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[第199回]読み継がれる必読の名文@北京

泉京鹿 翻訳家



photo: Semba Satoru

近年、相次いで登場した若い人気作家の、ネットやドラマ、映画とのマルチな展開でヒットする小説は数あれど、「10年後、20年後も果たして読まれているだろうか」と思うものは少なくない。昨年の中国書籍市場におけるフィクションのベスト100のうち、2016年の新刊は4作品のみ。そのほかはすべて2015年以前の既刊、多くは10年、20年、それ以上のロングセラーというデータもある。なんと80年前に書かれ、今日多くの人に読まれ続けている小説もある。


『駱駝祥子(らくだのシアンツ)』はまさにそんな作品だ。林語堂らが1935年に創刊した当時注目の雑誌「宇宙風」誌上で36年から37年にかけて連載され、後に出版された。老舎は日本でも広く読まれてきた中国の文豪だが、なぜいまベストセラー?


1899年生まれの老舎は1924年にイギリスに渡り、中国語教師として生活しながら『老張的哲学(張さんの哲学)』を発表、作家としてのスタートを切った。30年に帰国し、山東省の山東大学などで教鞭を執ったが、36年に大学を離れて専業作家生活に入る。最初に執筆したのが『駱駝祥子』だ。


日本でも早くは1943年に竹中伸訳で、その後も幾度となく翻訳され、愛されてきた作品だ。岩波文庫の立間祥介の名訳を始め、大山潔訳の『戯曲 駱駝祥子』など日本語で楽しめる翻訳が現在も入手可能だ。筆者も立間訳で、今から四半世紀以上前、学生時代に読んだ忘れ難き作品だ。北京での留学準備の過程で読み、さらに北京生活の折々に、海甸(海淀)、西苑、新街口、東交民巷など実際に目にした地名が物語を思い出させ、たびたび読み返した。90年代初めには、まだ北京大学の周囲に舗装されていない道があり、馬やロバが農作物や荷物を乗せた車をひいて砂埃が舞い上がる光景を日々目にしたし、駱駝を引いている人を見かけることもあった。観光地などで、客を駱駝に乗せて写真を撮らせるという商売があったから、あるいはそこに通う駱駝だったのかもしれない。



(次ページへ続く)

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