネット上での卒業式以外は交流の機会を失った。

だが、キャンパスの閉鎖は、母国を離れて米国で学ぶ100万人超の外国人学生たちの生活に、より深刻な災難をもたらした。多くは大学の寮で暮らしていたが、寮を出て新しい住まいを探すことを余儀なくされた。母国は封鎖されており、実家は遠い。

相当数の留学生は、経済的な基盤も崩れている。ビザの規定で、キャンパスの外で働くことは禁じられている。そのキャンパスが閉鎖されてしまったのだ。新しい住まいの家賃や実家に帰る費用を払える裕福な家庭出身の学生もいるが、多くはすでに、米国人よりも高額になる傾向の授業料を工面することに苦労している。

銀行預金の残高が徐々に乏しくなるにつれ、フードバンク(食料支援の機関)に頼らざるを得なくなった留学生もいる。友人の家族の家を泊まり歩いているケースもあるが、いつまで歓迎してもらえるかわからない。国境が閉鎖される前に急いで帰国した学生は、米国に戻れるのか確信が持てない。

「私の生活は打ち砕かれている」とエリナ・マリウツァは言う。米ボストンのノースイースタン大学で国際情勢と政治学を専攻するロシア人留学生で、両親はアパートを売却したり友人から借金をしたりして彼女のこれまでの学費に充ててきた。

世界経済の崩壊が続く中、ロシア通貨ルーブルの最近の急落で、卒業に向けた最終学期の学費2万7千ドルを両親が支払えなくなるのはほぼ確実だろうし、ましてや今の生活費の援助なんて見込めないと彼女は言っている。

「卒業できるかどうか、確信が持てない。目下のところ、前学期の学費を払えないことは確かだ。(卒業に必要なコースは)たった4コース残っているだけなのに」。そう彼女は話していた。

留学生が払う学費が予算のかなりの割合を占めることが多い大学は、可能な限り一定数の寮をオープンしたり、場合によっては学生を飛行機で帰国させたり、連邦政府に援助を求めるロビー活動を展開するなどして、外国人学生の支援に素早く動いたと述べている。米国のどの大学よりも多くの外国人学生を抱えるニューヨーク大学は、留学生向けの緊急助成金制度を設けた。

連邦政府は、新型コロナのパンデミックの影響を被った大学生たちの支援に乗り出したが、「アメリカ・ファースト(米国第一主義)」を掲げるトランプ政権は4月22日、学生の食料や住居の費用を支援する政府予算約60億ドルの対象から留学生や非正規学生を除外すると発表した。

多くの学生たちは、それぞれの大学が提供する支援はとうてい十分とはいえないと言っている。

「どこへ行けばいいのか、わからなかったので、てんてこ舞いだった」とイタリア人留学生のアンナ・スカラートは言う。彼女が、シカゴ大学の寮から数日以内に追い出されることを知ったのは3月のことだった。

他に行くところがなかったスカラートは、別の大学にいるボーイフレンドの寮に引っ越したのだが、翌日、そのキャンパスも閉鎖されることがわかった。

スカラートは、シカゴのアパートの一室を借りることにしたが、パンデミックで都市が閉鎖状態下にあるイタリアの両親は家賃を送金するための銀行に行けないことがわかった。

土壇場で、ボーイフレンドの母親が息子と一緒にカリフォルニア州オレンジ郡の実家に来るようチケットを用意してくれた。スカラートは「2週間後、あるいは1カ月後、2カ月後に、どこに行けばいいのかわからない」と言い、「自分が寄生虫になったように感じている」と付け加えた。

すでに学費の支払いに苦労している家族に、さらなる負担をかける気にはなれないという学生たちもいる。

カリフォルニア州立大学ロングビーチ校で政治学を学ぶステファニー・ダシルバ・トリスカは、ブラジルにいる母親が彼女の学費を捻出するためにレストランでの外食をやめ、古い車の買い替えもせず、休暇も減らしたと言う。

その分、トリスカは母親の苦労に報いようと勉学に励んだ。彼女は、教授たちから専攻分野の優等4年生に選ばれ、権威ある国際政策フェローシップ(奨学金)を獲得した。

ところが、優秀な学業の認定式は中止で、フェローシップは保留になった。しかも、卒業できるかどうかも含めて、さらに大きな問題を抱え込んでいる。母親はインテリアデザインのビジネスをしており、娘の奨学金でカバーできない部分の教育費を負担してきたが、そのビジネスが底を突いてしまったのだ。

トリスカは、スチューデントジョブ(訳注=研究補助など大学内のアルバイト)で得た報酬を家賃に充ててアパート住まいをしているが、最終学期の授業料600ドルの払い込みがまだ済んでいない。

「自分の学生口座にログインするたびに、600ドルの未払い残高が表示される。この未払いが相談の対象になるとしても、誰のもとに行ったらいいのかさえわからない」とトリスカは話していた。

An empty Yale University campus in New Haven, Conn. on April 25, 2020.  Campus closures around the country have created much greater calamity in the lives of the more than a million international students who left their home countries to study in the United States, as many had been living in college dorms and were left to try to find new housing in a country under lockdown. (Sasha Rudensky/The New York Times)
キャンパスが閉鎖され、学生の姿が消えたコネティカット州ニューヘイブンのエール大学=Sasha Rudensky/©2020 The New York Times

母国でパンデミックをやり過ごそうと、国境閉鎖が迫った空港に急行した学生たちは、今度は学業を修了するために米国に戻ろうとする際、法律の壁に直面することになる。

タンザニア出身で、エール大学で統計学を専攻する2年生のマーシー・イディンディリは、米国内に留まりたい外国人学生に対し「ほぼ例外を認めない」とする大学当局からのメールをプレッシャーと受けとめ、帰国した。

イディンディリは当初、ジョージア州にいる友人宅に身を寄せるつもりだったが、他の外国人学生たちが、滞在が長引くと居づらくなる可能性があると彼女に警告したので、ぎりぎりになって帰国を決断した。

彼女の米国への再入国ビザは7月に失効するうえ、在外の米国領事館はすべて無期限閉鎖になっている。米国務省は当分の間、ビザの処理も停止した。

「タンザニアがこの問題を早く解決しないとどうなるのか、私は本当にビクビクしている。米国領事館が長期にわたって閉鎖になれば、ビザの更新はできず、大学に戻れない」。そう彼女は語った。

新型コロナのパンデミックで、すべての外国人学生の法的地位は不確かなものになっている。通常、彼らのビザでは、オンライン授業ではなく、教室で直接受講することが求められている。米国土安全保障省は危機を考慮して規則を一時的に緩和したが、いつでも元に戻せる。

一部の学生たちは、ビザ問題の、より永続的な解決策を待っていられないと言っている。カリフォルニア州立大学ロングビーチ校でスタジオアートと心理学を学ぶベトナム出身のエマ・トランは、銀行口座には1カ月半分の生活費しか残っておらず、帰国しなければならないだろうと話しながら泣き出してしまった。

トランは、今回のパンデミックでキャンパスでの仕事も失った。両親の収入は所有するアパートからの上がりで、その半分は通常、観光客に貸して得ているため、それも急速に減ってきている。

資金が尽きるのを先延ばしするため、トランはまず、キャンパスのフードパントリー(訳注=食べ物の無料提供施設)に頼ろうとしたが、他にもっと必要としている人がいるかもしれないので、寄贈された食料には手を出さないよう両親に止められた。それ以来、彼女は経費を節約するため、食事はライスを多く食べ、肉を省くか量を抑えることにしている。

「母は、この事態が2カ月か3カ月たっても収まらなかったら帰ってくるようにと言っている」と彼女は口にし、「ほんとうに悲しい」と話していた。(抄訳)

(Caitlin Dickerson)©2020 The New York Times

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