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米国で万能鍋「Instant Pot」が大人気 健康志向×時短で開花する新ビジネス

働くママのシリコンバレー通信 更新日: 公開日:

仕事や外から帰宅し、何はともあれ急いで晩御飯を作る。子供がいる場合は、就寝時間のこともあるので、時間との戦いとなる家庭も多いと思います。私の場合、帰れるときは6時過ぎに帰宅、7時ごろまでに夕食を作って食べ始めて、8時には就寝させたいところですが、食後に宿題をしたり、長いお風呂に入ったり、遊んだりしてしまうため、遅い時間にずれ込み気味で気持ちばかりが焦ります。ちなみに一般的にアメリカの子供達の就寝時間は早く、親もそこは結構厳しくて、低学年のうちは7時半就寝という家庭も多く見られます。

健康管理は自己責任、病院に行くと高くつく、早め早めの予防医療という意識が浸透しているアメリカについては以前別の記事で紹介しましたが、それに伴い、食事にエネルギーを注ぐ家族が増えてきました。アメリカ広しで、一概に一括りはできませんが、昨今の万能調理マシン「Instant Pot」(インスタントポット)の爆発的な流行は全米全体の健康志向のトレンドを裏付けているように思います。

ホリデーシーズン、電車に乗っているとInstant Pot の箱を抱えて帰宅する人たちにも遭遇します。サンクスギビングの後のブラックフライデーやクリスマス商戦にかけて、相当今年も販売数が伸びていることが予測されています=グリーンバーグ美穂撮影

周囲を見渡すと友人や知人、ほぼ全員が Instant Potを持っていて、これはもはや社会現象と言っても過言ではないでしょう。子供がいる家庭だけでなく、男性やシングルの若い層にも受けているのも特徴の一つで、「この人料理したっけ?」という人や、「特段ヘルシー志向じゃなかったよなぁ」という人も「疲れて帰ってきてもすぐに美味しいご飯ができるんだよ」と熱く語ります。さて、この 1台10役の万能キッチン・ガジェットですが、私がなんと言っても一番恩恵を受けているのは圧力鍋のスピード。

野菜を大量に食べるので、ブロッコリーやカリフラワーが2分で調理できるのは本当に便利です。時間のかかるビーツも入れて放置しておけば30分後には柔らかくなっています。また、豆料理も頻繁に登場するので、レンズ豆のスープなどがあっという間にできてしまします。チキンやお肉も美味しくジューシーで、何を作ってもほぼ失敗しない、というのはありがたい。平日は30分以上調理にゆったりと費やすのはなかなか難しいですし、今日も大したもの作れなかった、という罪悪感が軽減されます。

ジューシーなホールチキンもあっという間=グリーンバーグ美穂撮影

Instant Potは、コンピュータサイエンスのエンジニアだったお父さんが、二人の子供にきちんとしたご飯を作ってあげる時間を見つけることが難しかったこと(なんとも親近感が湧く動機)、そして彼の失業が相まって製品開発に至ったとか。外からの投資を受けず、広告を一切せず、シェフやブロガー、インフルエンサーを活用することで、じわじわとここまで浸透してきました。

また、ほかのお助けツールとして利用者が多いのがミールキットデリバリです。その料理で使う分だけの食材が届き、家庭では箱を開けて調理するのみ、というサービスです。同様のサービスはここ数年、数多く登場しましたが、我が家は Blue Apronというサービスを月に1、2回利用しています。2食x 4人分で$69.92と安くはないですが、食材がオーガニックで、普段めったに使わない調味料などの材料が無駄にならないこと、ちょっとスペシャルナイトディナーな雰囲気が味わえるので気に入っています。

BlueApron その料理で使う分だけの食材が届きます(BlueApronのHPより)

私は料理は好きですが、自分の作る料理というのは大体味が想像できてしまいますし、レシピもマンネリになりがち。時間がないので昔のように料理教室に習いにいくこともできません。Blue Apronのメニューは、ちょっと凝ったグルメ系のものや、エスニックの料理があるので、それを覚えて、ホームパーティーなどで作ることもありました。

しかし、手の込んだ料理よりも、調理の過程がだいぶシンプル化したメニューが最近増え始め、個人的にはちょっと不満を感じています。競合するサービスが増え、経営を見直している事情もあるでしょうが、短時間で作れるニーズの方が上回っていることを反映しているのは明らかです。

食料品などをウェブから注文し、個人のショッパーが買い物して配達してくれる Instacart(インスタカート)の利用者は都市部を中心に多いですが、ウォルマートでは、それをさらに上回るサービスを実験中です。それは、一回だけ利用できるスマートロックで解錠し、配達員が冷蔵庫まで生鮮食品を入れてくれる、というもの。買い物から購入した野菜や牛乳などを冷蔵庫しまうというのは、やはりひと手間で、それなりに時間もかかります。また、届けてもらっても生鮮食品の場合は冷蔵庫にいれないといけないので不在にできず、職場から好きなときに注文して配達してもらう、というわけにもいきません。以前だとそこまでするなら、ファーストフードや外食でいいわ、ということだったのでしょうが、こういったサービスが誕生するのも健康志向を反映してのことと思います。

健康志向の高まりを牽引している のは、ミレニアル世代の22-37歳の消費者層と言われることもありますが、柔らかく煮たり蒸したりが安全で簡単にできるInstant Pot はシニア世代にも受けていますし、ミールキットや食品のデリバリサービスも自力での買い物が困難な上の世代にも広がっていくでしょう。巨大ウェルネス産業時代の到来で、予防医療、健康志向、そして、時短を組み合わせたアイテムやサービスは、引き続き大きなビジネスチャンスにつながっていくように感じています。