■吸水ショーツや月経カップ、大手も参入
フェムテックとは具体的にはどのようなものを指すのか。リアさんが例としてあげたのが、吸水性の高い素材を使っている生理用のショーツや、膣の中に入れて経血をためられる月経カップだ。吸水ショーツは「GU」など国内メーカーの製品の発売も相次ぎ、メディアで取り上げられる機会が増えている。
いずれもナプキンやタンポンと同様に生理中に使えるもので、リアさんは「生理のときの生活を少し楽にするもの。いま日本では月経時のソリューションが盛んになっている」と話した。
次にあげたのが、日本では未発売の「ケグ」という製品。「おりもの」の状態を計測し、連動するアプリで記録して、妊娠しやすい期間を予測するというものだ。フェムテックには「テック」という言葉が入っている通り、市場が先行して広がった欧米では、最新の技術やアプリを使った製品の開発が進んでいる。
■フェムテックとは
フェムテックとは、いつ、どのように広がってきた市場なのか。
フェムテックという言葉が使われ始めたのは2012年。生理周期アプリを開発したデンマーク出身の起業家アイダ・ティン氏が、投資家に「女性の体の悩みごとを解決する」というニーズを理解してもらうため、使い始めた言葉だという。
米調査会社ピッチブックによると、世界のフェムテック市場への投資額は2017年が3.5億ドルで、10年間で15倍超に増えた。
その市場をこれまでひっぱってきたのが「スタートアップ」だ。リアさんは「開発者のストーリーは様々で、面白いものばかり」と話す。開発者が、自身やパートナーの体の悩みごとを解決するために作った製品もあるという。フェムテックには月経、妊活、更年期関連のものなどいくつかのカテゴリーがあるが、開発者側に更年期を経験した人がまだ少ないためか、更年期関連の製品は広がっていない側面もあるという。
■タブーを変えていくために
フェルマータではECサイトの運営のほか、東京都内に店舗も設けている。その狙いは「モノを通して会話を生み出す」ことにある。
日本では、生理や体の悩みごとを人に相談しにくかったり、タブー視されたりする風潮があった。リアさんによると、それは日本だけの課題ではないという。「『悩んでいるのは自分だけではないか』と抱え込み、場合によっては病気の悪化に気づくのが遅れてしまう。安心して経験を語る場があることで、解決の道が見つけやすくなる。経験談を共有することで、他の人の役に立つ部分もある」と会話を生み出す意味を話した。
■社会課題の解決にビジネスができること
最近では経済的な理由で生理用品を買えない「生理の貧困」という問題も明らかになってきた。大学生らが立ち上げた団体「#みんなの生理」が2月に実施した若者へのオンライン調査(671人が回答)によると、5人に1人が「経済的な理由で生理用品を買うのに苦労した」と答えた。
生理の貧困に対して、フェムテックとしてはどんなアプローチができるか。リアさんがあげたのは「選択肢を増やすこと」だった。
「例えば、医療用シリコンで作られた月経カップは清潔に使えば繰り返し使うことができ、使い捨てのナプキンやタンポンを買い続けるよりも経済的な負担が軽く済むかもしれません。選択肢を増やすことで、体に合うものを見つけやすくする。市場を広げることで、コストを下げられるかもしれない。時間はかかるが、企業としてそういったことに取り組んでいきたい」と話した。
視聴者からも、「生理や性教育の話がタブー視されてきた風潮は、フェムテックの成長によって変化すると思うか」という質問があった。リアさんは「市場の拡大だけでは、文化が変わることは難しいと思う。私たちができることは、身近で話しやすい場を作ることや、使ってみたいと思えるものを作ることだと思います」と答えた。