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世界の書店から

「野次馬」たちの大騒動

[第218回]泉京鹿 翻訳家

「政府は嘘の情報を発表して真相を覆い隠すことが慣例化」する中国で、「大衆はネットのデマを検索し、それらをつなげて真相を想像した」。ニューヨーク・タイムズなど海外メディアに発表した社会批評『中国では書けない中国の話』(河出書房新社)にこう書いたのは、劉震雲に先立つ10月に来日した余華。


『活着』(邦題「活きる」)はチャン・イーモウ(張芸謀)監督によって映画化され、94年にカンヌ国際映画祭で審査員グランプリと主演男優賞をダブル受賞。世界に作家・余華の存在を広く知らしめた出世作である。


日本軍撤退後の国共内戦、土地改革、大躍進、文化大革命と1940年代から70年代までの激動の時代を生き抜いた男が語る過酷な人生。映画は文化大革命の描写が問題視され、現在も中国国内での上映許可は下りていない(海賊版で中国人の多くは観ているけれど)が、本は売れ続けている。いま書店に並んでいる25周年特別改訂版は、韓国語版、日本語版、英語版、繁体字版の後書き、前書きも収録され、それぞれが書かれた当時の外国の読者への余華の思いを読み比べることができる。刊行から来年で25周年、余華が把握しているだけでもすでに1000万部超えとか。親、子、孫三代にわたる読者もいる次の世代へと語り継ぎたいこの名作は40の言語に翻訳され海外でもロングセラーになっているが、2002年刊行の邦訳は現在絶版。残念でならない。


(次ページへ続く)

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