1. HOME
  2. World Now
  3. 心の不調、公に言えるように 米エースの棄権が投げかけ

心の不調、公に言えるように 米エースの棄権が投げかけ

World Now
更新日: 公開日:
朝日新聞デジタル掲載
女子個人総合決勝を客席から見つめる米国のシモーン・バイルス=2021年7月29日、有明体操競技場、細川卓撮影

 スーパースターの突然の欠場が議論を呼んでいる。

 体操女子のシモーン・バイルス(24)=米国=が29日、「メンタル面の不調」を理由に大会連覇がかかっていた東京オリンピック(五輪)の個人総合を欠場した。この日は観客席から、拍手をしながら仲間らを応援した。

 午前中に更新したツイッターでは、多くの激励メッセージが届いたことに触れ、「私がこれまで成し遂げたことや体操選手であることよりも、私の存在自体が大切なものであると気づかせてもらいました」とつづった。

 バイルスは27日の団体決勝の1種目めでの失敗のあと演技を回避。そして、「ストレスがかかっていた。無観客という慣れないことがあった。1年延期もあった。楽しみたいけど、なかなかそうはいかなかった。メンタルが十分じゃないから、仲間に任せることにした」と話した。翌日には個人総合に出ないことを発表した。

■性被害、BLM…一身に受け止めたエース

 しかし、仲間たちは「金メダルどうこうじゃないんです」と笑顔で決断を受け入れ、バイルスも「メンタルが健康じゃないと、(体操を)楽しむことはできない。弱っているときに、あらがうのではなく、そこに対応していくことが大切です」と口にした。

 世界選手権では2013~19年、男女を通じて史上最多となる計25個のメダルを獲得。東京五輪でもメダルラッシュが期待されていた。

 性的虐待事件の被害者の一人でもあり、ブラック・ライブズ・マター(BLM)運動に対する支持も表明。体操界の枠を超え、米国の「顔」としての注目を一身に受け止めていた。

 米メディアはバイルスの棄権を一斉に速報した。

 ニューヨーク・タイムズ(NYT)は、彼女を批判する風潮があることに触れつつ、「彼女たちは超人ではない。こうあってほしいと期待する権利など私たちにはない」とした。(山口史朗、野村周平、ニューヨーク=藤原学思)

朝日新聞デジタルで読む(会員登録が必要です)