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「ネオナチだって、変われる」~『女は二度決断する』

東京でインタビューに答えるファティ・アキン監督=仙波理撮影


シネマニア・リポート Cinemania Report [#88] 藤えりか


「ネオナチだって変われる」。ドイツの若き名匠ファティ・アキン監督(44)にそう言われ、私は「本当に?」とつい前のめりになった。14日公開の『女は二度決断する』(原題: Aus dem Nichts/英題: In the Fade)(2017年)は、人種差別による暴力も厭わないナチス信奉者から改心した人たちにアキン監督自身が聞き取りを重ねて撮った。人種差別や憎しみの心は、なくなりうるのか。アキン監督にインタビューし、考えた。

『女は二度決断する』より © 2017 bombero international GmbH & Co. KG, Macassar Productions, Pathe Production,corazon international GmbH & Co. KG,Warner Bros. Entertainment
GmbH

『女は二度決断する』は、トルコ系移民が多いドイツ北部ハンブルクが舞台。主役は、トルコ移民の夫ヌーリ(ヌーマン・アチャル、43)と6歳の息子ロッコ(ラファエル・サンタナ)と幸せに暮らす白人カティヤ(ダイアン・クルーガー、41)だ。ある日、カティヤがロッコをヌーリの仕事場に託して出かけた後、そのすぐそばで爆発が起きる。警察はトルコ系同士の抗争だとみて捜査、夫にも原因があったのではないかと疑いの目を向け、カティヤは苦しむが、次第に若いネオナチのドイツ人夫婦が容疑者として浮かぶ。昨年のカンヌ国際映画祭では主演女優賞、今年1月にはゴールデングローブ外国語映画賞を受賞した。


今作は、ハンブルクなどで2000〜2007年、トルコ系をはじめとする外国人が爆弾テロなどで相次ぎ死傷した事件が下敷きになっている。実行犯は「国家社会主義地下運動(Nationalsozialistischer Untergrund: NSU)」。ヒトラーが率いた「国家社会主義ドイツ労働者党(Nationalsozialistische Deutsche Arbeiterpartei)」にも似た名前のネオナチ極右集団だ。だが2011年に真相が判明するまで、「トルコ系の犯罪組織の抗争かトラブル」との見立てで捜査が続き、メディアも追随。その間にも犠牲者は増えていった。

ファティ・アキン監督=仙波理撮影

アキン監督いわく、この事件だけに想を得たわけではないという。「テーマとして最初に考えたのは1992年、私が大学に進んで映画を撮り始めた19歳の頃だ。東西ドイツ統一以来、ネオナチ台頭やトルコ系などの移民への攻撃といった問題が起き、いつかこのテーマで撮りたいと考えた」。そう言ってアキン監督は、「いや、問題は(ヒトラー政権が誕生した)1933年からあり、常に議論になってきた。しかも、最近はトランプの米国、そして日本やトルコでも問題になっている。世界的だ」とつけ加えた。


NSUの連続テロでは、アキン監督の兄の友人も殺された。身近な事件でもあっただけに、アキン監督は憤りをもって振り返る。「発生から10年ほどはメディアも捜査当局も、トルコ系同士の殺害だと言い続け、移民を責め立てる時期が長く続いた。メディアは『トルコ系マフィアの殺し合い』と書きたてたが、『トルコ系マフィア』とは誰なんだ?と本当に不思議だったよ。そんなのはメディアの作り話だった。殺害そのもの以上に、無実の人たちが責められたことが問題で、トルコ系社会は非常に怒っていた」

『女は二度決断する』より © 2017 bombero international GmbH & Co. KG, Macassar Productions, Pathe Production,corazon international GmbH & Co. KG,Warner Bros. Entertainment
GmbH

アキン監督は今作のリサーチのため、「複数の元ネオナチに会いに行き、話をした」と言った。私は思わず「元? 以前ネオナチだったという人?」と聞き返した。ネオナチがネオナチでなくなるなんて、そう簡単ではなさそうだからだ。


そう思っていると、アキン監督はドイツでネオナチ脱退を支援する「EXIT」という団体を挙げた。EXITは元警官や犯罪学者らが立ち上げた組織で、2000年以降、民間の寄付やドイツ政府の資金をもとに、元ネオナチも加わって活動を続けている。「ネオナチはメンバーの離脱を許さない。そこでEXITのような団体が、抜け出る手助けをするんだ」。そう解説するアキン監督がリサーチを経て実感したのは、「何事も変えられる」という点だという。「固定して変わらない、というものは何もない。すべては移りゆく。そこに私は今回気づいた。人には対話が必要で、暴力や力でもって変えることはできない」

『女は二度決断する』より © 2017 bombero international GmbH & Co. KG, Macassar Productions, Pathe Production,corazon international GmbH & Co. KG,Warner Bros. Entertainment
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(次ページへ続く)

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