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サステイナブルな暮らし支えるイノベーティブな商品、台湾企業の挑戦

Ad by BOFT 公開日:

「台湾エクセレンス」3社 エコの取り組みを競争力に 李冠志・BOFT副局長

気候変動は国際社会が直面する大きな問題ですが、台湾と日本は炭素排出量を2050年までに「ネットゼロ」とする目標を立てています。台湾政府もサステイナビリティと成長を両立させる企業を支持し、CO₂の排出削減やESGへの取り組みを支援しています。

こうした背景から、BOFTは環境保護やCO₂排出削減を評価項目にして、台湾の新たな価値を代表する「台湾エクセレンス」を選出しています。

本日紹介する「台湾エクセレンス」受賞3社は革新的な技術で、従来型産業に新たな命を吹き込みました。日本市場進出にも高い意欲を示しています。

3社の台湾企業の事例は、事業の転換とともにESGの実践を体現し、サステイナビリティと市場の新しいニーズに対応しています。従来型産業の運営を大きく転換し、エコの取り組みを競争力に変えています。

今後も台湾と日本の産業が手を取り合い、共にネットゼロを目指していければと思います。

グリーンエコノミーに対応、イノベーティブな生活を提案する台湾 王熙蒙・TAITRA CEO

消費者の選択肢が増えています。科学技術が進歩し、グローバルサプライチェーンが私たちの距離を縮めています。地球にエコな消費活動を心がければ、この世界も大きく変わってくるはずです。

サステイナブルな発展を実現するグリーンエコノミーは今や世界のトレンドです。世界のサプライチェーンを担う台湾は、さまざまなイノベーティブな方法で対応し、革新的な生活を提案しています。

毎年、私たちが厳選した素晴らしい製品には「台湾エクセレンス」のマークが与えられます。台湾の製品をご購入の際は、このマークが目印ですよ。

【プレゼンテーション】

E Ink 電子ペーパーでCO₂削減、目にもやさしく

2022年、BMWがボディの色が自由に変えられる車を発表しました。EInkの電子ペーパーで車体を包み、暑い日には白くして日差しを反射して車内の温度を低く保ち、寒い日には黒くして日差しを吸収し、車内の温度を上げることができます。エアコンの電力を抑えることができ、CO₂の排出削減も可能になります。

車を含めて、様々な場面で使用できる電子ペーパー技術は、1990年代にマサチューセッツ工科大学(MIT)で生まれ、97年に商業化されました。E InkはMITの革新の精神を受け継ぎ、電子ペーパー産業のけん引役として、技術と製品を開発しています。

電子ペーパーは目にやさしく、省エネやCO₂排出削減など環境にやさしいという2つの側面があります。電子ペーパーは自ら発光せず、本物の紙と同じように光を反射して内容を表示させるため、長時間見ても目が疲れず、見た目も紙のような質感です。

ページを切り替えるときだけ電力を消費するため、タブレットやスマートフォンと比べて省エネです。

紙の本と比べると、印刷、製本、輸送などのコストが抑えられ、CO₂排出も削減できます。最近では銀行の署名や契約書の書類、学校の宿題にも電子ペーパーが使われるようになっています。

企業が電子ペーパーノートを導入することでネットゼロへの目標達成にも貢献できます。

Chung Hwa Pulp 水と油に強く、リサイクル可能な紙製食品容器

私たちがふだん使っている紙コップは、内側のプラスチック膜は繊維との複合材料のためきれいに分離できず、焼却するしかありません。焼却熱を発電に利用することはできますが、ペットボトルのような単一素材とは違い、リサイクルができないのです。

このため、繊維自体に防水、防油、ヒートシールの機能を持たせることで、リサイクル可能な食品容器「CircuWell」を開発しました。

もとは森林、パルプ、紙まで一貫して紙を生産してきましたが、デジタル化の流れのなか、繊維製品の開発に取り組みました。自転車の塗装、テープやラベル衣服の繊維、などです。ただ使用後の処理が難しく、使い捨てが多いため、循環利用できる商品を作ることができないかと考えてきました。

開発した「CircuWell」の紙コップや食品容器は使用後、自社の製紙工場で再生紙のコピー用紙にリサイクルするなど、便利かつエコな暮らしを実現しています。

プラスチックは便利であり、地下で長い間蓄えられた大切な資源で作られるもので、長く使うべきものです。一方、樹木は地上に育ち、空気中のCO₂を吸収し、何度も様々な生活用品にリサイクルできる製品にできるものです。

製紙業という従来型の産業の枠組みから飛び出し、世界に対し、啓発的で貢献できる便利さと環境への優しさが共存する暮らしをめざして、食品容器以外にも素材の応用をさらに発展させていきます。

Singtex コーヒーかすの消臭効果に着目、機能性素材に

Singtexは小さな布団店から始まり、1989年に創業しました。当社がコーヒーを利用し、イノベーションを起こした話をしたいと思います。

2005年のある日、私は山登りに行った帰りに妻と待ち合わせをしていました。遅れそうだったのでシャワーを浴びずに向かったのですが、それを知った妻が「臭うので隣には座りたくない」と言うのです。

その時、ある女性がコーヒーかすを店からもらっていました。私ももらってこようかと言い、妻も賛成しました。コーヒーかすを抱えていれば、(コーヒーの消臭効果で)体臭も抑えられるというのです。これがインスピレーションになったのです。

コーヒーの抽出が終わった「かす」を研磨して生地に織って服を作ります。コーヒーかすを糸と結合させることで新しい素材となり、異臭の制御力が向上しただけではなく、乾燥速度が一般の布地より優れ、紫外線のダメージもカットできることがわかったのです。

かすから抽出されるコーヒーオイルも活用した世界で初めての服を作りました。コーヒーかす以外にペットボトルも使用し、帽子、靴下、下着やTシャツなども作っています。

コーヒー糸は伸縮性に優れ、水をはじく機能性素材でスポーツにも適しており、世界有数のスポーツウェア、アウトドアブランドとも取引があります。

コーヒーかすはコーヒーチェーンやコンビニエンスストアなどから回収しています。コーヒーを飲めばエコにつながる、コーヒーを飲んでより素晴らしい世界が実現できる。身近なところから循環型社会を作れることをみなさんにお伝えしたいです。

【パネルディスカッション】

台湾企業のテクノロジー 品質維持しながら課題を解決

堀内隆・GLOBE+創刊編集長(以下、堀内):3つの企業のプレゼンテーションでは、サステイナブルな取り組みが、具体的な製品などかたちになっているのが印象的でした。前田さんも、フラワーロスを削減する取り組みをされていますが、いかがでしたか。

前田有紀さん(以下、前田):日本でもサステイナブルという言葉はよく聞きますが、個人も企業も取り組みを模索するなか、台湾の企業がテクノロジーで課題を解決していることに感銘を受けました。

私は日々、花を販売していますが、フラワーロスとよばれる廃棄される花があります。日本で販売される30億本の花のうち、10憶本が捨てられているという試算もあります。

生花店で捨てる花を少なくするために、これまでもドライフラワーにしてアクセサリーを作ったり、子育て支援施設や児童養護施設に寄付したりしてきました。

ファッションブランドともコラボをして、役目を終えた花と余った生地を使ってドレスを作ったこともあります。食べられるのに捨ててしまうフードロスが社会問題になっていますが、日本でフラワーロスはまだよく知られていないので、花を大切に思うきかっけとして発信していけたらいいなと思っています。

堀内:Singtexの陳さん、ファッション業界でサステイナブルはひとつのトレンドになっていますが、繊維業界の動向についてどう思いますか。

陳國欽さん:前田さんのコラボの話を聞いてうれしく思いました。ファッション界もスポーツ産業も循環のための取り組みをしています。

コーヒーかすにペットボトルの成分を加えたコーヒー糸を紹介しましたが、機能性素材により生活のクオリティを高めるのはもちろん、リサイクル製品のため服を購入したり廃棄したりする罪悪感もなくなります。

衣類から衣類、生地から生地、糸から糸と様々な段階でのリサイクル、リユースを手がける世界的なブランドも増えており、よりよい循環をめざす動きが広がっています。

堀内:電子ペーパーの取り組みが紹介されていましたが、前田さんは電子書籍をふだん読んでいますか。

前田:効率よく情報を収集したいときは電子書籍を使います。オンラインで購入できるので便利です。紙の本は買うところからストーリーが始まり、カフェで手にとって空間を楽しんだり、読みたい人に気軽に受け継いだりできるのが魅力だと思います。

東京と台湾をオンラインでつないでイベントが進行した。

堀内:E Inkの林さん、紙の本が持つ価値をどう電子書籍で再現するかについていかがでしょうか。

林寅智さん:紙の快適な触感は、タブレットや携帯電話などではなかなか取って代わることができません。情報を目にするとき光を発するデバイスは、電力を消費するうえ、ブルーライトや強い光で目を傷めることもあります。就寝前に使用すれば、睡眠の質に影響があるともいわれています。

一方で電子ペーパーは紙で読み物をする感覚に似ており、目にもやさしく、省エネにもなります。

電子ペーパーは公共情報の表示にも使用できます。台湾や日本では、一部のバス停に電子ペーパーが使用されています。太陽光パネルを設置するだけで表示でき、スマートシティに最適なソリューションです。

地球全体のCO₂排出量ネットゼロに向けても、様々な場面で活用できる電子ペーパーは重要な役割を果たすと期待されています。

堀内:Chung Hwa Pulpの陳さん、日本でもコロナ禍でテイクアウトの需要が伸び、容器が捨てられてプラスチックごみが増える可能性も増えました。台湾での事情はいかがですか。

陳瑞和さん:台湾でもテイクアウトが増えています。台湾は地域ごとにごみの回収システムが確立されており、分類もしっかりしています。
住宅地のテイクアウト用容器は当社の製紙工場に送られ、繊維とプラスチックを分離して、繊維は再生紙に、プラスチックは発電ボイラーに送られて燃料として利用されます。

学校や会社は回収システムが整っていないので、テイクアウト用容器はゴミ焼却炉に行きますが、当社はそのなかからリサイクルできるものをできるだけ回収しています。

当社はバイオメカニズムに着目し、植林をして3~10年で伐採し、植えた分だけ使用する循環型利用をしています。

食品用の分別する必要がない一般の紙類として再利用が可能になったため、包装材は無限にリサイクルできます。これから多くのプラスチック製品の代わりとなるはずです。

堀内:前田さんはふだんの生活のなかで、プラスチックごみをどう減らすか、心がけていることはありますか。

前田:日常的なことでは、マイボトルを持ち歩いています。海に近い鎌倉(神奈川県)に住んでいるので、ビーチクリーン(海岸清掃)に参加していますが、使い捨てのプラスチックごみが落ちていることもあるので意識が高まります。

町全体ではテイクアウト容器を回収ボックスに返して再利用できるシステムもあるので、ゴミがたくさん出るストレスが減りました。

堀内:サステイナブルな取り組みを具体的に形にしている台湾企業、そして日頃から環境への意識とともに生活をされ、フラワーロスの取り組みをしている前田さん、ともに興味深い内容でした。

私たち消費者も意識して環境にやさしい商品を生活に取り入れることで、サステイナブルな社会づくりに貢献できるかもしれないと考えさせられました。本日はありがとうございました。

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