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世界の食を訪ねて

季節のめぐりを味わう人びと 日本人にみる、人類の本能

[第13回]マイケル・ブースの世界を食べる



photo: Semba Satoru



季節は春、花は桜。道明寺に舌鼓。

四季を五感で受け止める日本人の感覚に英国人筆者は嫉妬する─。



妻と私は毎朝、子どもたちを学校に送り出すと、ラブラドール犬のルナを連れて散歩に出かける。


私たちは海に近い郊外に住んでいる。散歩はいつも、森を抜け、野原を横切り、芝や土、砂などの自然を踏みしめて歩く5~6キロの行程になる。ルナのことを思えば、いかなる天気でも休むわけにはいかない。雨を嫌うルナは、一滴でも水が落ちてきたら、文字通り家から引きずり出されるはめになるのだが、そうでもして運動を日課にしなければ、みんなそろってミシュランのキャラクターかというくらいふくらみかねないもので。


毎日、同じ道を歩いて1年もすると、ゆるやかな自然のめぐりに気づく。いつもは月日が過ぎるのはなんて早いものかと思っている私だが、日々、自然のただ中に1時間ばかり浸る生活をしていると、時間が経つ感覚を見直さざるをえない。四季のうつろいを嗅ぎ、味わい、感じる─。窓から見える天気の変化で、ただなんとなく気づくものではないのだ。


食べ物にも、もっと季節を感じられたなら。つい最近、英国が輸入するブロッコリーやレタス、ズッキーニなどの野菜が、スペインの大雪で供給ストップとなり、大騒動となった。人びとが必死で買い求めるあまり、やむなく数量制限を設けたスーパーもあったほどだ。


ならば、冬の英国でも安定して育つ芽キャベツなりケールなりを食べればいいものを。私には不思議でならない。どうして食べごろでもない野菜を、わざわざはるか彼方から取り寄せてまで求めるのか? いったい、どこの誰が、好き好んでケニアからプラスチックのような豆を、イスラエルからラズベリーを、おいしくもないのに値段はやたらと跳ね上がる12月や1月に調達しているのか? これだからスーパーの青果売り場はいついってもまったく同じ、私には少し気が滅入る光景だ。



(次ページへ続く)

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