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IT時代に教育はどうあるべきなのか?! (2) 松井博 #08


前回はアメリカと日本の教育システムを比較しつつ、これから求められる教育は、「自分自身で動機付けし、目標を設定し、仮説を立て、トライ&エラーを繰り返しながら達成できる人材」を養うことであるとしました。



では一体、どのようにすればこのような教育が可能になるのでしょうか?現在までのアメリカや日本の教育システムの中に、そのヒントになるようなものはあるのでしょうか?

何をめざし、誰が指導するのか。学校の部活動の場では、今も議論が続いている(写真と本文は関係ありません)



思考能力を奪う部活動

結論から言うと日本のこれまでの教育制度にはその反面教師となるような事例は山ほどあっても、ヒントになるような事例はあまりないように感じています。そしてこの反面教師の最たる例が部活動です。



僕は水泳部でしたが、無駄な練習を実によくする部活でした。冬場は走り込みや筋トレに明け暮れ、夏は夏休みを全て潰して泳ぎこみです。僕らは走り込みが効いてか陸上部ばりに足が速かったのですが、足が速くても泳ぐのには役に立ちません。



現に大会で活躍する子は小学生の頃からスイミングクラブの選手コースに属し、専門家から指導されてきた子ばかりでした。一方学校の水泳部の部員の大半は、泳げる期間が夏に限られている上、素人の顧問の先生や先輩がなんの経験も知識もないままに漫然と指導しているだけですから、これで速くなったらむしろ驚きです。



ですが泳がされている方はわずか13歳の中学1年生ですから、まさか先輩や顧問の先生たちが一生懸命にやっていることが壮大な無駄だなんて疑いもしません。それに上級生が威張り散らしているのが怖くもあり、言われた通りに練習する他、選択肢はありません。2年生になると下級生が入ってきて今度は自分たちが先輩ヅラをして後輩の指導を始めるのです。



そしてその指導内容と言えば、それまで自分たちが課された練習をそっくりそのまま下級生に押し付けるだけです。そんな練習をいくらしても効果などあるはずもなく、大きな大会で表彰台に上がるのは、結局小さな頃からスイミングクラブに通い、理にかなった練習を何年も積んできたほんの数名の部員だけでした。



もしも異論を唱えたら?

もしも「練習が理にかなっていない」などと異論を唱えようものなら、「みんなの和を乱す奴」などと浮いてしまうのが関の山です。あるいは目をつけられて先輩に殴られるかもしれません。現にそうされた同級生もいました。こうして効果のない練習が代々繰り返されていくのです。また、「部活を辞めたい」なんて言い出そうものならあの手この手で引き止められ、それでも振り切って辞めれば「根性のない奴」とディスられるという、ブラック企業も真っ青の体質でした。



身も蓋もないことをを言ってしまえば、一切の思考を停止させ、ただただ上級生の理不尽な命令に絶対服従する奴隷根性を身に付けた3年間と言っても良いでしょう。またこれは僕が属していた30年以上前の水泳部固有の問題ではなく、おそらく今でも綿々と続いている日本の部活動の形ではないでしょうか? 



強豪チームの指導者はPDCAサイクルを実行している

では日本全国の全ての部活動がこんな具合かというと、もちろんそんなはずはありません。実際のところ、強豪チームと弱小チームとでは何かが少しずつ違うものです。顔つき、準備や後片付けの早さ、威張っているだけの先輩の数……。こうした「違い」を何が生み出しているのか考えていくと、結局は指導者の質に行きつくように思うのです。

大人が決めたことをさせるのではなく、生徒が自主的に考えることをめざす部活動も増えてきた=2016年、ハーフタイムに選手同士でミーティングする長崎・鳴北中サッカー部



強いチームの指導者は、例えそんな言葉を知らなくても、PDCAサイクルを着実に実行しています。試合に負けてしまっても「根性が足りない!」なんて怒鳴りつけて誤魔化さず、自分たちに何が欠けていたのか冷静に話し合って分析し、次の試合に生かしていきます。そこには研究熱心で創意工夫を欠かさない、人生の手本になるような指導者の姿が確実にあります。



部員たちもそんな先生の姿を見て同じようなマインドセットを身につけていくのです。そして、こうした「強いチーム」で揉まれて来た生徒たちは、社会に出てからも活躍していきます。例え部活では補欠で終わったとしても、そこから生きて行くのに大切な姿勢を学んでいくからです。



また、根性論にまみれ、生徒を怒鳴りつけるだけの先生にしても、あながち責めることもできません。決められた授業を教え、父兄の対応に追われるだけだって大変なのに、その上私生活を全て投げ打って部活の顧問を務めざるを得ない先生たちの立場もまた、改めていく必要があります。先生の熱意と根性だけではどうにもならないものがたくさんあるのに、今の学校システムは、なんの解決策も先生たちにも提示していないからです。



見切りをつけられた公教育

さらに根深い問題は、こうした問題点があることがわかっていながら、それに対してなんの解決策を講じることなく何十年も流れていく「変われなさ」の病でしょう。これは教育システムのみならず、日本全体を覆う重度の病と言ってもよいかもしれません。少子高齢化も財政赤字もイジメも30年も前から提起されているのに、なんの対抗策も講じられないまま、ただただ時間だけが過ぎていっています。



学校教育が変わるのを待っていられないと、多くの親御さんが見切りをつけて公立ではなく私学に子供を通わせたり、塾に行かせたりしているのが教育の「今ここ」なわけですが、時代の変化があまりにも早すぎるため、一体どのようなスキルを身につければ良いのか訳がわかりません。「大学なんか行っても意味ない!」と断言する有名人がいる一方、今や6割以上もの人が大学を卒業する時代になっており、大学を卒業しておかないと就職もままならないという現実もあります。



どうしても身に付けるべきスキルはなんだろう?

学校というハコは、果たして必要なのでしょうか?


僕自身は必要だし、変えようがあるだろうと考えています。ただ、そうは言っても当分は何も変わりそうもありませんから、現行の教育制度と折り合いをつけつつ、学校では身につけられない能力を自分で補っていく必要があります。僕が考える、身につけておくべき能力は次のようなものです。



(次ページへ続く)

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