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Breakthrough 突破する力 ギタリスト、アーティスト MIYAVIが信じるWow!から生まれる希望「なにもない、ゼロ。それが原動力」



今年の2月、バングラデシュにあるロヒンギャ難民キャンプを訪れ、ギターを弾いた©UNHCR Caroline Gluck

アンジーとの出会い 「扉を開けて」


国内外での音楽活動が安定してきた13年、思ってもいない転機が訪れた。渡辺謙らをハリウッドに紹介してきた演出家の奈良橋陽子に、ある映画への出演を持ちかけられたのだ。第2次大戦で捕虜となった元五輪選手の人生を描いたアンジェリーナ・ジョリー監督作品の「不屈の男 アンブロークン」。オファーされたのは、主人公の米兵を執拗(しつよう)に虐待する日本兵役だった。「カリスマ性があって素敵(すてき)な人」というジョリーの希望通りだと感じた奈良橋に、最初は「演技をしたこともないのに、そんなセンシティブな役なんて」と断るつもりだった。だが、来日したジョリーに「日米の戦争の勝敗をめぐる話ではない。どれだけ苦しめられても許せる、人間の強さの物語だ」と説得された。奈良橋は「言ったことが、すぐピーンと響く。心と感性が肉体につながっていて、彼自身がまさに楽器だった」と絶賛する。


ただ、作品は日本では、違った形で注目されることになる。「日本軍の捕虜虐待を強調していて反日的」などと問題となり、一時は上映も暗礁に乗り上げた。MIYAVIの父親が、もともとは韓国籍でのちに日本国籍を取得したルーツも、ネットで騒がれた。だが、落ち込むことはなかった。「意見があわないとすぐ『反日』と批判する。それが日本にとって、どれだけマイナスになっているか、わかっているのか。壁をつくりやすく、扉を閉じやすい。そんな国のためにできることがもっとあるかもしれない」


撮影後の14年に妻と幼い娘2人を連れてロサンゼルスに移住。活動の幅が広がった。パリ・コレクションでモデルデビューし、日本の人気漫画『BLEACH』の実写版にも出演が決まっている。「人をWow! ってワクワクさせる時、希望が生まれる」と思うから、音楽だけでなく自分のさまざまな可能性に挑み続ける。


昨年11月からは国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の親善大使をつとめる。「親善大使なんてロックじゃない」と躊躇(ちゅうちょ)していたが、ジョリーの誘いで15年に訪ねた中東・レバノンの難民キャンプで、去り際までそばを離れなかった少年が「将来はロックスターになりたい」と言っていると聞き、気持ちが決まった。


自分も体一つで東京に、そしてアメリカに飛び込み、もがいてきた。だからこそ、人種も境遇も違う人たちが認めあい、一緒にやっていける世界を思う。楽曲「The Others」の歌詞には、そんな思いがあふれている。


国を名付けたのは誰? 国境をひいたのは誰? /俺たちがお金のために争ってる間に/誰かがお金を刷ってる/銃の代わりに俺たちはギターを弾く/高らかに歌い続けよう/それが俺たちの生きる道 /(中略)俺たちは皆それぞれ違う


(文中敬称略)



(次ページへ続く)

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