「THREE FLAGS-希望の狼煙-」のライト(左)、まこちゃん(中)、BRO(右)
「THREE FLAGS-希望の狼煙-」のライト(左)、まこちゃん(中)、BRO(右)

親と暮らせなかった若者が考える 家族とは、里親とは

「親に頼れない子どもたちの未来を一緒に考えてみませんか?」
児童養護施設で過ごした経験のあるBRO、まこちゃん、ライトの3人が、当事者の目線で語り出しました。3人からみた家族とは、里親とは、社会が変わっていくために私たちができることとは……。


課題解決に向けた「希望の狼煙」になりたい

プロジェクト「THREE FLAGS-希望の狼煙-」は、ライトこと西坂來人さん(35)、まこちゃんこと山本昌子さん(28)、BROことブローハン聡さん(29)によるプロジェクト。

保護者のない児童や、保護者に監護させることが適当でない児童を、公的責任で社会的に養育し、保護するとともに、養育に大きな困難を抱える家庭への支援を行うことを「社会的養護」といいます。当事者の経験から社会的養護をめぐる現状と課題を正しく伝え、具体的なアクションを共に考えていきたいという思いのもと、YouTubeで情報発信を続けています。

社会的養護に関わる人を増やし、里親の輪を広げていくために私たちは何ができるのか、3人に聞きました。

動画撮影の風景(提供写真)
動画撮影の風景(提供写真)

親と暮らせない子どもは「特別な存在」と思っていませんか

――まずは自己紹介をお願いします。

西坂來人さん(以下、ライト):児童養護施設にいたのは小学5、6年生の時です。父親の暴力から逃げる形で母親が相談機関に駆け込み、父親に接見禁止命令が出るまでの1年弱を過ごしました。そのあと母親の元に戻り、今は映像作家・絵本作家として活動しています。

西坂來人さん
西坂來人さん

山本昌子さん(以下、まこちゃん):私はネグレクト(育児放棄)で保護されて、生後4カ月から19歳まで、乳児院、児童養護施設、自立援助ホームで育ててもらいました。現在は「ACHAプロジェクト」という、児童養護施設出身の人へ振り袖を通して「生まれてきてくれてありがとう」を伝えることを目的としたボランティア活動をしています。

山本昌子さん
山本昌子さん

ブローハン聡さん(以下、BRO):母親がフィリピン人、父親が日本人です。4歳のときに母が再婚して義父と暮らし始めてから11歳まで虐待が続き、火傷が原因で保護されました。19歳まで児童養護施設で暮らしました。THREE FLAGSの活動のほかに、「コンパスナビ」という一般社団法人に勤めていて、社会的養護を経験した子たちのサポートをしています。

ブローハン聡さん
ブローハン聡さん

血縁関係だけが「家族」じゃないよね

――みなさんにとって「家族」や「家庭」、「親」はどういうイメージ、存在ですか?

まこちゃん:私が育った施設は、一軒家で子ども6人と大人3人で生活するグループホームで家庭的な養護を実践していました。だから一緒に住んでいるみんなが私の家族という感覚です。父は「たまに会いに来る人」で、この人のおかげで生まれたという自覚はありましたが、家族と感じたことは一度もないです。それより施設の人たちが家族という感覚。それはいまだに変わらないです。

BRO:僕は親とか家族については複雑な気持ちがあります。僕にとって親、家族は母親だけ。母親の知人や親戚に預けられることも多くて、何度も住居や学校が変わるのが日常でした。今日も誰か知らない人が一緒に住んでいて、その人がご飯を用意してくれるという感覚で、児童養護施設もその延長。その中で唯一気を許せるのが母親だけだったかな。

まこちゃん:BROの中での家族はお母さんだけ?

BRO:そうだね。家族って何だろうって何度も考えたし、血縁関係にこだわった時期もあった。今は家族っていう家族はいないけど、まこちゃんやライトさんは家族だし仲間だし友人。「ファミリー」という言葉のほうが馴染みがあるかな。

ライト:僕は5人きょうだいなんです。母子家庭になってからは、仲のいい家族だったけど、父と暮らしていたときはつらくて……。父親とは小学生の時以来会っていませんが、ずっと恨んでいました。父親というものが自分の中に存在していない、という感覚です。

Q.なぜ、里親やファミリーホームが推進されているの?

週末に通った私にとっての家庭 今もつながる

――まこちゃんは、学校が休みの期間、施設で暮らす子どもたちを家庭に迎え入れてくれる「フレンドホーム」(東京都の制度の名称)に通った経験があるそうですね。「週末里親」のような存在ですね。それはどういうきっかけで始まったのですか?

まこちゃん:小1のときに「(施設の職員に家庭に通うことを)やってみる?」と聞かれて、「行きたい!楽しそう!」って即答して小2から参加しました。私の場合、2年間ぐらいかな、3カ月に1回ぐらいの頻度で、お出かけしたり、泊まりに行ったり。友だちの家に遊びに行く感覚でした。

――そこでの生活、体験から、どのようなことを得ましたか?

まこちゃん:自由にさせてくれて、お祭りの縁日では、あれやりたい、これやりたいっていうと全部好き勝手にやらせてくれて楽しかった印象があります。(笑)

22歳のまこちゃん(左)と、育ててくれた児童養護施設の職員(中)、一緒に暮らしていた「姉」と撮った記念の一枚(提供写真)
22歳のまこちゃん(左)と、育ててくれた児童養護施設の職員(中)、一緒に暮らしていた「姉」と撮った記念の一枚(提供写真)

BRO:その人のことはなんて呼んでたの? お父さんお母さん?
まこちゃん:○○さん、って下の名前で呼んでいた。受け入れてくれていた家庭の事情で継続が難しくて途中で解消になったんだけど、いまだに連絡を取ってご飯に行ったりしている。

BRO:へぇ、まだつながっているんだね。

まこちゃん:クリスマスなどに時々手紙をくれたり、施設の行事にも来てくれたりしていたから。施設の先生(職員)が、「一つ一つのつながりを大事に生きなさい」という方針だったから、私も「会いたい、つながり続けたい」って。

BRO:素晴らしいね。

BROの少年時代(提供写真)
BROの少年時代(提供写真)

巣立っても「帰れる場所」であってほしい

――施設を出て里親家庭に行ったから、それまでの成長の記録・記憶がある施設と切れてしまうのではなく、また里親家庭から巣立っても、そこで切れてしまうのではないということですね。色々な選択があると思います。BROさんとライトさんは里親ってどんなイメージを持っていましたか?

BRO:養子縁組のことは知っていても、里親の制度は知らなかった。週末だけでも、まこちゃんみたいに継続的な関わりを持てると理想的だよね。自分のことを子どものころから知ってくれている大人の存在は大きいから。僕の場合、施設の人が、自分が覚えてないこと、虐待にあって記憶がない部分とかも「あの時ああだったよ」って教えてくれるから、それは今になってうれしいなと思う。「事実」は変わらないんだけど、僕の中では過去にあったことの意味がどんどん変化している。過去の「解釈」は変わっていくと思うんです。自分のルーツをたどるときに、関係が切れずに細い線でもつながっている人がいれば「1回泊まりにきたよね。あのとき、こうだったよ」って話してくれるだけでも十分だから。

ライト(中央上)ときょうだいの幼少期(提供写真)
ライト(中央上)ときょうだいの幼少期(提供写真)

ライト:仕事で里親の啓発ビデオを作る中で制度を知っていくと、子どもの成長には愛着って大事だなと感じます。里親さんだったら、家があって、そこに人がいる。お父さんお母さんに代わる人がそこにいて、ずっと見てくれる環境は、養育の形としてすごくいいと思います。

まこちゃん:私は卒園してからも一緒に生活した職員との交流が続いているし、退職した人でもいまだに家に遊びに行っているよ。

BRO:レアだよね、滅多にないと思う。個人的に連絡しちゃいけないという施設もあるし。

ライト:(親と暮らせない子どもたちが成長した後に)「帰れる場所がなくなる」という感覚を持つのは、あるあるだよね。

まこちゃん:18歳を過ぎると里親さんと縁が切れてしまう子の話も聞く。そういうことを希望する人は双方にいると思うけど、(法的な措置が終了することによって)スパッと切れるんじゃなく、(里親家庭や児童養護施設で育った若者が自立していくための支援として国や自治体の援助のもと)アフターケアの部分も担ってもらえるようになってほしい。

「THREE FLAGS-希望の狼煙-」は、視聴者と一緒に「私たちが今できること」を考えていくプロジェクト
「THREE FLAGS-希望の狼煙-」は、視聴者と一緒に「私たちが今できること」を考えていくプロジェクト

知られていない、誤解されているリアルを変えたい

――社会的養護が必要な子どもたちは年々増えています。どうしたら里親制度や社会的養護に関わろうという人が増えていくと思いますか?

BRO:この活動をしていると、自分事として捉えていない人が圧倒的に多いように感じます。「THREE FLAGS-希望の狼煙-」の番組でもずっと言い続けていますが、里親を知ってもらうところからスタートしないと。僕も施設にいたときに養子縁組しか知らなかった。里親という言葉は聞いたことがあっても、制度はよく知らないという人は結構多いと思う。

まこちゃん:当事者と関わる中で、自分が里親家庭で育ったということは言わなければバレないし、バレないほうが住みやすい世の中、という認識があると感じます。何も気にせず、里親家庭で育っていることを打ち明けられる世の中になる必要があると思う。

ライト:「児童養護施設の子たちって、悪いことして更生して、今は元気でやってらっしゃるんですよね」と言われることもある。親と暮らせない子どもたちのことを知らない人がまだまだたくさんいる。

まこちゃん:私も社会に出てみたら「施設出身の子に初めて会った!」みたいな反応をされたり、「もっと暗い感じかと思ったら普通に明るくてびっくりした」とか言われたりしています。

ライト:思い込みがあるんだよね。

自らの経験や考えを交えながら語り合う3人
自らの経験や考えを交えながら語り合う3人

渦中にいる子たちの希望の光になってほしい

――里親に関心を持っている人たちや、里親になるのは難しいけど子どものために何かしてあげたいと思っている多くの人たちへ、メッセージを下さい。

BRO:僕たちはたまたま「社会的養護」の枠の中に入れたけど、その枠からあふれてしまう子たちもすごく多い。少しでも関わりを持つことで、そういう子たちが助かって、救われていきます。一つの動きが、いま渦中にいる子たちの希望の光になると思うので、手の届くところ、一歩踏み出せるところから関わってみて欲しいなと思います。

まこちゃん:里親さんも、何かあったときに一人で抱え込まないで欲しい。里親さんの家族だけでなんとかするのは難しいこともあるだろうから、里親さんが集まる場など相談できる仲間とのつながりが大切だと思う。
まずは「自分の家族や大切な人、身近な周りの人たちが笑顔でいるか」ということを大切にしてほしいです。自分が楽しく無理をしていないかを考えることです。しあわせの連鎖を生み出すには、まず自分も身近な人もしあわせであることからだと思います。

ライト:子どもが安心していられる場所があって、子どもが主体的に選べることが大事。子どもがどう感じて、何を求めているかをよく理解したうえでサポートしてもらいたいです。


THREE FLAGS -希望の狼煙-/児童養護施設で暮らした経験のある3人が、自らの経験や考えを交えながら社会的養護の現状や課題を紹介し、視聴者と一緒に「私たちが今できること」を考えていく番組をYouTubeで発信するプロジェクト。社会的養護をより多くの人々に関心を持ってもらうこと、社会的養護当事者の後輩たちの道しるべになること、番組を見た人に次のアクションを提案することを目的としている。広告収入は児童養護施設や親に恵まれない子どもたちへの支援団体へ寄付をしている。チャンネル登録や見るだけで支援につながる新しい仕組みのYouTube番組。

THREE FLAGS -希望の狼煙-/児童養護施設で暮らした経験のある3人が、自らの経験や考えを交えながら社会的養護の現状や課題を紹介し、視聴者と一緒に「私たちが今できること」を考えていく番組をYouTubeで発信するプロジェクト。社会的養護をより多くの人々に関心を持ってもらうこと、社会的養護当事者の後輩たちの道しるべになること、番組を見た人に次のアクションを提案することを目的としている。広告収入は児童養護施設や親に恵まれない子どもたちへの支援団体へ寄付をしている。チャンネル登録や見るだけで支援につながる新しい仕組みのYouTube番組。

本事業は里親制度広報啓発事業として実施しています(実施主体:朝日新聞社・厚生労働省補助事業)
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