スーパースターの突然の欠場が議論を呼んでいる。
体操女子のシモーン・バイルス(24)=米国=が29日、「メンタル面の不調」を理由に大会連覇がかかっていた東京オリンピック(五輪)の個人総合を欠場した。この日は観客席から、拍手をしながら仲間らを応援した。
午前中に更新したツイッターでは、多くの激励メッセージが届いたことに触れ、「私がこれまで成し遂げたことや体操選手であることよりも、私の存在自体が大切なものであると気づかせてもらいました」とつづった。
バイルスは27日の団体決勝の1種目めでの失敗のあと演技を回避。そして、「ストレスがかかっていた。無観客という慣れないことがあった。1年延期もあった。楽しみたいけど、なかなかそうはいかなかった。メンタルが十分じゃないから、仲間に任せることにした」と話した。翌日には個人総合に出ないことを発表した。
■性被害、BLM…一身に受け止めたエース
しかし、仲間たちは「金メダルどうこうじゃないんです」と笑顔で決断を受け入れ、バイルスも「メンタルが健康じゃないと、(体操を)楽しむことはできない。弱っているときに、あらがうのではなく、そこに対応していくことが大切です」と口にした。
世界選手権では2013~19年、男女を通じて史上最多となる計25個のメダルを獲得。東京五輪でもメダルラッシュが期待されていた。
性的虐待事件の被害者の一人でもあり、ブラック・ライブズ・マター(BLM)運動に対する支持も表明。体操界の枠を超え、米国の「顔」としての注目を一身に受け止めていた。
米メディアはバイルスの棄権を一斉に速報した。
ニューヨーク・タイムズ(NYT)は、彼女を批判する風潮があることに触れつつ、「彼女たちは超人ではない。こうあってほしいと期待する権利など私たちにはない」とした。(山口史朗、野村周平、ニューヨーク=藤原学思)