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IT時代に教育はどうあるべきなのか?! (1) 松井博 #07

PDCAサイクルはPlan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Adjust(改善)を繰り返して改善を図っていく、ごく一般的な品質改善の手法です。


学習への応用はこんな感じになります。まず学習したい内容がなんであれ、テキトーな学習理論を考えて実行します。例えば語学を習得するのであれば、最初の学習理論は「単語をどんどん覚える」かもしれません 。そして単語を覚えたら、次はそれが使えるかどうかを必ず検証します。



すると、「単語を知ってても並べ方がわからない」「相手の言っていることが聞き取れない」など、様々なフィードバックを得ることができます。そしたら最後に学習理論に修正をかけます。それは「単語を個別に暗記するのではなく、文章で暗記してみよう」とか「ネイティブの発音を録音してもらってそれを聴いてみよう」となるかもしれません。



また、他人からのフィードバックはPDCAサイクルに欠かせません。自分だけしか読まない日記を何年書き続けても、人に伝わる文章を書けるようにはなりませんが、ブログを書いて他人の目に晒すことで、PVやコメントといったカタチで他人からのフィードバックを容易に得ることができます。 演奏や歌、あるいはスポーツなども、ユーチューブなどに公開することで沢山のフィードバックを得ることが可能です。こうした他人からの視点が、自分だけでは気がつけない弱点や独りよがりを是正してくれるのです。

米国の大学ではいま、学生がノートパソコンを使い、無料公開されている教材を使って自ら学ぶ姿も目立つ=2012年、米マサチューセッツ工科大


結局、学習というのはこれの繰り返しです。必要なことは、先生に言われたことを我慢強く繰り返すことではありません。自分なりに理論を構築し、それを検証し、改善を重ねていけるスキルなのです。ところが学校でこれをやろうにも、そもそもテストくらいしか検証の機会がありません。だから、どうしてもテスト自体が目的化します。



根っこに必要なのは「やる気」


ここで、さらに根本的な問題を指摘しておきましょう。それは、多くの人がそもそも「やりたいこと」を思いつけないことです。私は保育園を経営していますが、子供というのは「やりたいこと」で溢れています。ところが大学生になる頃には、自分が何をやりたいのか、さっぱりわからなくなってしまうのです。



これも結局、先生や親に「やるべきこと」をずっと与え続けられ、ちょっとでも「やりたいこと」を口にしようものなら、「失敗したらどうする?」「そんなことでは生活できない」と脅され続ける結果ではないかと思うのです。


自分でやりたいことを見つけられなかったり、自分なりにPDCAサイクルを構築できなかったりすることは、今の時代にはあまりにも致命傷になってしまうのです。未来のことなんて誰もわかりはしません。しかしながら、わからないなりにトライできる感覚や度胸、失敗を繰り返しながら学んでいけるセンスこそが最も大切なものなのです。


今後、教育者らがすべきことは、生徒の学びたいという動機を大事にしつつ、彼ら自身が「学び方」そのものを学ぶことを、根気よく手助けすることだと思うのです。 


ではどうすれば、教育はそのように変われるのでしょうか? そもそも「学校」というハコは必要なのでしょうか? 次回は、現在のITシステムの発達なども踏まえ、教育がどのような方向に変わるべきなのか、具体的に言及していきたいと思います。





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松井 博

米国にて大学卒業後、沖電気工業、アップルジャパンを経て、米国アップル本社に移籍。iPodやマッキントッシュなどの品質保証部のシニアマネジャーとして7年間勤務。2009年に同社退職。カリフォルニア州にて保育園を開業。15年フィリピン・セブ島にて Brighture English Academy を創設。著書に『僕がアップルで学んだこと』『企業が「帝国化」する』など。



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