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スタートアップのアイリスがピッチコンテスト1位 AI医療機器でのど撮影、迅速診断

スタートアップワールドカップ 更新日: 公開日:
スタートアップワールドカップ2023の東京予選で1位に輝いたアイリスの沖山翔代表
スタートアップワールドカップ2023の東京予選で1位に輝いたアイリスの沖山翔代表=2023年9月8日、東京、関根和弘撮影

このイベントは、スタートアップへの投資事業などを展開するアメリカのベンチャーキャピタル「ペガサス・テック・ベンチャーズ」(本社=カリフォルニア州)が主催し、今年で5回目。世界約50カ国・地域で予選が開かれ、日本では7月、京都でも予選があった。京都予選はスマートホームメーカー「HOMMA Group」(本社=アメリカ・シリコンバレー)が勝ち抜いており、アイリスとともに日本代表として決勝に進む。

アイリスは2017年の設立。患者ののどを撮影し、短時間でインフルエンザの診断をするAI搭載の医療機器「nodoca」を開発、昨年12月に発売した。同社によると、この機器を使えば、より迅速に判定結果が分かるほか、患者の痛みが少ないなどのメリットがあるという。

予選の最後に登壇した医師で代表の沖山翔氏は、沖縄・波照間島など離島で医師として勤務してきた経歴を披露。「僻地や離島の医療格差は厳しい。いたたまれなくなって起業した」と話し、次のように語った。

「のどのデータベースというのはまだ世の中にありません。私が持っている医療機器のAIカメラ、これを使って世界最大規模ののどの画像ライブラリを構築しました。これはただのデータベースではなく、診断結果にひも付いた情報リッチなメディカルデータベースです」

沖山氏は、将来の展望について「AI検査ですので、使われれば使われるほどデータが増えていき、咽頭がんが診断できたり、アレルギーや感染症に適応できるようになったり、精度が伸びていく」と語った。

沖山氏は結果発表後、GLOBE+の取材に応じ、「私たちのプロダクトは人種や国籍は問わないものなので、(アメリカでの決勝戦をきっかけに)たくさんアイリスのことを知ってもらえたらうれしい」と語った。

ほかの出場会社のプレゼンの主な内容は次のとおり。

OniGO(オニゴー、梅下直也代表)

アプリで注文して最短20分でご自宅まで食料が届く。このサービスを、我々はシステムをフルスクラッチで開発し、オペレーションも磨き上げてきました。特に最近ではChatGPTを活用した、チャットコマースの機能を実用化し、今後AIを活用して、パーソナライゼーションした、より楽しく簡単に買い物できる形にアプリを進化させます。

OniGO(オニゴー)の梅下直也代表
OniGO(オニゴー)の梅下直也代表=2023年9月8日、東京、関根和弘撮影

バイオマスレジンホールディングス(神谷雄仁代表)

世界中がバイオマスプラスチックの導入を競うように今進めています。我々が提供しているのは、二つのブランドになります。一つはお米を使ったバイオマスプラスチック「Rice Resin」。もう一つは生分解性という機能を載せた「Neoryza」です。3年前に全国の郵便局が我々の素材をレジ袋に採用していただきました。現在800アイテムを超えて、いよいよコンビニのパッケージや、来春には自動車部品にも使われることになっています。

バイオマスレジンホールディングスの神谷雄仁代表
バイオマスレジンホールディングスの神谷雄仁代表=2023年9月8日、東京、関根和弘撮影

Anotherworks(アナザーワークス、大林尚朝代表)

日本は本当に多くの課題を抱える国です。そのど真ん中にあるのが、労働力人口の減少です。そのような課題を我々は副業で解決すべく運営しておりますのが、複業(ふくぎょう)クラウドというサービスです。複業クラウドとは、副業人材と、人材を採用したい企業や自治体がウェブ上でマッチングするプラットフォームです。マッチングしても手数料だったり、中間マージンはいただきません。月額サブスクのプラットフォーム使用料のみです。

Anotherworksの大林尚朝代表
Anotherworksの大林尚朝代表=2023年9月8日、東京、関根和弘撮影

SHE(福田恵里社長)

非正規雇用比率が高い女性にはどこでも働けるトータルなスキルがなかったり、自信がない人が圧倒的に多い。これは世界共通の女性の課題なんです。これを解決するのが私たちSHElikesです。SHElikesでコーチングを受けてみましょう。WebデザインやWebマーケティングなど、オンライン100レッスン以上が受け放題、自分の好きが見つかります。スキルを獲得したらお仕事の紹介、転職、起業、様々な出口を支援しています。

SHEの福田恵里社長
SHEの福田恵里社長=2023年9月8日、東京、関根和弘撮影

Buzzreach(猪川崇輝・代表取締役CEO)

もし皆さんの身近な人が難病やがんと宣告されたらどうしますか。目の前に最善な治療法や治療薬があれば、当たり前に使いたいと思いますよね。その当たり前を形にするためには、治験というプロセスを必ず踏まなくてはいけません。この治験にかかる期間、なんと10年です。病気と闘っている患者さんに1日でも早く新たな治療の選択肢を届けるためには、治験をDXしていく必要があります。我々は、この治験をDXしていく日本唯一のスタートアップです。

Buzzreachの猪川 崇輝・代表取締役CEO
Buzzreachの猪川 崇輝・代表取締役CEO=2023年9月8日、東京、関根和弘撮影

AirX(手塚究・代表取締役CEO)

AirXは空の移動革命を起こします。ヘリコプターは非常に高額です。航空会社にとっても収益が上げづらい。将来大きい市場として期待されていますが、必要な航空機、整備士が圧倒的に不足しています。これを解決します。航空機のオーナーは、買った機体を我々に預け、収益を上げ、従来のように高額の維持費がかかりません。航空会社は機体をいい条件で使え、我々の生産的なプラットフォームで案件を確保することが可能となりました。

AirXの手塚究・代表取締役CEO
AirXの手塚究・代表取締役CEO=2023年9月8日、東京、関根和弘撮影

PETOKO(大久保泰介・代表取締役社長)

ペットは精神的な支えとして、家族の一員になっています。一方で社会ではそうではありません。殺処分問題があります。そこで私たちは、ペットを家族として愛する世界を作るため、三つのサービスを展開しました。保護犬や保護猫との出会いをつくるマッチングサイト、獣医者など専門家が正しい知識を届けるメディア。そして日本の食材メインで作る、手作りご飯の完全食です。今後は蓄積されたデータをもとに、AIの専門家がペットそれぞれに寄り添い、スマートコンシェルジュアプリへと進化します。

PETOKOの大久保泰介・代表取締役社長
PETOKOの大久保泰介・代表取締役社長=2023年9月8日、東京、関根和弘撮影

パナリット(小川高子・共同創業者兼日本代表)

私はこの事業を始める前は、Googleシリコンバレー本社で人事戦略の仕事をしていました。そこでは従業員に関するあらゆるデータを使い、採用における年間2億円相当の非効率を解消したり、著しく研修受講率の割合が低いプログラムを抜本的に解決したりしてきました。ですが、一歩Googleの外に出てみると、人事データの活用はまったく進んでいません。金の領域も、物の領域も、データ活用は当たり前なのに、人の領域だけ全くわからない。そこで我々は、既存のシステムやエクセルを簡単に連携でき、データの診断、クレンジングにも対応する人事データの分析プラットフォームを作りました。例えば「新入社員の入社1年以内離職率って悪化しているの?」「残業時間とエンゲージメントの相関性は?」、こういったことをデータで判断できるようになります。

パナリットの小川高子・共同創業者兼日本代表
パナリットの小川高子・共同創業者兼日本代表=2023年9月8日、東京、関根和弘撮影

T2(下村正樹・代表取締役CEO)

物流の2024年問題。ドライバーの高齢化、賃金、労働基準法の改正、宅配事業の増加。これらによって近い将来、4分の1のドライバーが不足すると言われています。この危機に自動運転トラックによる高速道路輸送で立ち向かうのが我々T2です。出発点から有人のドライバー、高速道路付近の切り替え拠点まで輸送。切り替え拠点から高速道路を無人のトラックが物を運び、到着地の切り替え拠点で再び有人のドライバーが皆様に荷物をお届けします。長時間労働や深夜輸送がなくなり、安全性、サービス性が格段と向上します。さらに長距離輸送が24時間稼働することで、配送効率も向上します。2025年度には、関東から関西まで、自動運転で事業を開始する予定です。

T2の下村正樹・代表取締役CEO
T2の下村正樹・代表取締役CEO=2023年9月8日、東京、関根和弘撮影