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新刊が批判「強欲企業を育てるハーバード」

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ハーバード・ビジネス・スクールの卒業式に臨む学生

Book Pins Corporate Greed on a Lust Bred at Harvard

2017410日付 ニューヨーク・タイムズ紙

 

この記事はハーバード・ビジネス・スクール(HBS)について書かれた新刊『金のパスポート』を紹介したものだ。記事を読んで、就職活動で出会ったHBSの学生を思い出した。鼻持ちならないほど自信満々だったのだ!

それもむべなるかな。ハーバードMBA(経営学修士)の肩書は、Good Housekeeping stamp of approval(月刊のグッド・ハウスキーピング誌が設立した家庭用品の品質保証機関の認定印)のようなもの。全米の有力企業のCEOの出身校を見ても、HBSdisproportionate(不均衡な)ほど多いと記事の筆者は指摘する。私にもMBAを取得した知り合いはたくさんいるが、大手企業のCEOまで上り詰めたのはやはりHBS出身者だ。

この書籍は、そんなHBSindictment(告発)するかのごとく批判している。今回の見出しはそのエッセンスをうたったもの。corporate America(米国のビジネス界)のお金に対するgreed(欲深さ)やlust(渇望)は、ハーバードがbreed(育てている)という。書籍内でcite(引用)されている調査によると、商品やサービスを通じて社会に貢献することが企業の使命だと考えていた学生が、shareholder value(株主価値)の最大化こそが企業の存在理由だと卒業までに信じるようになる。企業から顧問料などの名目で報酬を得ている教授陣によって、企業がespouse(信奉する)価値観が教え込まれるからだという。

書籍の筆者が問題視するのは、卒業生が自分たちの地位にintoxicated with(酔いしれて)、経済格差や地球環境の問題を引き起こす“強欲資本主義”に何の疑問も持たない態度だ。

HBSは目立つだけに何かとpunching bag(たたかれ役)にされやすい。書評の筆者は、76000人以上いる卒業生すべてに道徳的な問題があるような書きぶりはやり過ぎではないかと指摘している。

とはいえ、記事の末尾で紹介されている書籍筆者の提案はおもしろいかもしれない。ハーバード十八番のcase study method(事例研究方式)で、 HBSをとりあげたらどうかというのである。