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学校改革のカリスマ 工藤勇一校長が「オルタナティブスクール」を語る

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千代田区立麴町中校長の工藤勇一=丹内敦子撮影

公教育というとき、公立か私立かは関係ありません。何のために学校があるのかという点では共通です。私が考える学校の役割は二つ。一つは、大人になって生きていくために必要なことを教え、支援する。もう一つは、世の中にはいろいろな人間がいると知ってもらうことです。

多様な人間がいることを受け入れる。自分の意見は大切だけど、みんなの主張も大事にしてあげたい。全員がOKというものをさぐる話し合いのプロセスを経験して、社会の成り立ちを知る。つまり民主主義を体験するということです。それを教えるのが学校だと思います。

残念ながらいまの世の中、「民主的な学校をつくろうとしているんです」と言ったら、「この校長、何者だ?」という反応になってしまいます。考え方がちがう時に対話もしないで、トップダウンで決まることを期待する。うまくいかないと、「トップのせいだ」「組織のせいだ」と他人のせいにする。そんな大人を見て、子どもは批判ばかりすることを覚えていきます。

日本の公教育を変えなければいけないと考え、校長になってやろうと38歳の時に思いました。他人のせいにするのではなく、子どもたちを当事者に変える教育をしたい。まず、ありのままを受け入れ、自分にできることは何か、自分はどういう生き方をしたいのかを考える。それは君自身が決めること、なのです。

麴町中学校。創立は1947年。2012年に新校舎が竣工した

定期テストや固定担任制を廃止したのも、そのためです。やらされる学習では意味がない。生徒のすべてを1人の担任にゆだねるようなやり方では、責任はすべて担任に向かいがちだし、担任の方も問題を抱え込むことが多くなります。

オルタナティブスクールのような教育は、かつての寺子屋や藩校にもあったように思えます。それぞれが学びたいことを学び、教え合って、互いに高めていく。地域を担う人材を育てることが、社会を良くすることになるという信念のもとに、それぞれの地域が自律的に教育を実施してきたのではないでしょうか。

そうした意味でオルタナティブスクールに期待するのはわかりますが、一方で「うまくいかないのは、あの先生が悪いから」とか「イエナプラン教育だったらいいのに」とか勝手に理想を描くだけなら、なにも変わらないと思います。

この5年間、麹町中校長としてやってきたことは「目的と手段の観点から、教育を見直す」ということです。目的のために手段があるのであって、目的と手段をとりちがえてはいけない。目的とは、先ほど話したように、生きるのに必要なことを知り、多様な人がいると知ることです。それには自ら考えて決定する、自律する力を身につける必要がある。オルタナティブスクールならできて、既存の学校にはできないということではないし、逆でもありません。自ら考えて、自らの責任で選べばいい。他人のせいにしない。やろうと思えばできるのだと思います。