RSS

壁がつくる世界

[Part2]壁で問題は解決しない/アレクサンドラ・ノヴォスロフ(米国際平和研究所上級客員研究員)


世界9カ所の壁を訪ね、『世界を分断する「壁」』を出版した米国際平和研究所上級客員研究員のアレクサンドラ・ノヴォスロフ(48)に、壁がもたらすものについて聞いた。

 

壁は一方的につくられる建造物で、歴史上、常に防衛機能を持ってきました。

 

第2次世界大戦以前は、主に人々が暮らす町や城を防御するためでした。大戦後は、ベルリンの壁のように国を閉ざして資本主義と社会主義を隔てたり、朝鮮半島など停戦、休戦ライン上に建てられたりしました。一方から他方へのコミュニケーションを完全に遮断する目的です。

 

9・11米同時多発テロ以降は、テロや貧困、移民といったグローバルな脅威に対処する役割が加わりました。米国とメキシコ、インドとバングラデシュ、パレスチナの分離壁などがその例です。

 

その結果、国境を越えて簡単に連絡が取れたり、移動したりできるグローバル化した世界にありながら、壁がつくられていくという逆説的な状況が生まれています。民族が多様化することで、国や暮らしが変わってしまうという不安が生まれました。国境を開いていくと自分たちの独自性が失われてしまうと考える人たちは、目に見える堅牢な建設物である「壁」で国境に再び印をつけて、自分たちの伝統に回帰したいと考えました。

 

政治家は移民などの問題の複雑さを説明したがりません。国民が理解できないと思っているからです。そして、最も簡単な答えが壁を建てることです。安全になった感覚をもたらし、政府が問題に取り組んでいる印象も持たせられます。

 

ただ、成功した壁は一つもありません。移民は回り道したり、はしごを使って越えたりするわけです。多少は人数を減らせても、巨額の建設費や管理費には見合いません。

 

しわ寄せを受けるのは、移民と壁の近くで暮らす人々です。行き来が難しくなり、家族を分断し、あらゆる問題を生み出します。

 

壁で問題は解決しないので、人々の怒りがますます増幅する悪循環が生まれます。感情的に怒れば怒るほど、真の問題解決は遠のいていくのです。



(聞き手・村山祐介)


(「壁の世界の向こう側」に続く)



この記事をすすめる 編集部へのご意見ご感想

  
ソーシャルブックマーク
このエントリーをはてなブックマークに追加
Facabookでのコメント

朝日新聞ご購読のお申し込みはこちら

Information | 履歴・総合ガイド・購読のお申込み

Editor's Note | 編集長から

PC版表示 | スマホ版表示