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中国を意識、自己規制広がる香港 台湾との連携で活路を模索

香港の映画監督ン・ガーリョンさんに聞く


中国返還から20年、大陸の影響力が強まるなか、香港では「一国二制度」の行方を危ぶむ声が広がる。その姿に「明日の自分たち」を重ねるのが台湾だ。政界のみならず映画界でも連携を始めた両者をつなぐ、香港の映画監督、伍嘉良(ン・ガーリョン)に現状と課題を聞いた。




——中国の習近平・国家主席が、香港で国家の安全を守る法整備や青少年への愛国教育を訴えています。


きわめて危険だと感じています。香港の教育はすでに変革が進み、深層のところで大陸を崇拝するような変化が起きています。実際に香港では2015年、中国共産党に批判的な本を扱った「銅鑼湾書店」の店主らが失踪、中国当局に拘束されました。将来、こうした書店主は地下に潜らざるを得ないと思っています。


——監督は、中国政府の影響力が強まり、表現の自由を大きく制限された2025年の香港の未来像を描いた映画『十年』(公開中)を発表しました。この作品は香港ではヒットしましたが、中国大陸では上映禁止です。


(香港のアカデミー賞にあたる)香港電影金像奨の作品賞を受賞しました。授賞式の様子も大陸で放送されませんでしたが、複数の友人によると、規制をかいくぐってネットからダウンロードして作品を見た人が多かったそうです。


香港は今、「これからどうなる?」といった不安が渦巻いています。これに映画監督としてこたえようとしました。もし文化大革命のような歴史が繰り返されたらどうなるか。そんな問題意識を今作に盛り込みました。


反響は思った以上でした。社会の状況がよければ、このような作品は必要ない。作品が受け入れられるのはいいことだけれど、とても複雑な気持ちでもあります。


私は大陸のブラックリストに載ったでしょうね。だから大陸にはその後、行かないようにしています。


——逆に、大陸とのつながりを意識しなければ、自由は保たれるということでしょうか。

香港にはまだ、こうした作品を作る自由があります。でも、今や映画産業に携わる人の多くは大陸とも仕事をしている。大陸との関係に影響が及ばないよう、香港の映画界は自己規制を働かせています。今、香港映画界が落ち込んでいる原因はそこにあります。


懸念は、表現の自由だけではありません。撮影で香港の養鶏場を取材しましたが、養鶏業は消滅寸前です。香港市民は今や水も食料も大陸に依存しています。香港の地元産業は10年後、どうなっていることか。


——香港では中国からの独立を議論する若者もいます。


加えて、大勢の若者が台湾への移住を考えています。文化的にも似ているし、中国の標準語「普通話」さえ話せれば台湾で勉強も続けられます。


一方で、香港に残ってたたかい続けようという若者もいますし、私もそうしたいと思っています。ただ、民主化を求める若者たちが中心部を占拠した14年の「雨傘運動」後、香港社会に無力感が広がっています。何をしても変わらないという空気です。若い人たちがたたかうのをあきらめること。それが私の最大の懸念です。


——台湾でも14年に「ひまわり学生運動」が起きました。「今日の香港、明日の台湾」というスローガンが広がり、政界では議員同士の連携も強まっています。


映画界もそうです。台湾の映画監督に声をかけ、連携を始めています。今から10年後、台湾がどうなっているかを台湾の監督5人が描いた台湾版『十年』の製作陣に私が入り、18年に完成予定です。タイ版や、是枝裕和監督による日本版も進んでいます。


台湾も香港と同じように、中国大陸の影響のもとで、自分たちのアイデンティティーを探っています。政治や経済、国際関係でも活路をそれぞれ見いだそうとしています。台湾の状況は、香港よりまだましですけれど。


(聞き手・GLOBE編集部 藤えりか)


伍嘉良 Ng Ka—Leung

1981年生まれ。香港理工大学デザイン学部を卒業後、映画やテレビドラマの製作・監督に携わる。『十年』は香港で2015年にわずか1館で上映されるや異例のヒット、16年に香港電影金像奨の作品賞を受賞。


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