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苦手は腐ったサメ料理とマーズバー。好きなものは湯葉……

マイケル・ブースの世界を食べる 更新日: 公開日:

『食卓の人類学』めざすイギリス生まれのジャーナリスト

――まずは自己紹介を。

GLOBE読者の皆さん、初めまして。私はイギリス生まれの食の専門ライターで、、アニメのキャラクターでもあります! おそらく、皆さんは「あの日本食フリークでしょ」と思っていらっしゃるかもしれませんが、私の日々の仕事は世界中の食について書くこと。新連載では世界の食まわりで起きていることの中から、特に日本の皆さんが興味ありそうなテーマを選りすぐってお伝えします。

――なぜ食について書こうと思ったのですか?食の何がそんなに魅力なんですか?

まず何よりも、私自身がイヤになるぐらい強欲な人間だということですかね。つまりその、好きなモノを見つけたら、骨の髄までしゃぶりつくし、「ああ、もうしばらくは見たくもないな」と思うぐらいまで味わいつくす性分なんです。食について書くことは、この強欲さを正当化する手段というか。食をとりまく最新ニュース、食文化が映し出す社会や人々について発見したことを、読者の皆さんに伝えているのですから。

それと、基本的に人が好きなんです。何を食べているかは、その人を理解するためのもっとも直接的、かつ最短ルートだと思う。人々の歴史、背後の文化、彼らが希求するもの、恐れを抱いているものまで、食を通じて理解できるんですよ。私はこれを「食卓の人類学」と呼んでいます。(なんて、いま思いついたんですが、悪くないネーミングでしょ?)

――これまでに食べた世界の食の中で、何がいちばんお気に入りでしたか? また、忘れられないもの、二度と食べたくないものは?

数年パリに住み、コルドン・ブルーという料理学校で学んだ後、ミシュランで星をとったいくつかのレストランで働きました。なので、正当派フランス料理には目がないですね。忘れられない食事は、8歳か9歳のころ、両親と訪れた中部フランスの町で食べたフルコース。ふだんはお行儀の悪い僕でしたが、その夜はちゃんと5皿のコースを食べて、そのひと口、ひと口の味を今でも鮮明に覚えています。

二度と食べたくないものは……。魚の発酵食品は苦手かな。スウェーデンの「シュールストレミング」(塩漬けニシンの缶詰め。缶の中で発酵が進み、空けた途端にすごい臭気がすることから「世界一臭い食べ物」とも言われる)。それと、アイスランドの腐ったサメ料理は、長いこと温かい場所に放っておかれたブルーチーズの匂いがしましたね。それからマーズバー(ヌガー入りのチョコレートバー。米国や英国の子どもたちに人気の菓子)はもう食べられません。食べると歯が痛くなります。

――食に対する鋭い視点で知られるブースさんに、日本食の感想を聞いてみたいです。

明らかにお気に入りの料理です。美しく、まじりけがなく、季節感があり、その風変わりさも含めて、驚くほど多様性に富んでいる。なかでも、もっとも好きなものは湯葉です。ダメなのは、納豆と山芋ですね…うう(とため息)。

――あなたの家族もまた、食に対して一家言あるのですか? 食卓で議論が絶えないとか……。

次男エミルの食のセンスはかなりいい線いってます。ひと皿食べて、何がその料理の問題かを的確に言い当てます。塩が多いとか、ニンニクを使いすぎだとかね。彼は好き嫌いはありませんが、批評眼があり、要求も高い。私は毎晩、家族の夕食をつくっていますが、本当のところ、エミルのためにつくっているといっても過言ではないです。これって結構、疲れます。ちなみに長男のアスガーは、それが何かを問うこともなく、なんでも食べるから、本当に助かります!2人とも寿司が大好き。だから家族で日本に来ると高くついてかなわないんですよ(談)。

英国・サセックス生まれ。食と旅行が専門のジャーナリスト。著書に『英国一家、日本を食べる』(書籍、コミックとも亜紀書房)、『英国一家、フランスを食べる』(飛鳥新社)、『Eat,Pray,Eat』(邦訳刊行予定)など。『日本を食べる~』をもとにしたアニメシリーズが昨年、NHKで放送された。妻リスン、息子アスガーとエミルと共にデンマーク在住。庭でユズの木を育てている。