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トイレから愛をこめて

[Part6]市場の行方








日本の家庭用トイレの4分の3を占める温水洗浄便座。便器一体型を含む国内市場は約1660億円(富士経済調べ、2013年)だ。衛生陶器の国内市場は、メーカー最大手のTOTOとライバルのリクシルが大半を占める。トイレの新規需要を支えるのは住宅建設だが、国内の新規着工戸数は14年度に88万戸で、10年前から3割近く減った。新たな市場をどこに求めるかで、トップ2社の戦略は異なる。


TOTOは世界17の国と地域に拠点を置き、欧米や中国などの富裕層を主眼に、水洗トイレ用の衛生陶器販売のシェア拡大を目指す。観光で来日する中国人による温水洗浄便座の「爆買い」が話題になったのを覚えている人も多いだろう。


一方のリクシルは、人口が増え続ける中、上下水道のインフラが未整備のアフリカなどに可能性を見いだし、水や電気を使わない「循環型無水トイレシステム」を売り込む手法をとる。


国内ではおなじみの温水洗浄便座だが、TOTOなどによると、欧州での販売数は年間4万~5万台、米国でもその数倍程度だという。TOTOは「米国では、お尻に関わる言葉はテレビCMに出せず、話題にすることすらタブーという文化の壁に阻まれている」とみる。トイレが風呂と同じ空間にあると、漏電の恐れのある電化製品は使えないという事情もありそうだ。


業界誌「セラミック・ワールド・レビュー」によると、衛生陶器の生産量で世界1位はロカ(スペイン)、2位はコーラー(米国)。ただ、世界市場を独占するほどではない。便器の多くが重く壊れやすい陶製で輸出に向かないこと、地域性を反映することなどが理由のようだ。



(杉崎慎弥)



(今回の「編集長から」は「糞尿戦争」です)




取材にあたった記者

杉崎慎弥(すぎざき・しんや)

背中に水がかかるかも、との恐れから、温水洗浄便座を使ってお尻を洗ったことがなかった。この特集を機に、勇気を出して自宅で体験してみた。なるほど、元の世界には戻れなくなるというのもうなずける使い心地だった。


とはいえ、一部の地域を除き、海外で温水洗浄便座を見たことがない。それぞれの国や地域には歴史・文化に根ざした、異なるトイレがあった。


でも、一つだけ世界共通なのは、誰も排泄から逃れられないということだ。日々の暮らしで気分良くトイレに行けないことほど、ストレスを感じることはない。それ以前に、途上国ではトイレがないために、感染症や下痢による死者が後を絶たない。トイレが命の支えなのは紛れもない事実だ。食事中に気軽にトイレのことを話題にするぐらい、いとおしさを持っても罰は当たらないだろう。


/1978年生まれ。国際報道部などを経てGLOBE記者。


浜田陽太郎(はまだ・ようたろう)

1966年生まれ。社会保障担当論説委員などを経てGLOBE記者。今回、生まれて初めてアフリカの地を踏む。ナイロビのスラムにあふれるエネルギーが印象的だった。


田玉恵美(ただま・えみ)

1977年生まれ。文化くらし報道部などを経てGLOBE記者。着飾った女性が手を洗った後、トイレットペーパーで手を拭くのを時々見かける。なんか残念。









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