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出生率が下がり続けている米国 何が起きているのか

ニューヨークタイムズ 世界の話題
**EMBARGO: No electronic distribution, Web posting or street sales before Wednesday 12:01 a.m. ET Nov. 27, 2019. No exceptions for any reasons. EMBARGO set by source.** FILE -- A woman gets a sonogram in New York, Aug. 14, 2018. The rate of births fell again in 2018, according to new government data, extending a lengthy decline as women wait until they are older to have children. (Gabriella Angotti-Jones/The New York Times)
超音波検査を受ける妊婦。米政府の新しいデータによると、米国の出生率は2018年も下がったが、出産時期を先延ばしする傾向が出生率低下の長期化につながっている=Gabriella Angotti―Jones/©2019 The New York Times

米国の出生率は2018年まで4年連続で下がり続けており、2008年の大不況に始まった出生の急激な減少が拡大した。米連邦政府が発表した。

米保健統計センター(NCHS)によると、昨年の出生数は米国における出産適齢期の女性1千人当たり59.1人で、記録的な少なさだった。この比率は前年より2%低下し、07年からだと約15%下がった。

同センターが発表した18年の最終的な出生データは、計379万1712人が生まれたとしている。

出生率は、社会の人口統計学バランスの重要な指標である。出生率が非常に高いと、戦後のベビーブーム時代に起きたように、膨れ上がる子どもたちで住宅や教育の資源に重圧がかかる可能性がある。逆に、今日のロシアや日本のように、出生率があまりにも低ければ、労働力を交代させ、高齢者を支えていくには若年人口が少なすぎる事態になりかねない。

米国の場合、出生率の低下は人口減少にはつながってこなかった。ひとつには移民がその穴を埋めるからだ。

米国の出生率低下は、ここ数十年間では最も長期化している。それが一時的な現象なのか、あるいはもっと深い社会的な変化が招いたニューノーマル(a new normal=新常態)なのか、人口統計学者たちは見極めようとしている。

出生率は、経済的に困難な時期に低下する傾向がある。そうした時期は人びとが赤ちゃんを持ちたがらないからだが、経済が上向くと、出生率も上昇する。この現象は、1930年代の世界恐慌の最中とその後に見られた。しかしながら、今回は経済によって出生率が回復していない。14年に出生率が一時上向いたが、長続きしなかった。

「出生率の低下がずっと続くとは、私には考えられない」とケネス・M・ジョンソンは言う。米ニューハンプシャー大学の人口統計学者だ。

ジョンソンの推計によると、米国の出生率が07年の水準で推移してきたとすれば、これまでに570万人多く生まれているはずである。

18年の出生率低下は広範で、ほぼすべての年齢層で起きており、米国人の出産が長期にわたって徐々に高齢化していることを映し出している。出産の減少が最も著しいのはティーンエージャーの場合で、前年から7.4%減った。1991年以来だと70%超も減少している。

20代の女性の出産も18年は少なかった。歴史的にみると、全体では20代後半の女性の出生率が最も高いのが普通だが、その座は16年に30代前半の女性にとってかわられた。それは、米国社会全体を通じての出産の高齢化傾向を反映している。

18年の出生率で、増加を記録した年齢集団は30代後半と40代前半だけだった。

「ベビーブーマー世代やX世代(訳注=米国で60年代初頭ないし半ばから80年代に生まれた世代が保持していた従来の出生年齢パターンがシフトしているのは明白である」と米ブルッキングス研究所の上級人口統計学者ウィリアム・フレイは指摘する。

新しいデータを使って、フレイは、昨年30代後半で出産した女性の半数以上が大学卒で、20代後半で子どもを産んだ女性たちよりもはるかに多かったと言っている。

それは、社会のもっと深いところにある力が働いていることを示す手掛かりになるかもしれない。ミレニアル世代の女性たちは、X世代やベビーブーマーよりも出産をさらに先延ばしにしているらしい。家族を形成する前に、職業的にも財政的にも足場を固めておくためである。

「データは、子どもを持つ前に自分たち自身の基盤を確立したいという願望があることを示唆している」とジョンズ・ホプキンス大学の人口統計学者アリソン・ジェミルは言う。「彼らはまた、質の高い子どもを育てるための十分な資力を確保しておきたいとも思っているのだ」

出産の遅れに伴って、ほかにも大きな社会的変化が起きている。米国勢調査局の新しいデータによると、初婚年齢の中央値は現在、女性が28歳で、男性は約30歳だった。1970年時点の中央値は女性21歳、男性23歳。フレイはそう言っている。

「50年代と比べると大きな差だが、80年代や90年代と比べても、同じことが言える」とフレイは指摘する。

出生率の低下は憂慮すべきことのように思えるかもしれないが、ジェミルはいいことが多いと言う。意図しない妊娠――(この多さで)米国は長い間、他の先進国と一線を画してきた――と同様、10代の妊娠が減った。ジェミルによると、一般的に米国人女性は最終的には子どもを産み、子どものいない状態は徐々に解消していく。40代半ばになるまでには2人の子どもを持つのが典型的と彼女は言う。

「(出生率の低下継続や出産の先延ばしなどは)永続的なシフトなのか? それはまだ、私たちには分からない」と彼女は言う。

もしシフトが永続的ならば、「たとえば社会保障の資金調達など、社会全体に影響が出てくるかもしれない。しかし、まだそこまで達しているとは思わない」とジェミルは言っている。(抄訳)

(Sabrina Tavernise)©2019 The New York Times

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