12月2日、流通経済大学陸上競技部・駅伝チームと市民が一緒に走る「バターづくり×ランニングイベント つないで・カタめて Shake RUN!」が松戸運動公園で開催されました。
集まったのは子どもから大人まで約150人。ほとんどの方が、大学のキャンパスがある松戸市にお住まいの方々でした。4歳から小学6年生とその保護者向けのプログラムではゲーム要素を入れたリレー体験などを通じて、速く走るコツを学びました。
「いいよ、いいよ!」 「頑張って!」
駅伝チームの学生たちが、笑顔で子どもたちをもり立てます。
一方、中学生以上のプログラムは、よりテクニカルな内容を重視。「しっかり腕を後ろに振って」など、学生たちのアドバイスもより具体的に。駅伝チーム員がペースメーカーとなり1000mタイムトライアルを実施するなど、かなり本格的なトレーニングの様子も見られました。
この日、特に面白かったのがランニング教室の後に行われた「“バターづくり”リレー」。生クリームが入ったボトルを“バトン”に見立てて、参加者全員が力走。速さを競う「タイム部門」と、各チーム10本ずつ割り当てられた応援用の振るボトルでできたバターの量を競う「重さ部門」でそれぞれ順位が決まりました。
小学3年の佐藤芯太朗君(8)は、駅伝部キャプテンの長谷川瑠(りゅう)さん(20)に「どうやったら早く走れますか?」と質問。「腕の振り方や足の上げ方とか、お兄さんたちに教えてもらえてうれしかった」と笑顔を見せました。長谷川さんも「地域の人と触れあう機会もあまりなかったので貴重な一日でした」と振り返りました。
このイベントをプロデュースしたのは「実践型マーケティング&ビジネス体験講座」を受講した学生たち。「スポンサー課」「プロモーション課」「イベント課」に分かれて運営にあたり、当日は講座受講生と駅伝チーム員たちと合わせて計60人が参加しました。
事前申込制で定員150人が2日で埋まるほどの盛況ぶりに、企画や運営に携わったイベント課のリーダー、経済学部経営科3年の折笠力輝さん(21)は「小さい子どもたちの笑顔を見られて最高でした。この中から“未来の駅伝チーム員”が誕生してくれたら」と笑顔で話していました。
誰でも出入りできる「まちの原っぱ」を目指して
駅伝チームは今年4月、主な活動拠点を茨城県龍ケ崎市から千葉県松戸市に移転。市内の運動競技施設を利用してきました。目標は数年以内の「箱根駅伝」出場です。
この高い目標を掲げることができるのも、地元・松戸市の協力があってこそ。「松戸のみなさんとの繫(つな)がりを深めて、恩返しがしたい」という思いが、今回のイベント開催につながりました。
こうした「地域とつながる」という意識を持ちながら大学づくりを進める取り組みが、流通経済大学が掲げる「コモンズ活動」です。
「コモンズ活動」を推進する龍崎孝副学長は、自身の幼少期の思い出に重ねて、大学施設は「“まちの原っぱ”のような場所であるべき」と話します。
「少子高齢化で、学生数が減っていくことは誰の目にも明らかです。だからこそ、狭いコミュニティで閉ざされた大学ではなく、地域のみなさんがいつでも入ってこられる“新松戸の原っぱ”のような場所を作ることが必要です。地域のみなさんにオープンな環境を作ることができれば、学生たちも豊かな人間関係を構築できると思います」
この「コモンズ活動」を進めるうえで、スポーツは重要なコンテンツになると龍崎副学長は話します。
「流通経済大学はラグビー、サッカー、駅伝などさまざまな競技に力を入れており、おかげさまでスポーツ強豪校としての認知も広がっています。しかし私たちが目指しているのは、競技力の向上だけではありません。試合に“勝つ・負ける”以外に、地域との一体感も高めているなかで、『貢献』という価値観も生まれます。今回の駅伝チームのランニングイベントはまさにそれを体現しているものです」
流通経済大学は、今回のランニングイベント以外にも、新松戸周辺の小学生を対象にした「ダンスクラス流経スクール」の定期開催や、日本知的障害者チアリーディング協会との連携によるチアリーディングチームの発足(2024年春予定)など、さまざまな活動を通じて「コモンズ」の輪を広げています。
広がる「コモンズ活動」
流通経済大学の「コモンズ活動」はスポーツ以外でも広がっています。
■であうアート展
障がいがある人らの絵画やニードルワークを紹介するアート展。2021年から毎年開催。開催の狙いは「であう」そして「つながる」こと。学生らが地域住民や障がい者と一緒に、千葉県成田市や東北地方で創作活動をしているアーティストたちの作品を大学内の特設ギャラリーに公開展示しています。
■コモンズCafé
今年4月から開催。新松戸キャンパスを舞台に「地域の店舗と一緒に開発したパンの販売」や「本が好きな人、集まれ!」と題した、図書館ツアーなどを企画。地域の人々が「気軽に参加できる居場所」作りを進めています。
大学は地域社会の中にある
3年目を迎えたコモンズ活動。流通経済大学の「地域に必要とされる大学」という思いは浸透してきています。龍崎副学長がそのことを感じたエピソードを教えてくれました。
「新松戸キャンパスでは毎冬、イルミネーションを展示しています。あるとき撤去作業をしていたら、小さなお子さんと保護者が『ピカピカがなくなっちゃったね』『また来年もあるといいね』と会話していました。そのとき“大学と地域との垣根がとれた瞬間”を感じました。こういった小さな積み重ねが、地域に愛される大学を作っていくのだと思います」
住民の皆さんとの会話があふれる大学であるために。流通経済大学の「コモンズ活動」は続きます。
「今構想しているのは新松戸キャンパス正面の広い階段とその前の広場に、テーブルをランダムに置いてみることです。テーブルがあれば、『ここでランチしていこう』『ちょっとおしゃべりしていこう』と座って時間を過ごす学生や地域の方が増えるかもしれないです。“大学は地域社会の中にある”と感じられる場を作ることが、地道なコモンズ活動を支えていくのだと考えています」(龍崎副学長)