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「うまく話す方法がわからない」がダントツ

Re:search 歩く・考える 更新日: 公開日:



ツイッターの投票機能は、どんな方がどの回答に投票したか、募集した側にもわからない。また、私(藤)のアカウント @erika_asahi から投票を募ったので、回答者がフォロワー中心になっている可能性も高く、統計学的手法を用いた世論調査などとは数字の性質が異なる。一方で、日本語で呼びかけていることもあり、ほとんどは日本語を読み書きする方の回答と思われる。

まず、「『人前で話す』、みなさんはいかがですか」と尋ね、三択で投票を呼びかけるツイートをしてみた。回答していただいた381人中、「苦手!」が62%に上った。でも「好き!」も22%いたのは個人的には驚きだ。「どちらでもない」の16%を合わせると、苦にならない人も結構いるようだ。

スピーチの「本場」米国でさえ、人前で話すのが死ぬより怖いという人が約4割に上るという調査がある。「死ぬより怖い」って恐怖心としてはかなりのものだ。ましてや「以心伝心」の日本語教育を受けた人に尋ねれば、圧倒的多数が「苦手」と答えると予想していたのだが……。

次に、「人前で話すのが苦手な方、理由は?」と尋ねるツイートをした。回答の選択肢は四つ。投票していただいた311人中、53%が「うまく話す方法がわからない」を選んだ。米国などと違って、人前で話すための授業が学校教育に取り込まれていない日本。この選択肢に回答が多いのはよくわかる。

「出る杭は打たれる」と言われがちな日本。だが、「失敗が怖い」「意見を言って変に思われたくない」を選ぶ人は、それぞれ18%にとどまった。日頃から、ツイッターで意見を書くのに慣れている人たちだからだろうか。

ただ、私のツイッターアカウントに個別に寄せられた意見をみると、「方法がわからない」と感じる背景には、失敗を恐れた不安がにじむものも目立った。

「あがり症の為人前で話すのが、苦手です。良い方法を教えてください」「多人数を前にすると、言葉がうわすべりして、伝わらないのではという不安があります」

そんな中、苦手を克服したという経験を寄せてきた方も。「私もあがり症なもので、TPOに応じて自分を演じます。自己暗示のようなものですね! 大丈夫な私、みたいな私を演じることでコミュニケーションを取っているんです。最初は、なかなか出来ませんでしたが、仕事は演劇だ!と思い込むようにしたら徐々に出来るようになりました。誰だって必ず何かしらの役を演じている訳ですから」

確かに、日米ともスピーチトレーナーやスピーチライターには演劇出身の人が目立つ。米国でスピーチ術を広めた先駆者デール・カーネギーは著書『話し方入門』で、「勇気ある人を演じるのです」と「演技」を呼びかけていた。

主に英語環境で育ち、日本語も堪能な米カリフォルニア大ロサンゼルス校の元講師の男性の友人がツイッターでこんなコメントを寄せてきた。「何百回も講義をしたことのある私でもいまだに緊張します」。そうなんだ! そのうえで、「唯一自分の力で変えられるのは話す内容。内容に専念して、素晴らしいものに仕上げれば、自信もつき、緊張もなくなります」とアドバイスをくれた。

もうひとつの選択肢、「目上や異性がいる前だと話しづらい」は11%だった。

「異性」の意味するところは、回答した方が男性か女性か、あるいは性的少数者(LGBT)の方かどうかによって変わるだろう。ただ、この設問を置いたのは、紙面に登場いただいた劇作家の平田オリザさん(53)の指摘が頭にあったからだ。

オリザさんいわく、「日本語は女性や年下が意見を言いにくい言語構造ですよね」。例えば、「コピーとって」を男性同士で言っても違和感がないのに、女性が男性に言うと「きつい」と思う人もいるのが現実だ。

私は紙面で「スピーチをまず英語で学んだのも、言い方を気にせずに済んで気が楽だと感じたためでもある」と書いたが、これって日本で暮らす者としては深刻なことかもしれない。「ジェンダーフリーでいいじゃない」と言う人もいるだろうが、「女性らしい」と思われる言葉づかいでないと不快に思う人が聴き手のどこにいるのかわからない場では、やはり気をつかわざるを得ない。

とはいえ、それを打破する道を、この記事を書いた私ももっと探っていくしかないだろう。記事で紹介したオリザさんのワークショップに、機会あれば私も参加してみたいと思っている。

みなさん、投票にご協力いただき、ありがとうございました。