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世界報道写真展から

世界報道写真展から——/自爆ベルトを巻いた少女は 

[第9回]アダム・ファーガソン


「人を殺すならば、自分が死んだ方がいい」。その一心で、アイシャ(14)は「標的」とされた兵士たちに近づくと、素早くガウンをまくった。現れたのは、爆弾がついたベルト。兵士たちは銃の引き金を引くかわりにベルトを取り外し、アイシャは生き延びた。おそらく家族でただ一人。


ナイジェリア北東部の村をイスラム過激派ボコ・ハラムが襲った。父は連れて行かれ、母、きょうだいと逃げた。途中ではぐれてしまったアイシャと弟(10)はボコ・ハラムにつかまり、彼らの拠点に連れて行かれた。ほどなく弟は爆弾をくくりつけられて、バイクの後ろに乗せられた。バイクが戻ってきたとき、弟の姿はなかった。

撮影者Adam

しばらくたったある日、アイシャは呼び出された。「次は、おまえの番だ」


オーストラリア人の写真家アダム・ファーガソン(39)は2016年末からボコ・ハラムを追っていた。子どもを使った自爆攻撃が急増していた。生き延びた子どもを探したが、困難を極めた。身元が知れると報復の危険があるためだ。地元記者のつてで5週間かけアイシャを見つけた。


ファーガソンは、彼女の壮絶な体験を前に暗澹たる気持ちになったが、アイシャは撮られる意を決し、約束の場所に現れた。17年9月のことだ。「あれだけの体験をしながらまっすぐカメラの前に立つ、並外れた気丈さと勇気に圧倒された」。写真とは、撮る人のまなざしを通して物語を伝える方法だと思う。だからこそ、「被害者という既視感のある姿ではなく、肖像写真でその力強さと美しさを表し、彼女をたたえたかった」。

Adam Ferguson for The New York Times
Adam Ferguson for The New York Times
Adam Ferguson for The New York Times



ボコ・ハラム(メモ)


ボコ・ハラムは、ナイジェリア北東部を拠点にテロを繰り返すイスラム過激派の通称。現地語で「西洋の教育は罪」を意味し、ナイジェリアの問題は、旧宗主国の英国がもたらした西洋的価値観にあると考え、イスラム主義国家の樹立を目指して2002年に結成された。


当初は混迷する社会を、イスラム法の厳格な施行で改革しようという反体制運動組織だった。だが次第にテロ組織の色を強め、14年に276人の女子生徒を誘拐し、世界に衝撃を与えた。国連児童基金(ユニセフ)によると、その頃から子どもが自爆攻撃に利用され始め、17年には前年の30人から急増し、少なくとも135人が犠牲になっている。その多くが女の子だ。


(GLOBE記者 高橋友佳理)


    ◇


世界報道写真展2018(世界報道写真財団、朝日新聞社主催)

今号から18年の受賞作を紹介します。6月9日から8月5日の東京都写真美術館から各地で写真展を開きます。

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