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海外協力隊員を支えるルワンダの「お父さん」 難病の息子を助けるため元隊員が結集

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イディーさん(右)とガンザ・ハビヤンベレ・イーサンちゃん(左)=中島弘司さん提供

途上国に渡って、その国に必要な支援をする国際協力機構(JICA)の海外協力隊。これまでに4万人を超える人が参加してきた。友達や家族と離れ、言葉も文化も違う環境で活動するには、周りの人からのサポートが欠かせない。そんな彼らの活動を、各国のスタッフたちが支えている。アフリカ・ルワンダでは、緒方貞子さんとの出会いに心動かされJICAに加わった男性が、歴代の協力隊員から「お父さんのような存在」と慕われた。その男性の息子が難病になったことを知った隊員OB・OGが、恩返しのために動き始めた。

■300人以上の協力隊員をサポート

ルワンダは、東アフリカにある人口約1300万人の国。1994年に起きた民族対立による大虐殺で閉鎖されていたJICAルワンダ事務所は、2005年に再開した。以来、日本人の職員が常駐し、コロナ禍前は40人の協力隊員が活動してきた。

ルワンダには、3カ月ごとに新しい協力隊員が派遣されてくる。彼らを現地で支えているのが、JICAルワンダ事務所の職員、イディー・ハビヤンベレさん(44)だ。2007年、当時JICA理事長だった故・緒方貞子さんがルワンダに来た時に運転手を務め、「この国はこれからどんどん成長する」と話す姿に感動した。翌年からJICAで働きはじめ、11年には協力隊員の受け入れを支える「ボランティア調整」に。協力隊員が生活に早くなじめるよう、住まい探しや配属先の調整、銀行口座の開設などをしてサポートしてきた。

JICAルワンダ事務所職員イディー・ハビヤンベレさん=中島さん提供

協力隊員は、日本で70日間の訓練を受け、志を持ってルワンダに来る。しかし「3カ月~半年経つと、考え方や言葉などの違いに悩み、ふさぎ込んだり、引きこもりがちになったりする人が少なくない」(JICA職員)という。そういうとき、イディーさんは一人ひとり会いに行って顔を合わせることや、周りの人から話を聞いて状況を知ることを心がけているという。「人のために自分の人生を捧げる彼らを、包み込むような存在でありたい」。これまで関わった協力隊員は300人を超える。

右が川野優希さん=中島さん提供

計3年間活動した元協力隊員の川野優希さん(31)も、イディーさんに支えられた一人だ。初めて降り立ったアフリカの地に不安を感じていたが、職場や近所の人への挨拶まわりにイディーさんがついてきてくれ、「心強かった」と振り返る。

使える井戸を増やす活動では、壊れたポンプを直したり、地域の人たちが管理できる仕組みをつくったりした。約260万人が住む東部地域にある、約250の井戸を担当する協力隊チームのリーダーになり、そのプレッシャーから弱気になったこともあったという。
「自分は何もできない。どうしたらいいか分からない」。イディーさんに打ち明けると、「ルワンダ全体のことを必死に考えるのではなく、近所のお兄ちゃんや子どもたちのような、隣人を助ける方法を考えればいいんじゃないかな」と言われた。その言葉に心が軽くなり、前向きに活動できるようになったという。

JICA職員の中島弘司さん(31)は「イディーさんは、フランクに接して雑談しながら悩みを聞く。孤独感や無力感を抱えがちな協力隊員にとって、“お父さん”のような存在」と話す。

イディーさん(左)と川野さん(中央)=中島さん提供

■難病の息子、手術費用は約2000万円

そんなイディーさんの息子で、生後半年のガンザ・ハビヤンベレ・イーサンちゃんが昨年12月、難病の「胆道閉鎖症」と診断された。肝臓と十二指腸をつなぐ胆管がつまって胆汁が流れなくなる病気で、命にかかわる。医者からは「肝臓の移植手術が必要」と告げられたが、ルワンダで手術できる病院はない。母親のムスタリザ・アンジェリカさん(37)がドナーに適合することや、ベルギーの病院で手術できることが分かったものの、海外での手術は保険適用外。日本円にして2000万円程度かかる治療費は、平均年収100万~150万円程度のルワンダで準備できるものではなかった。イディーさんはどうすればいいか悩み、元協力隊員で現地に住んでいる大江里佳さん(32)に相談した。

「胆道閉鎖症」と診断されたガンザちゃん=中島さん提供

2014年の協力隊員時代の後もイディーさんと交流を続けてきた大江さん。すぐに「力になりたい」と感じたという。同時に「自分一人では、どうにもできない」とも。大江さんも昨年2月、ルワンダ人の夫との間に子どもが産まれたばかり。「諦めてはだめ。あなたを助けたい人が、日本にたくさんいるはず。みんなに相談しよう」と励ました。その言葉を聞いてイディーさんは、JICAルワンダ事務所の職員らにも相談。するとみんなが口をそろえて「何とかしよう」と言ってくれた。たくさんの日本人から、クラウドファンディング(CF)で治療費を集めるアイデアが持ち上がり、5月12日に寄付の呼びかけが始まった。

■元協力隊員らが団結 日本で寄付を呼びかけ

「イディーさんに恩返ししたい」とオンラインで集まった元海外協力隊員ら=中島さん提供

CFはすぐに日本にいる元協力隊員らに広まった。「イディーさんを助けたい」という日本人が13日にオンラインで集まり、実行委員会を作った。川野さんや大江さんもメンバーに入った。中心となる15人が、CFページに載せる日本語の文章をつくったり、写真や動画を編集したりして、支援を呼びかけている。「はじめは妻と2人だったけど、こんなにたくさんの人が助けてくれるのか、と希望が持てるようになった。日本にいる仲間に感謝している」とイディーさん。手術の手配に必要な600万円が集まった時には、家族と泣きながら喜んだという。
大江さんは「日本だったら助かるはずの小さな命。ガンザちゃんに生きるチャンスをください。一人でも多くの人に、協力してもらえたら」と話す。

CFは6月4日まで、「go fund me」のウェブサイトで受け付けている。寄付は6月8日まで、三井住友銀行大分支店の普通1426512(カワノユキ)からできる。問い合わせはメール(saveganza@gmail.com)へ。