外出時の必携品、というのがある。ここニューヨークは、特に何が起こるか分からない大都会である。列車、地下鉄が突然止まったり、急な豪雨に見舞われたり、昔の恋人と出くわしてけんかになったり。だから、外出する際の備えが欠かせない。
私たちのバッグの中にはニューヨークならではの必携品が入っている。ヘッドホン、読み物、フィットネス用の衣類、フラットシューズ。こうした品々に加え、各自にユニークな必携品がある。
このほどニューヨーク・タイムズはニュースレター New York Today(ニューヨーク・トゥデー)で、非常時に備えて持ち歩いているものについて、25㌦(1㌦=108円換算で2700円)以内で買え、他の読者にもお薦めの物がありますか、と尋ねた。その結果、なるほどと思わせ、しかも案外見落とされがちながらバッグに入れておいた方がよさそうな10点を選んだ。
この10品目。私たちはニューヨーク暮らしに欠かせない「ニューヨークシティー・サバイバル・キット」と呼ぶことにした(品目の後のカッコ内は値段で、コメントの後のカッコ内は読者名)。
予備のメトロカード(3・75㌦。内訳はメトロ代2・75㌦で、1㌦はカード代)
「私はいつも予備のメトロカードを持っている。地下鉄A系統を利用していてホイト・スカーマーホーン駅に着いた時、しまった、カード残高が少ない、と気づいた。前夜、カードにチャージするのを忘れていた。でも、予備のカードを持っていたので、チャージするのに20分も待ったりウーバー(配車サービス)を使ったりしなくて済みました」(エラ・エイスキュー、32歳、ボアラムヒル、ブルックリン)
扇子(10㌦)
「コロンバス・サークル駅は、好天の日でも構内の空気が悪くよどんでいる。暑くて湿気の多い日は、息が詰まりそうになる。それでいて、電車を待つ時間がかかるのがしょっちゅうだ。そんな時、扇子を開いてあおぐと、風が吹き抜けるような感じがして気がまぎれる」(ヘレン・ブルーメンタル、77歳、ワシントンハイツ、マンハッタン)
巻き尺(3・99㌦)
「バッグに入れてもかさばらない小型の巻き尺。自宅アパートにしつらえる品々を買う時、私はいつも持っていてよかった、と思う。目下、夫と一緒に居間を整理し直していて、見栄えのいい年代物の小さなテーブルを物色している。探しているのは奥行き12㌅(約30㌢)以内のテーブルなので、巻き尺を取り出して測れば、それ以上のものはさっさと除外できる」(エリザベス・ワード、42歳、ケンジントン、ブルックリン)
メイク落としシート(7枚入り2・69㌦)
「露天の店で何か買って、手がべとついた時やバッグや靴の汚れを落とす時に、さっとひと拭き。コーヒーショップでテーブルを拭く時も。冷却効果もあるので、街を歩いて暑くてたまらない時にも、私は使っている。もちろん、夜に出掛けなければならない時は、敏感肌用のメイク落としとして使っている。帰宅したら、私はそのまますぐベッドに倒れ込んでしまうから」(ローレン・パリッシュ、32歳、ベイリッジ、ブルックリン)
メイク落としシートの代用品として、赤ちゃん用ウェットティッシュやしみ抜きティッシュも可。
ナイロン製トートバッグ(20㌦)
「私はハンドバッグにナイロンのトートバッグを入れている。使い勝手がとてもいい。露店で買った果物を入れたり、ベンチがぬれたり汚れたりしていると、シートカバーとして使う。突然雨が降ってきた時には、雨よけの帽子代わりにもなる!」(ゲイル・レスラー、58歳、コロンビア・ストリート・ウォーターフロント、ブルックリン)
もっと安く済ませるなら、5㌦のパシュミナ・スカーフとか無料のポリ袋もある。
デンタルフロス(3・79㌦)
「いつもハンドバッグにデンタルフロス。というのも、私は糸の代わりに使うことが時折ある。ある時、テニスをしている最中に、靴ひもが切れた。でも、何とか続けたかった。とっさにバッグからデンタルフロスを取り出して、靴ひもの代用にした。その後、私は無事に2試合続行しました。また、ピクニックに行ったのに、ナイフを忘れたことがあった。ケーキを切るのにどうしよう。デンタルフロスがそこでも救ってくれ、チョコレートケーキを見事に切り分けてくれたのです!」(ローダ・ミラー、64歳、フェアファクス・ステーション、バージニア、ブロンクス経由)
防臭剤(旅行サイズで1・99㌦)
「デオドラントを使う目的は二つある。わきの下の臭いを防ぐのはもちろん。もう一つは、ドレスでもショーツでも、肌に擦れるようになったらサッと両ももにつける。すっきりして、効果はてきめん。私の大学のルームメートが実際につけて教えてくれ、以後、私は友人知人にも勧めています」(アーチャー・ブリンクリー、23歳、ハミルトンハイツ、マンハッタン)
耳栓(10組で6・99㌦)
「私は外出するとき、必ずスポンジの耳栓を携行する。特に地下鉄では! 駅に入ると同時に耳栓をする。駅の硬質の壁はあらゆる音を反響して、うるさくてたまらない。私は演奏家たちの音楽は好きですが、駅構内での演奏はうるさく響く。耳栓をつけて電車に乗っていると、爆発音のような音楽から怒った人たちの話し声(めったにないけれど)まで防いでくれる。スポンジの耳栓は騒音を防ぐだけではなく、隣に座っている夫との会話はできるし、耳につけていても十分快適だ。私はいつもハンドバッグの外ポケットに入れている。歩いていて建築現場に来た時や救急車のけたたましいサイレンが鳴り響いてきた時にも、すぐ取り出せる」(モニカ・マクヘンリー、62歳、ワシントンハイツ、マンハッタン)
携帯充電器(12・99㌦)
「前もって充電しておく携帯用のクイック充電器は便利だ。特にロックアウェー海岸とかシープメドゥ(セントラルパークにある芝生の広場)にピクニックに行く時には役に立つ」(ジュリアン・M・デラポルタ、25歳、アストリア、クイーンズ)
水筒(14・99㌦)
「冬の乾燥した日でも、ニューヨークの建物の中は暑苦しい。だから、私は水筒を持ち歩く。あらかじめ氷を入れておく。地下鉄の駅で体が溶けてしまいそうな時には、この水筒の冷たい水を飲むのが一番だ。ついでながら、私はペットボトルの水を買う必要も感じないし、ペットボトルのごみを出そうとも思わない」(クレア・アロナウ、43歳、グリニッチビレッジ、マンハッタン)=抄訳
(Jonathan Wolfe and Corey Olsen)©2018 The New York Times
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