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太平洋波高し

[Part2]声上げるマーシャル諸島の詩人 「私たちは使い捨てか」



声あげる詩人

キャシー・ジェトニル・キジナーさん(撮影:市川美亜子)

「私たちはディスポーザブル(使い捨て)なのでしょうか」。大国に翻弄されてきた歴史から抜け出し、自らの言葉で世界を動かそうとする詩人が、マーシャル諸島にいる。キャシー・ジェトニル・キジナー(29)。サンゴ礁でできた祖国で、米国は核実験とミサイル実験を繰り返してきた。今度は、地球温暖化で平均気温がわずかに上がれば、国民は移住の危機にさらされるという。


2010年のある朝、洪水で自宅の庭まで水があふれていた。危機を伝えようと詩をユーチューブにアップすると、SNSを通じて世界中で再生された。14年の国連気候変動サミットで詩を朗読したのをきっかけに、気候変動に抗う太平洋島国の象徴的な存在になった。


「プラチナ製の名札の陰に隠れた人たちが、たとえ私たちなんか存在しないふりをしても、私たちはみんなで戦う」。6月、日本の団体「アース・カンパニー」の招きで来日し、被爆地・広島などを訪れて詩を朗読した。小柄な身体からあふれ出す言葉で、大国や、動こうとしない政治家や官僚への怒りを表現する。


核被害と気候変動。キャシーは二つの問題を「ディスポーザブル(使い捨て)」という言葉を使って表現する。「根っこは同じ。大国は自分たちのために太平洋をごみ捨て場にしてもいいと考え、そこに住む人たちを使い捨てにしている。小さくて貧しい国だから、どうなってもいいのでしょうか」


トランプ米大統領が温暖化防止の新たな国際ルール「パリ協定」からの離脱を表明した時は、ツイッターで「アメリカ、いい加減にして。付き合いきれない」と怒りをあらわにした。


太平洋諸国への関心が高まったのは、SNSの発達も大きく影響していると感じる。「以前は声を上げても太平洋の中にとどまっていたが、いまは力強い言葉は瞬時に世界中に拡散され、人々を動かす。そんな中で、太平洋の若い世代にも大国に従うのではなく、自分たちの未来をつくっていこうという自信が芽生えている」。キャシーは島で若い世代のリーダーを育成する団体を立ち上げ、動き始めている。


(市川美亜子)

(文中敬称略)

(本編3「『航行の自由』で攻防」に続く)



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