長引くグレート・リセッション(訳注=Great Recessionは2000年代後半から10年代初めにかけて世界市場でみられた大規模な経済不況)の影響で、一緒に暮らす未婚カップルの数が急増したが、米シンクタンク「ピュー・リサーチ・センター(PRC)」の新しい調査で、そうしたカップルは既婚カップルよりも幸福度が低いことがわかった。
この調査結果は11月6日にオンラインで公開された。それによると、あらゆる年齢層で、その過半数は未婚カップルの同居を容認することに高い支持を示した。また、未婚のままパートナーと同居している米国の成人の割合は1993年以降2倍以上に増え、3%から7%になった。既婚の米成人は53%を占める。
「一緒に暮らしている人で、未婚だが婚約したいと思っている人を対象に、なぜ現時点で結婚していないのかを尋ねた」。調査報告書の共同執筆者の一人ジュリアナ・ホロウィッツは取材に対し、そう述べた。「多くの人が、自分自身ないしパートナーが経済的に準備できていないというのが結婚に至っていない主な理由だと答えた」とホロウィッツ。
彼女によると、未婚のカップルが同居を決めた理由として「愛情と一緒にいて楽しいことをトップに挙げた」。しかし、ざっと40%は、一緒に過ごす時間をつくりやすくなるとの利便性や経済性が主な要因だとしている。これとは対照的に、既婚組の場合、結婚した理由の一部に経済的な配慮があったと言っているケースはわずか13%だった。
「私たちの研究やその他の研究から、多くの人が経済的な理由で結婚を見合わせていることがわかっている。そして、ここでは、多くの同居者たちが結婚するにはまだ十分なキャリアを積んでいないと言っていることがわかった」とホロウィッツは指摘する。
かつては、結婚していないのに一緒に暮らすということが多少タブーと考えられていた――だから「live in sin(同棲する)」という表現がある――のだが、そうした考え方は変わったと研究者たちは言う。
長期間つき合っているカップルは結婚した方が社会的に好ましいと思っている米国人は過半数すれすれの53%だ。一方、米国人の69%は、結婚する予定がなくても恋人との同居を容認すると言っており、カップルが将来結婚するならば(同居も)OKだとしているのは16%だった。さらに過半数は、未婚のカップルであっても既婚カップルと同様に子どもを育ててもいいと考えている。
ただし、こうした容認がすべて未婚カップルの楽園に問題がないことを意味しているわけではない。
今回の調査結果だと、既婚カップルのパートナーの誠実さや忠誠心、おカネの使い方に対する信頼度の高さと比べると、未婚カップルの場合はその関係性において満足度が著しく低い。既婚成人の58%は関係が「とてもうまくいっている」としているのに対し、パートナーと同居している未婚者がそう回答した割合は41%だった。
このパターンは、幅広い分野で当てはまる。家事の分担について、既婚者は未婚の同居人よりも「非常に満足している」とする傾向が高い(既婚者46%、未婚の同居人37%)、それぞれのパートナーのコミュニケーション能力(既婚者43%、未婚の同居人35%)。そして、パートナーがいかに仕事と私生活とのバランスをとっているかは既婚者が43%、未婚の同居人は35%だった。
また、子どもがいるカップルについても、そのパターンは当てはまる。パートナーの育児スキルについて、既婚者は未婚のパートナーよりも「非常に満足している」とする傾向がある(既婚者48%、未婚のパートナー39%)。
だが、このパターンはセックスについては当てはまらない。性生活に「非常に満足している」とする傾向は、既婚者も未婚の同居人も似たり寄ったりで、前者が36%、後者が34%だった。
ホロウィッツが言うには、結婚している人が未婚のカップルよりもなぜ大いに幸せだと受け止めているのか、その理由は調査結果からははっきりしなかった。
私たちが現在取り組んでいる研究では、なぜ既婚者がより幸せなのかを必ずしも説明できない」とホロウィッツ。「年齢や人種、教育水準、宗教上の所属、カップル関係の期間など各層別に分けて勘案した場合でも、既婚とその満足度の高さとの関連性はやはり顕著だった」と彼女は指摘している。
ピュー・リサーチ・センターによると、無作為に抽出した成人9834人を回答者とする今回の調査はオンラインで実施された。ホロウィッツは、調査のサンプルには同性のカップルも異性のカップルも含まれているが、調査結果のすべてが両方のグループに適用されたわけではないとしている。
同性でカップル関係にある人の数が比較的少ないため、私たちはいつも同性カップル対異性カップルという視点で論じ合えたわけではない」とホロウィッツは述べ、「それに同性婚が合法化されたのはごく最近のことだ」と言い添えた。(抄訳)
(Liam Stack)©2019 The New York Times
ニューヨーク・タイムズ紙が編集する週末版英字新聞の購読はこちらから