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[Part1]聖地で踊ってみた/スペイン・イビサ島



イビサのクラブ「パチャ」。深夜の盛り上がりは最高潮/photo:Kamba Ryousuke



ズン、ズン、ズン、ズン……。重低音が響き渡るダンスフロアに1000人以上がひしめき、激しく明滅する光の下で、一心不乱に体を揺らす。5月上旬、クラブダンスの聖地として名高い、スペイン・イビサ島で記者も踊ってみた。深夜の老舗クラブ「パチャ」は、むせかえるような熱気が充満していた。




入場料は5000~1万円ほど。すりばち状のフロアの底の部分にあるお立ち台では、肌もあらわな専属ダンサーたちが、あやしく腰をくねらせる。欧米人、アジア人、地元の人たち。学生に医師、銀行員から熟年夫婦まで、客層は多彩だ。


汗、喧騒(けんそう)、人いきれ。絶え間なく押し寄せる音の洪水の中から、自分好みのビートを探り当て、体の周波数を合わせる。あとは、無心に踊るだけだ。スピーカーからの振動で、胸や腹の皮がビリビリと震えているのがわかる。酒の酔いもあいまって、高揚してくる。「何もかも忘れて、踊りまくろう」


隣で盛り上がっているゲイのグループとハイタッチを繰り返していたら、「服を脱げよ」と誘われた。丁重にお断りしたが、一人ひとり好き勝手に踊りながらも、どこかでみんながつながっているような、奇妙な連帯感が楽しい。


イビサは島全体が世界遺産/Photo:Kamba Ryousuke

午前7時前。音楽がやむと、フロアに残された100人足らずが、DJブースに向かって拳を突き上げ、喝采を送った。心地良い疲労。解放感と虚脱感がないまぜになったような、何とも言えない感情がわき上がってきた。


ダンス産業はイビサの主要な観光資源だ。島内に数十軒あるクラブを目指し、世界中から多くの観光客がやってくる。






チルアウトの時間



「イビサ流」の創始者の一人、DJピッピ/photo:Kamba Ryousuke

地中海のリゾート地として、ヒッピーからセレブまで幅広い層に愛されてきたこの島が、ダンスの聖地として知られるようになったのは1980年代。ロックやポップス、レゲエなど、ジャンルにこだわらない地元DJの自由な選曲が評判を呼んだ。英国をはじめ欧州各国のDJにも次第に「イビサ流」が広がり、本場を一目見ようと、ダンス好きの若者たちが大挙して訪れるようになった。60年代に4万人ほどだった観光客は、昨年には270万人まで膨らんだ。


イビサの魅力を知るうえで重要なのが、「チルアウト」という概念だ。踊り疲れた頭を冷やし、体を休めることを意味する。イビサには、そんなチルアウトに適したスポットが無数にある。



日没の瞬間、歓声があがった/photo:Kamba Ryousuke

たとえばビーチ。記者も踊り明かした後、砂浜に体を横たえ、ただひたすらにダラダラと過ごした。中にはホテルをとらず、海辺に寝泊まりして、夜になるとクラブへ向かう猛者もいるらしい。日が傾いてきたら、今度はサンセットバーへ。地中海に沈む夕日を眺めながら、ゆったりとした音楽に浸り、心地良くまどろむ時間は、至福のひとときだ。


真夜中のクラブで浴びる熱狂のリズムと、昼間のビーチで聞こえる潮騒のリズムは、表裏一体の関係にある。豊かなチルアウトの時間があればこそ、ダンスの快楽が一層、際立つ。踊っていない時間も含めて極上のダンス体験なのだと、イビサは教えてくれる。


(神庭亮介)

(文中敬称略)

(次ページへ続く)



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