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9・11から4倍に 増える一方の過激派テロ

ニューヨークタイムズ 世界の話題
ISに占拠されたイラク北部モスルの奪回作戦の最前線。徹底的に破壊されていた=2017年7月15日、=Ivor Prickett/©2018 The New York Times
ISに占拠されたイラク北部モスルの奪回作戦の最前線。徹底的に破壊されていた=2017年7月15日、=Ivor Prickett/©2018 The New York Times

2001年9月11日の米同時多発テロから17年余。米国はこの間、対テロ作戦を主導して国際テロ組織アルカイダや過激派組織「イスラム国」(IS)の掃討作戦を展開してきた。だが、世界各地でテロ活動を続けるスンニ派イスラム過激派は、当時の4倍近くにも増えている。そのショッキングな現状が、ワシントンのシンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)の独自調査で明らかになった。

具体的には、23万人ものサラフィー・ジハード戦士(訳注=イスラム法の厳格な施行を求めて、異教徒に「聖戦」を挑む戦闘員たち。組織的にアルカイダ系とISに大別される)が、70カ国近くで活動している、とCSISの報告書は指摘する。特に多いのがシリア、アフガニスタン、そしてパキスタンだ。

報告書は結論として、テロ組織の回復力が根強く残っていること、さらに米国およびその同盟国(有志連合)による政治的な失敗だった、と強調している。同時に、テロ組織が共有しているイデオロギーは依然として潜在力を維持しており、ソーシャルメディアを利用して兵士や資金を集めるブランド化戦略もじわじわと浸透している点も強調した。イラクやシリアといった戦闘地域で敗退しても、彼らは両国内やその他の紛争地域でゲリラ的な攻勢に転じる。その際にソーシャルメディアを利用して戦士や資金を集めるのだ。報告書の結論は、この分野では最も包括的なテロ関連調査研究にするため、1980年以降のさまざまなデータベースを活用してまとめられた。

「いくつかの組織は海外および米国内のアメリカ人を標的にしている。特にISとアルカイダ系が狙っている」。CSIS多国間脅威プロジェクト部長で報告書の6人の筆者の一人でもあるセス・ジョーンズはそう言った。「テロはまだ残っており、しかも活動的だ。アメリカ人は気をつけた方がいい」とも語った。

テロリズムは、打ち寄せる波のように次から次へとテロ戦士を生み続ける。実際問題、欧米諸国はこうしたテロリズムの根本原因への取り組みにほとんど失敗した、と報告書はいう。戦士たちは、通常兵器では圧倒的に優位に立つ対テロ有志連合を打ち負かすため、ドローン兵器や人工知能(AI)、暗号化通信を利用しようとしている。

報告書は全71ページ。その最後は「おそらく欧米諸国がするべき最も重要なことは、テロに向き合っている政府を手助けし、ガバナンス(統治)の改善を図ること。そしてその国が抱える経済問題、宗派対立、その他の不平不満をもたらす問題に対してもっと効率的に取り組めるよう手助けすることだ」という言葉で締めくくっている。

その一例として、報告書はイラクの現状をあげる。ラマディ、ファルージャ、モスルといったかつてISに占領されていたスンニ派の多い町は、復興再建のペースが遅く、住民は怒っている。そのため、再び過激派が入り込む余地が増えている、と指摘した。

トランプ政権の安全保障政策はロシア、中国、北朝鮮、イランからの脅威に優先的に取り組んでいる。アフリカや中東から米軍が撤退すると――すでに米国防総省は両地域から米軍を引き揚げ始めている――テロ組織には恵みをもたらすことになるだろう。報告書はそう警告している。

報告書がそれ以上に精査し、多くのページをさいているのは、ISやアルカイダ系に対する戦いと、両組織に入っていなくても時に一緒に戦闘に加わったり、彼らの信条や作戦に感化されたりするスンニ派グループに関した記述だ。

米国主導の対テロ作戦については、ニューヨークのシンクタンク、ソウファンセンター(the Soufan Center)が最近、「せいぜいのところ、成否が入り交じった」結果になった、と表現した。

「いいニュースとしては、9・11以降、あれほどの大規模テロ攻撃がどこでも起きていないことで、これは意義深い成果だ」。一方、「悪いニュースは、旅客機を使ってビルに突っ込んだり、大勢の人がいる歩道に車で突っ込んだりする者をそそのかす過激派の思想が、がん細胞のようにあちこちに転移しているとみられることだ」と同センターは指摘した。

さらに「米国がグローバルな反テロ作戦を展開している紛争地の多くは、地域性がきわめて根強く残っている。すなわち欧米の政府と軍がこうした地域に永続的なインパクトをあずかることは、実際にはまずあり得ないということだ」とも言及した。

11月17日、カナダのノバスコシア州ハリファクスで開かれた安全保障に関する会議で、米統合参謀本部議長のジョセフ・ダンフォードは、ISおよびサラフィー・ジハード集団に対する戦いが終わりなき状況にあることを認めた。米国は十分な兵力を維持するとともに、「我々は、これらのテロ組織に圧力をかけ続けて壊滅させる」という政治的な意思を持ち続けなければならない、と語った。

だが、そのためには一体どれだけ費用がかかるのか?

米ブラウン大学ワトソン国際公共問題研究所が11月に発表した年次報告書「戦費研究」によると、米国のグローバル反テロ作戦関連の活動費は19年10月までに5兆9千億ドル(1ドル=113円換算で667兆円)に達するだろう、としている。

サラフィー・ジハードの戦士は世界にどれほどいるのか?

CSISの報告書はその点についての評価は難しかった、と記している。それでも研究者たちはメリーランド大学のグローバル・テロ関連データベースや英ジェーンのテロ・反乱研究所(Terrorism and Insurgency Center)の資料をもとに、最大の数値と最小の数値を算出した。その結果、18年現在のサラフィー・ジハードの戦士総数は10万人から23万人とした。この数字はピークだった16年より約5%減少したが、依然として01年の「3万7千人から6万6千人」よりはるかに多い状態になっている。

また、戦士が最も多く存在する国はシリアの4万3650~7万550人で、アフガニスタンに2万7千~6万4060人、パキスタンに1万7900~3万9540人、イラクに1万~1万5千人、ナイジェリアに3450~6900人、ソマリアに3095~7240人、としている。

さまざまなサラフィー・ジハードの中で最も脅威となっているのは、依然としてISで、18年現在、世界に約4万人の戦士が存在している。ISがイラク北部を占拠した14年当時の3万200人より増えたことになる。

ただし、この数字は米国防総省や国連が示す最新の数字よりやや高くなっている。国防総省や国連は18年現在、ISの戦士数は14年時点とほぼ同じで、イラクとシリアだけで2万~3万1500人、その他ISが他国で独自に育てた戦士が数千人いる、としている。国防総省とホワイトハウスの高官は、実数はもっと少ない、と言った。

18年9月のニューヨーク・タイムズの調査では、欧米で起きたISによる襲撃件数は、18年に入って以降、その前4年間に比べて急速に減少し、14年以来初めて下降に転じた。それでも襲撃計画はやんでいない。ISは今も破壊的な行動に出ようとたくらんでいるといえよう。(抄訳)

(Eric Schmitt)©2018 The New York Times

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