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薬とカネ

[Part2]日本の公的医療保険の課題




薬価の決め方で英国と日本の大きな違いは、前者では製薬会社が最初に価格設定を行うのに対し、後者では、終始政府が主導することだ。


東京大薬学部特任准教授の五十嵐中によれば、日本でオプジーボの価格が跳ね上がったのは、政府の当初設定した薬価が、患者数の少ない悪性黒色腫のみへの使用を想定していたことなども大きい。承認後に患者数の多い肺がんに適用拡大され、販売量が大幅増。「製薬会社がもうけすぎ」との批判で、急きょ価格を半分に引き下げざるを得なくなった。


英国では、近年NICEで審査された新薬の2割近くが「価格に見合った効果がない」として公的医療での使用を認められていない。一方、日本では承認されたすべての新薬の使用を認めている。


日本で薬代の自己負担率は原則3割だが、自己負担に上限を設ける「高額療養費制度」があるため、薬が高額化するほど公費の負担は跳ね上がる。標準的な収入で体重65キロの人がオプジーボを使用した場合、薬代の総額は年間1897万円に達するが、自己負担額はおよそ68万円。残り1829万円は公費だ。


公費の財源は国民一人ひとりが支払う保険料と税金だ。2014年度の国民医療費は40.8兆円だが、自己負担で賄われるのはその約1割。国民1人当たりの税・保険料負担は28万円で、うち2割ほどを薬剤費が占める。今後も、高齢化と、新薬をはじめ医療技術の高度化で、国民医療費は急増し、25年には54兆円に達するとの推計もある。


政府は薬剤費の抑制のため、来年度から英国と同様にQALYなどの概念を導入して費用対効果の悪い薬は値下げする方針。準備の一環として、1QALYあたりいくらまでなら支払ってもよいか、という世論調査を実施する予定だ。


(文中敬称略)

「『途上国の薬局』インドはいま」に続く)




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