いま、あなたを待っているこどもたちがいます。「いつか」を「いま」に。いま、里親になろう!広げよう「里親」の輪
3人のこどもを育てる大場雅琴さん
3人のこどもを育てる大場雅琴さん

家族の気持ちそろえて ママ友も力になった

始める前から完璧な里親になろうと気負わなくていいんです――。

こう語る千葉市の大場雅琴さん(55)は、夫の隆太さん(45)と2人の娘と暮らしていた2019年秋、児童相談所の要請に基づき生後2カ月の女の子を「一時保護」として迎え入れました。経験を積む中で、すべてを抱え込まず、地域のコミュニティーや周囲の支援を上手に利用しながら子育てをしていく、というコツがだんだんと見えてきました。

里親のこと、家族みんなで話し合った

里親制度について調べてみようと動き出したきっかけは、里親家庭の開拓から、研修、委託後の支援までを一貫して行う、民間の「フォスタリング機関」と呼ばれる団体のことを新聞で知ったのがきっかけでした。

「里親がこんなにも足りていなくて、児童養護施設でもたくさんのこどもが家庭養護を待っていることを知りました。夫婦はともにクリスチャンであり、夫に話してみると、『うちでも受け入れなくちゃ』って言ってくれたのが、すごくうれしくて心強かったです」

里親に認定された2019年、2人のこどもは小学6年生と3年生でした。こどもを迎え入れて自分たちがお姉さんになるかもしれない、ということを早くから2人にも話していました。

「『妹や弟ができるかもしれないよ』って。『大事なものを壊されたりママとの時間が減ったりするかもしれないけど、家族が増えることはプラスだよね』とも」

「今、日本全国でどのぐらいのこどもが待機していて、どれだけ里親が足りていないのか。どんな虐待の問題が起きているのか。事前の研修で学んだ内容も、その都度、説明していました。こどもたちも一生懸命聞いてくれるんです。そうすると、家族みんなが同じ気持ちになれました」

里親の現状をこども達と共有し、その大切さを語る大野雅琴さん
実子の娘たちも子育てを手伝ってくれているという

日に日に表情が豊かになった

初めて受け入れた女の子は、児童相談所が「緊急を要する」と判断して一時保護をした乳児でした。都道府県などに登録された里親は、このように児童相談所が保護したこどもを一時的に預かるよう頼まれる場合があります。

「『一時保護という形で明日から預かってほしい子がいる』と電話がかかってきてびっくりしました」

乳児は、日に日に表情が豊かになっていったことが印象に残っています。一時保護の期間は延び、雅琴さんも長期里親を希望していたことから、児童相談所や自治体の審議会の検討を経て長期での委託に切り替わる予定です。

娘の受け入れが長期になり、日々の成長を喜ぶ大野雅琴さん
受け入れて1年が過ぎ、日々の成長が家族の喜びになっている

ママ友の「お手伝いできるよ」大きな支えに

娘たちの授業参観があれば女の子を学校に連れて行きます。大場さん夫婦が里親家庭であることは、学校の先生や娘の友だちも知っています。また、ママ友など地域のコミュニティーとの日常的な付き合いがあり、その人たちの力も借りることで里親家庭だけで抱え込まないようにしています。

「ママ友にも、里親認定のための研修の時から『必要なことを頼むかもしれないからよろしくね』と話していました。ママ友たちは、『自分は里親にはなれないけれど、お手伝いはできるよ』と言ってくれました。ちょっとした買い物を手伝ってくれたり、抱っこひもとかベビーグッズを貸してくれたりします。思っていた以上に地域の人たちは協力的でした」

「もちろん児童相談所やフォスタリング機関の職員の家庭訪問などを通じて専門的な支援もあるので、今のところ困ったことはありません」

愛する娘たちの成長日記を手に持つ大野雅琴さん
毎日成長の記録をつけ、里親家庭を離れる時に持たせたい

いつか、元の家庭に戻っていく日のために

里親制度は、特別養子縁組とは違い、生みの親が育てられる環境が整ったと児童相談所が判断すれば、こどもは元の家庭に戻っていきます。一方、難しければ里親としての養育期間が長くなっていきます。また、こどもの成長に合わせて、生みの親の元で暮らせない理由や里親家庭にやってきたことを本人に伝える「真実告知」も必要になってきます。雅琴さんが養育している女の子はまだ1歳ですが、将来のことを考えています。

雅琴さんは、この期間の思い出や成長の記録が「空白」にならないように毎日記録をつけ、よく写真を撮っています。2人の娘たちは「新聞」を作ってくれています。ベビーバスに入って水をバシャバシャ叩いたとか、哺乳びんでミルクを飲む時に手を伸ばしてきたとか、子育てでは日々の変化一つ一つがニュースだからです。こうしたこともあり、里親家庭の経験で、娘との関係、夫婦関係ともに絆が深まりました。

「里親家庭をやってみたいと思う人たちは、ぜひ一歩踏み出して下さい。周りの人も助けてくれるので不安は解消していきます」


おおば・まこ/1965年、台湾生まれ。ご主人の隆太さん、中1の長女、小4の次女とともに千葉市に暮らす。フォスタリング機関、NPO法人キーアセットの研修を経て、2019年に里親登録。現在女の子1人を預かっている。

おおば・まこ/1965年、台湾生まれ。ご主人の隆太さん、中1の長女、小4の次女とともに千葉市に暮らす。フォスタリング機関、NPO法人キーアセットの研修を経て、2019年に里親登録。現在女の子1人を預かっている。

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