RSS

いまも日本で働きたいですか?

日系企業も労働者不足、期待はカンボジア人材

タイの若者は工場よりサービス業

経済発展や少子化で、労働者を外国に送り出していた国が、受け入れる側に変わる。東南アジアではタイがそうだ。現地に進出した日系企業も、カンボジア人など外国人労働者に支えられている。(GLOBE記者 浅倉拓也)

プノンペンの中心部には外国語を学ぶ塾が軒を連ねる通りがある

1980年代後半から日系企業が続々と進出したタイ。日本貿易振興機構(ジェトロ)の2017年の調査では、その数は5444社に上った。2年前の調査に比べても大きく増えている。だが、この10年ほどは、特に製造業で、労働者の確保が重要な課題になっている。

タイでは少子高齢化が進み、失業率は1%を切る状態が続く。若いタイ人はサービス業を好み、工場などでの仕事は人気がない。さらに、労働組合の強さも雇用側にとっては悩みの種だ。

そんなタイの製造業を支えているのは、隣国カンボジアからの出稼ぎ労働者だ。ただ、不法滞在という弱みにつけこまれた人権侵害や劣悪な労働環境、ブローカーによる搾取などが、問題になってきた。


人材派遣と製造請負の日本マニュファクチャリングサービス(nms)は、14年にタイに現地法人を設立し、タイの日系企業に、カンボジアから工場労働者らを派遣している。「良い循環を生み出して、良い企業に人材が流れるようにしないといけない」。nmsホールディングス社長の小野文明は言う。

カンボジア人労働者の多くは農村出身で十分な教育を受けていないこともあるため、派遣前に1週間、基礎的な教育をする。タイ人労働者と同額の賃金を払い、働きをきちんと評価して昇給させる。労働者の定着率を上げることで、生産性を向上させるのがねらいだ。「欧米などの企業に比べ、日系の問題は評価制度があいまいで給料が上がらないこと。『(従業員は)家族なんだから、みんなでがんばろう』というのは海外では通用しない」

nmsホールディングスの小野文明社長

さらに小野は、カンボジアの関係機関と協力し、日系企業をカンボジアに呼びこむ計画も進めている。「カンボジアが工業化していけば、いまタイの日系企業で働いている人たちが即戦力になる」。

カンボジアは、ポル・ポト政権による大虐殺の歴史があり、人口は約1500万人だが国民の平均年齢は25歳程度と極端に若い。海外で働くことを希望する若者は多い。


日本に外国人技能実習生として働きに来るカンボジア人も増えつつある。法務省の統計によると、技能実習生の資格で日本に滞在するカンボジア人は17年6月現在、約5700人。3年で7倍ほどになった。

nmsグループと連携するカンボジアの人材派遣最大手「ウンリティーグループ」でも、日本に実習生を派遣している。職種では農業が最も多く、建設や縫製、食品加工などが続くという。社長のウン・セアンリティーは「日本の実習制度は、スキルを学べるのでカンボジアの経済発展にもつながる」と期待する。

プノンペンの本社ビルでは、制服のポロシャツを着た礼儀正しい若者たちが、生活や仕事の場面で使う日本語会話を、一生懸命に勉強していた。日本に派遣する労働者には、規律や礼儀を徹底的にたたき込むという教育スタイルは、アジアのどこへ行っても定着しているようだ。

技能実習生として日本で働くため日本語を勉強するカンボジア人の若者

ただ、日本では近年、実習先の職場への不満などから失踪する実習生が増えているのが問題になっているが、カンボジア人にも失踪者は少なくない。実習生の受け入れ団体で通訳をしていたあるカンボジア人男性は、職場での暴力などの相談も受けたという。「失踪して不法就労した方が、自由で稼ぎが良いようだ。罪の意識もあまりない」と男性は話す。「カンボジア人はのんびりした人が多いので、日本で『早くやれ』と言い続けられても、どうして良いか分からない。日本のやり方を押しつけるばかりでは難しいのではないか」

労働力を求めて、新たな国を開拓するばかりでなく、そこでいかに人材を育て、良い循環をつくるかが、ますます重要になっている。(敬称略)

この記事をすすめる 編集部へのご意見ご感想

  
ソーシャルブックマーク
このエントリーをはてなブックマークに追加
Facabookでのコメント

朝日新聞ご購読のお申し込みはこちら

Information | 履歴・総合ガイド・購読のお申込み

Editor's Note | 編集長から

PC版表示 | スマホ版表示