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きっかけは東日本大震災 EV時代、ニチコンが提案する電気の「家産家消」

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ジャパンモビリティーショーに出展したニチコンのブース。手前はNECST事業本部の関宏副本部長=山田秀隆撮影

「地球沸騰化時代」とも言われるなか、カーボンニュートラル(脱炭素)に向けた取り組みが世界各国で進められている。欧州連合(EU)は、電気自動車(EV)の導入を後押しし、日本政府も2035年までに、国内で販売される新車をすべてEVかプラグインハイブリッド車(PHV)にする目標を掲げている。その流れを受け、10/28~11/5に開催されたジャパンモビリティーショーでは自動車メーカー各社が新型EVを発表し、関連する最新技術を持つメーカーの出展もあった。蓄電システムを開発・販売するニチコン(京都市)もそのひとつだ。車から家へ―。ニチコンが提案する電気の「家産家消」の仕組みを探った。

ニチコンは1950年創業。蓄電器(コンデンサー)や回路製品の開発から販売まで手がけてきた。これまでは先端技術の見本市「CEATEC(シーテック)」などに出展してきたが、東京モーターショーが車の枠を超えて多様なモビリティー(移動手段)や関連技術を展示するジャパンモビリティーショーに衣替えして開催されるのを機に初出展した。

V2Hは「Vehicle to Home(車から家へ)」の略で、EVに充電するだけでなく、EVの電気を家に給電できるシステムだ。ニチコンが2012年に世界で初めて実用化し、国内シェアは90%にのぼるという。

担当部署は、蓄電型太陽光発電システムや車載充電器、家庭用蓄電システムなどを手がけてきたNECST事業本部だ。関宏副本部長は「日本では、買い物など家からの近距離移動に車を使うユーザーが多いので、車が家の駐車場に止まっている時間が長いです。V2HがあればEVを蓄電池として使うことができ、駐車中に充電した電気を有効活用できます」とアピールする。

V2H開発のきっかけは2011年の東日本大震災だった。電力不足による計画停電が続くなか、「EVに電気をため、その電気を家で使うようにできないか」と、日産自動車との協業で開発した。

「導入したいが、家の駐車場が狭くて置けない」「停電になった時の扱いがわからない」―。開発から10年余り、ユーザーの声を受けて改良を重ねてきた。

本体の小型化と軽量化を図り、新商品は幅47センチ×高さ62センチ×奥行き20センチ、重さ26.2キロ。現行モデルに比べてサイズも重さも半分以下になったという。さらに本体と操作部を分けることで、駐車スペースに合わせて柔軟に設置ができるようにした。本体も操作部も壁に設置することが可能だという。

本体と操作部を分けたことで、設置しやすくなった

停電時には、EVと接続されていれば自動で家に給電できるように改良した。また、EVから家に給電する際に発生していた変換ロスを抑え、高効率も実現した。放熱量を抑えることで、外付けのファンも不要になった。

200V/3kWの普通充電に比べて最大約2倍のスピードで充電でき、スマートフォンアプリでの操作も可能だ。

希望小売価格は128万円(税別)。初期投資は必要だが、電気代や燃料価格が高騰するなか、家で電気をまかなうことができれば、電気代やガソリン代を節約することができる。

2024年1月には、太陽光発電システムから供給される電気を家で使えるように変換する太陽光パワーコンディショナも販売予定だ。太陽光パネルを設置していれば、家で使う電気を太陽光発電でまかなうことができる。V2Hと連携すれば、EVを大容量蓄電池として活用でき、太陽光発電の余剰電力をEVにためることができる。

関副本部長は「電気を効率よく使いながら、地球環境のためにもなる。自分の家で作った電気を自分の家で使う『家産家消』という新しいライフスタイルを提案したいです」と話す。

V2H(手前)と太陽光パワーコンディショナ(奥)。連携して使うことも可能だ