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技能実習生が技術を生かせる場つくりたい フィリピンで奮闘する日本人

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フィリピン人スタッフらと。仕事以外に「飲みニケ-ション」でも親交を深める

■私のON

日本や海外で、事故や災害で壊れた自動車を買い取り、修復可能な車や再利用できる部品・素材として販売する会社に勤めています。会社が新たに、フィリピンで自動車の板金塗装・修理の事業を始めることになり、今年1月に現地統括者になりました。

人口増加と経済発展が続くフィリピンでは、自動車の急速な普及に伴い、自動車事故の発生件数も増加傾向にあります。しかし、板金塗装・修理をする業者の数は足りておらず、日本と比べると技術のレベルも低いままです。私は2017年に首都マニラに赴任したのですが、損害保険会社から壊れた車を買い取る仕事をするなかで、こうしたニーズがあることを知りました。

とはいえ、板金工場を運営するノウハウは会社にも私にもありません。日本人の技術指導者らを頼りながら人脈を広げ、今年6月の工場稼働にこぎ着けました。工場はマニラから南に50キロほど離れたカランバ市にあります。約1200㎡の広さがあり、60~70台の修理が可能です。そこでフィリピン人の職人や、日本人の工場長、技術指導者らとともに働いています。

今年6月に稼働した自動車修理工場。後列右から2人目が林義人さん

職人はキャリアが3年ぐらいの若手から、25年ほどにもなるベテランまで6人。フィリピンにある日本車ディーラーでの勤務経験もあるような腕のいい人がそろっていますが、技術指導者からすればまだまだ。議論をしながら、作業方法を教えてもらう時はうれしそうです。仕事以外でも、一緒に食事に行って酒を飲み、コミュニケーションを取るようにしています。心の距離を縮めるためにすることは、日本でもフィリピンでも変わりません。

工場では修理や整備のほか、車体へのコーティングサービスも手がけています。修理のお客さんは、事故の後に保険会社の紹介でいらっしゃる方が多いのですが、そういう方には「また来て下さい」とは「また事故を起こして下さい」と言っているようで、言いにくい。コーティングならその心配はいりません。日本で人気がある、フィリピンでは未発売の日本製液剤を使ったところ、口コミで評判が広がり、マニラから駆けつけてくれたお客さんもいました。工場は始まったばかりですが、日本水準のサービスを提供することで、現地の業界全体の発展に貢献したいと考えています。

今の会社に転職する前も、仕事場は海外でした。スマートフォンやパソコンの周辺機器を作るメーカーの海外営業で、住まいは日本でしたが、月の半分以上は東南アジアや北・中南米などに出張していました。

海外に目を向けるようになったのは学生時代からです。高校までサッカー一筋で過ごした後、「他人と違うことをしたい」とオーストラリアに渡り、働きながら現地の大学と大学院を卒業しました。オーストラリアには、アジアからもラテンアメリカからもヨーロッパからも人が集まっています。英語の力がついただけでなく、さまざまな価値観や文化的背景を持つ人たちとじっくり話し合う訓練を積めたと思います。

塗装作業に取り組むフィリピン人職人。技術指導も受けながら仕事に励んでいる

自分から腹を割って話をすると、お互い認め合える点が多くある。その経験は今の仕事にも生きています。工場のフィリピン人スタッフとは上司・部下の関係にあるので、仕事では厳しいことも言いますが、それ以外では立場は変わらない仲間だと考えて接しています。

板金塗装・修理の業界の人手不足は日本でも起きており、フィリピンから技能実習生として日本に渡る若者が多くいます。しかし、日本で数年働き、高い技術を身につけて帰国しても、その腕に見合うような待遇の仕事はまだこの国にはありません。日本で月15~20万円稼いでいた人も、月収4~5万円ほどの待遇になってしまうことが多いと聞き、心苦しさでいっぱいになります。

私たちはそうした人たちが活躍できる場にもなるだろうと、工場のフランチャイズ事業を考えています。日本の技術を学んだ人に経営も学んで独立してもらえれば、経営者として、職人の何倍も稼ぐことができるでしょう。自社の工場を増やすほか、フランチャイズ事業を通じて、10年以内に100店舗以上を出店する計画です。

■私のOFF

現地統括者という立場から、なかなか休みが取れませんが、オフはできるだけ妻や息子2人と一緒に過ごすようにしています。息子は6歳と3歳。現地のプロサッカーチームの下部組織に入っており、週末にある練習にはできる限り私が連れて行くようにしています。

長男の誕生日祝いで訪れたレストラン。オフは家族で過ごす時間を最優先している

私自身も日本人駐在員らの社会人チームに入り、週1回はサッカーをしています。チームの活動は平日に週2回、仕事終わりの深夜にやっているフットサルと、日曜日にある社会人リーグの試合です。サッカーは幼い頃から続けており、高校生の時にはプロクラブのユースチームにも所属していました。体力の衰えも感じますが、無心になってプレーできることや、仲間と真剣に勝負に挑む楽しさから、これだけはやめられません。2017年秋~18年春のシーズンには、社会人リーグの大会で優勝することもできました。

サッカーは真剣勝負が楽しみ。日本人駐在員らのチームに所属し、現地の社会人リーグの大会で優勝した

フィリピンは海で遊ぶのも醍醐味です。マニラから車で1時間ほどでも遊びに行けるところがあります。また1~2時間のフライトで行けるリゾートも多く、家族旅行でセブ島やパラワン島に行き、スノーケリングなどをして楽しみました。仕事の合間を縫いながら、2、3カ月に1回は海に行くというのが目標です。(聞き手=太田航、写真は林さん提供)

家族で訪れたセブ島。「海が近いのがフィリピンの魅力の一つ」だという