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国境を越える電力

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中国、電力網の世界戦略 その深謀、事情

識者に聞く




電力網の連結を目指す中国国家電網公司前会長の劉振亜(右から2人目)、ソフトバンクグループ社長の孫正義(同3人目)ら=東京・丸の内、村山祐介撮影

世界に先駆けて超高圧(UHV)送電網の商業運転に成功し、いまや世界全体の電力網の連結を呼びかける中国。なぜ電力網構築の主導権を握ろうとするのか。その狙いはなにか。中国の電力事情に詳しい識者に聞いた。(村山祐介)


長岡技術科学大学大学院教授(エネルギー環境経済論) 李志東(55)


中国は経済発展に欠かせない電力を化石燃料に頼ったことで、エネルギーの海外依存度が上昇し、深刻な大気汚染に見舞われ、大量の二酸化炭素を排出しています。石炭火力発電所を減らさざるをえなくなり、すでに北京市内には一つもありません。代替電源として風力、水力などの再生可能エネルギーが非常に重要になりましたが、適地は電力需要の多い沿海部からは遠く離れた内陸部です。そこで送電ロスの少ない超高圧(UHV)送電が必要になったわけです。整備すればノウハウが蓄積し、コストもどんどん下がる。海外市場も念頭に置きながら、広大な国内でUHVの整備を急速に進めました。


習近平政権は目玉の「シルクロード経済圏構想」(一帯一路)のなかで、国際的な送電網整備への協力を打ち出しています。中国国家電網公司はロシアやモンゴルなどと国際連系しているほか、ブラジルやポルトガル、豪州などでは送電網の運営に参加しています。単にやりたいと言っているだけではなく、政府レベルで協力し合う段階まで来ています。


地球温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」の発効も大きな追い風です。中国が技術、人材、資金とあらゆる面で協力すると手を挙げているわけです。実績があって、技術はほぼ世界最高水準で、コストも割安です。中国による各国の送電網と国際連系線の支援はかなり成功するとみています。


●富士通総研主席研究員(中国産業政策) 金堅敏(55)


中国の内陸部は自然エネルギーが豊富で土地も安いのですが、電力需要は沿海部にあります。そこをつなぐ超高圧(UHV)の送電技術を商業化できれば海外に持っていける、というのが中国のアプローチでした。スイスの重電大手ABBなどから技術を吸収し、製造やメンテナンスなど様々な技術を蓄積して、同等に戦えるところまで来ました。特殊な技術ではありませんが、災害や風雪への対応など、システムが安全に運用されることが重要です。まさに新幹線と同じです。


土地が国有で整備しやすいこともあり、UHVは着工中を含めてすでに約20本に達し、国内での整備は一段落します。次は海外進出で、世界の国際連系線のネットワーク化を提案しました。中国が掲げる「一帯一路」構想にはもちろん電力も入りますし、アジアインフラ投資銀行(AIIB)とも重なる動きです。


日本は安全保障のことばかり考えていますが、電力網連結が協力を促進する面もありますし、東日本大震災のような災害時の電力供給のリスクヘッジにもなります。エネルギー分野における中国の発言権が強まるなか、日本は「中国がやることは嫌だ」と言うだけでは、発言の機会もなくなりかねません。安全保障面のリスクヘッジも含めて、日本は北東アジアの電力連結構想を自ら提起してリーダシップを発揮するべきだと考えます。


●日本エネルギー経済研究所研究主幹(中国電力事情) 井上洋文(60)


中国では2005年以降、経済発展に伴って各地で発電所の建設が進み、西・南部の電源地帯から沿海部の消費地へ電力を運ぶ、いわゆる「西電東送」などで送電網も整備されました。石炭火力に加え再生エネの大規模開発も相次ぎ、毎年、東京電力の全発電設備の約1.4倍にあたる年平均9000万kWもの発電設備の増加が10年間も続きました。


14年ごろから中国経済の減速が指摘されるようになり、15年の電力需要の伸びはわずか0.5%にまで低下しました。風力、太陽光という再生エネの開発も近年急拡大しており、供給過剰な状態になりました。発電所の大量建設に送電線の建設が追い付かず、再生エネの15%が送電網に接続できない、「棄風」「棄光」と呼ばれる状態も発生しています。中国政府は石炭火力の開発抑制など発電設備の過剰状態の解消を進めています。


中国の電力企業は、政府が進める「一帯一路」構想に合わせた海外展開を進めようとしています。国内で新規の発電所建設が先細るなか、雇用の確保も狙った海外展開を進めようとするものです。中国国家電網公司はブラジルや欧州など世界各国で送電会社の買収を進めていますが、原発に続いて超高圧(UHV)技術を輸出する布石としたり、中国電力業界の海外進出を後押ししたりする期待があると見られています。



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