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TOEICで高得点だと英語が話せるか? 松井博 #2



様々な教育機関や企業で、英語力の実力判定にTOEICの点数を使っています。管理職なら700点以上、海外事業部なら800点以上といった具合に、役職や配属の条件にTOEICの点数を採用しているところも多いようです。


こうした影響もあり、本屋さんに行けば対策本がズラリと並んでいます。今や英語学習の目的はTOEICで高得点を取ることになった、と言ってもいいくらいです。



TOEICの点数が高いと話せるか?

ビジネスで使える英語能力の向上をめざしてTOEICが開発されたのは、1979年のこと。写真は1981年、入社式の翌日にTOEIC試験を受ける電通の新人社員たち

では、TOEICで高得点が取れると実際に英語が話せるようになるのでしょうか?


結論からいうと、TOEICの点数「だけ」が高くても、英語を話せるようにはなりません。


実際、900点を超えていてもほとんど話せない人などいくらでもいます。考えてみれば当たり前の話で、TOEICにはスピーキングテストがありませんから、「TOEICで高得点=話せる」はずがないのです。


僕が経営する語学学校 Brighture English Academyにも、TOEIC高得点の方が続々とやってきますが、どの方もスピーキングで本当に苦労しています。また話せないだけでなく、書くのも遅いうえに間違いだらけの方が大半です。


冠詞や時制はおろか、三人称単数現在形の動詞さえも間違えており、自分でそれを初めて認識して愕然とする人が後を絶ちません。発音に至っては初心者でも高得点者でもほとんど差がありません。


その一方で、TOEICがやっと600点ぐらいでも、かなり話せてしまう人も少なくありません。以前Brightureで受講された方で特に印象に残っている方が3名いますが、そのうち2名はTOEIC500点未満なのにも関わらずそこそこ上手に話し、有名な外資系企業で要職についていました。


もう1名の方は、最終学歴が中学卒業で、その後クラブ通いをして外国人の友達を作って英語を覚えたというちょっと変わった方でしたが、外資系企業などで普段英語を使っている方と大差ないくらい話せました。


3名とも文法はかなり微妙でしたし、語彙も限られていましたが、自分の知っている単語や言い回しをフル活用して、うまく意思疎通を果たしていました。


「使うこと」を常に念頭におく

ではTOEICが高得点なのに喋れない人と、この3名のように低い得点でも話せてしまう人とでは何が違うのでしょうか?


最も端的な違い、それは「通じること」を最優先にしているかどうかです。この3名はとにかく「通じるかどうか?」だけを指針に英語を身につけて来たのに対し、高得点なのに喋れない方というのは「TOEICで高得点を取ること」を最優先課題とし、巷に溢れるTOEIC攻略法をみっちりと研究し、それを忠実にこなして来た方が多いのです。


しかし、TOEICで高得点を取るのと、英語を話せるようになるのは、はっきり言って別のスキルです。TOEICで高得点を取りたければ、TOEICに頻出する単語を最優先で暗記し、過去問題をやり込むのが最短距離です。


一方、英語で話せるようになるのに必要なのは「英語を英語のまま理解し、英語で考え、英語でそのままアウトプットする」のに必要な脳内回路を形成することです。それは、テストで高得点を取るのに最適化された脳内回路とは似て非なるものなのです。


ではTOEIC対策は無駄か?

大学でのTOEIC試験もおなじみの光景になってきた

では、TOEIC対策はまるっきり無駄なのでしょうか?


そんなことはまったくありません。まずTOEICで高得点が取れている方は語彙も豊富ですし、文法もしっかりと押さえています。また何より、英語学習を続ける根性があります。(これ大事です!)


ですから、問題集を離れてネイティブ向けに書かれた書籍などを読み始めると、比較的早い時期からかなり高度な内容のものを読めるようになりますし、一度言葉が出始めると、短期間で政治経済や社会問題などといった難しい話ができるようになります。


一方、これまで感覚を頼りに覚えてきた人は、一度立ち止まって英文法をおさらいし、語彙を増強してTOEFLやTOEIC、あるいは英検などにチャレンジしてみることを強くお勧めします。


僕自身もある程度困らない程度に喋れるようになってから英文法を勉強し、その後、英検やTOEFLにチャレンジしました。すると、それまでは何となく感覚で覚えていたことが頭の中ですっかり整理され、話したり書いたりするときの間違いが大幅に減らせたのです。


工夫のしどころは?

では、すでにTOEICで高得点を取得した人は一体どのように勉強すればいいのでしょうか?テスト対策をみっちりやってきた人というのは、反応速度が遅い人が多いので、まずは反応速度をあげるところに注力しましょう。一番の工夫のしどころは、思考回路から日本語を「抜く」ことです。いくつかの練習方法を紹介します。


何でも読む、聴く

「コマーシャルのこんなフレーズがキャッチーに聞こえるのか!」「なるほど。新聞の見出しはこんなふうに言い切るか」「映画のこんなセリフが心に染み入る」などなど、いたるところに様々な気づきや学びがあります。


ですからアンテナを立ててたくさんの英語を読んだり聞いたりしていると、英語感覚が徐々に脳内に育っていきます。やがて日本語に置き換えることがまどろっこしく感じられ、日本語が思考回路から少しずつ消えていきます。


使えるフレーズを練習する

読んだり聞いたりしている間に「あ、これ使える!」と思ったフレーズに出会ったら、書き出しておいて何度も反復練習して完全に暗記してしまいましょう。なお「何が使える」のか、普段から意識的にアンテナを張っておいてください。先生に与えられたもの、あるいは問題集に載っていたものを覚えればいいや、といういうような受け身な感覚でやっていると、いつまでたっても英語回路が育ちません。


一発で聴きとる練習をする

ニュース番組などを一発で聴きとる練習をします。人間「もう後がない!」と思うと集中力が高まります。ところが「あとでもう一回聞けばいいや」と思うと集中力が下がります。よくスポーツなどでも「練習は本番のように、本番は練習のように」と言いますが、あれと同じことです。


2秒以内に返事をする癖をつける

スカイプ英会話などをやっている人は、2秒以内に先生に返事する練習をしましょう。2秒以内に返事ができた回数を先生に数えてもらい、その数をレッスンごとに徐々に増やせるように努力していきます。日本人はとにかく返事が遅いですから、ぜひ意識的に取り組んでください。


自分の会話を録音して、何ワード話せているか数える

1分間の即興スピーチを録音して、何ワード話せているか数えてみます。最初の頃はあまりにも「あ〜〜う〜〜」などと意味のない音を発していて泣きそうになりますが、一度認識した弱点というのは必ず修正できるものです。ちなみにネイティブは1分間に150〜180ワードくらい話します。徐々にここに近づいていきましょう。


近道なんてありません

3カ月でペラペラになったり、寝ながら聞いていれば上達するといった魔法も存在しません。時間をかけて脳内の英語回路を育てる。必要なことはそれだけです。教材だけではなく、生の文章や映像に日常的にたくさん触れる。たくさん書いてたくさん話し、間違ったところには何度でも修正をかけていく。これ以外に特に学習方法は存在しません。


強いて言えば仲間がいると続けやすいので、同じく英語上達を目指している人とソーシャルメディアなどで知り合いになったり、時々実際にネイティブと話したりして刺激を受けるようにしてください。


あとは楽しみながら継続です。ちなみに僕はこのお正月、だらだらと映画を見たりネット記事を読んだりして過ごしていますが、少なくとも1日2〜3時間は英語を読み、2時間は視聴しています。別に勉強しているという意識もありません。


こんなふうに1年も過ごせば、誰だって英語感覚が成長します。

なかなかできるようにならない人というのは、とにかく圧倒的に量が足りないことが多いのです。生活の中に英語を取り込み、楽しみながらたくさんの英語にぜひ触れて続けてください。



【バックナンバーはこちら】

英語ってどうすれば上達するのですか? 松井博 #1





松井 博

米国にて大学卒業後、沖電気工業、アップルジャパンを経て、米国アップル本社に移籍。iPodやマッキントッシュなどの品質保証部のシニアマネジャーとして7年間勤務。2009年に同社退職。カリフォルニア州にて保育園を開業。15年フィリピン・セブ島にて Brighture English Academy を創設。著書に『僕がアップルで学んだこと』『企業が「帝国化」する』など。



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