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大人って何だろう?

[Part3]世界は「日本化」日本は「欧米化」






illustration:Noritake

大人になるのが早いのは途上国。就労や結婚の年齢も若いうえ、生存のためにも必要となる。一方、先進国の若者は雪崩を打って未成熟化に向かっている。個人の成熟度は社会の成熟度と反比例する。先進国で今、高校を卒業したての若者を大人と見なす人はいない。


家庭を夫婦単位でとらえる英米仏などの場合、子が成人すれば独り立ちする「家出」型が従来の自立モデル。一方、家族主義の日韓など儒教文化圏や、イタリアをはじめとするカトリック文化圏は「親孝行」型だ。


未成熟さが進み、社会に適応できなくなった若者は、どこへ行くのか。路上や家の中だろう。家の中だとひきこもりで、路上ならホームレスだ。ホームレスは日本で1万人以下と先進国では非常に少ない。一方、米国は100万人規模でいるともいわれる。ひきこもりは日本で推計約70万人に上る。


いま米国などの個人主義の建前はぼろぼろ崩れ、「家出」型の自立が崩壊している。教育期間が延びているうえ、世界金融危機以降、若者の失業率は上がっている。同居して節約しよう、となるのが自然だ。近代化と少子化で豊かになり、子どもが働かなくても食べさせていける。パラサイトシングルは全世界にいて、世界ではホームレス化より、パラサイトが増える「日本化」が進むだろう。


一方、日本ではここ数年、選挙権年齢を下げれば成年年齢も18歳に、という議論がある。そこには納税や勤労などの義務も生じる。義務も含めて大人並みに扱うのは、親が養育義務を放棄する口実にもなりかねない。18歳で社会に放り出される若者が増えると若者の弱者化が進み、若いホームレスが増えるだろう。日本は逆に悪い意味で「欧米化」していく。


戦時下の国は、若者を早く兵隊にという動機が強く、早く成人になってもらおうということがあるだろう。その一つの韓国は、日本に次いで世界で2番目にひきこもりが多い。「若者を成熟させるには徴兵制しかない」と言う人がいるが、兵役を実践する国で若者の成熟がどうなっているか考えた方がいい。


成熟は本当に必要なのか。ITやサブカルの世界で目立つ人の多くは「未熟」。彼らが社会を面白くもしている。


(構成 藤えりか)





さいとう・たまき 

1961年生まれ。筑波大学医学医療系社会精神保健学教授。ひきこもり研究で知られる精神科医で批評家。著書に『ヤンキー化する日本』など。



本編2へ続く)







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