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働き方改革の時代に コンサルタントに聞いた「大企業病」への処方箋

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「働き方改革」が叫ばれている。いかに効率良く働き、成果を出すか。大手コンサルティング会社ベイン・アンド・カンパニーのパートナーで、組織デザインなどを専門とするエリック・ガートンは新著『TIME TALENT ENERGY』で、組織の生産性を上げるマネジメントを提案する。

――「時間(TIME)、人材(TALENT)、意欲(ENERGY)」の三つに焦点をあて、組織の改革を唱えています。

私たちは長く、資本戦略や資金調達について考えてきました。しかしここ最近、世界的に金融緩和が行われ、資金は豊富に存在します。一方で人的資源は非常に貴重なのに、金融資本ほど管理されていません。低生産性に苦しむ企業を観察し、カギは労働の質で、人的資源をいかに活用するかだと気づきました。組織構造の過度の複雑化や意思決定の遅れ、不必要な会議などの大企業病も、人的資源の活用の仕方で解決できます。

――組織の問題はこれまでも指摘されてきましたが、日本の企業は特に何が問題ですか。

現代のデジタル化とグローバル化が進み、変化もどんどん加速するなかでは、企業の構造は複雑化し、大企業病にかかりやすく、問題がより深刻化しやすい状況にあります。しかも、日本の企業はグローバル企業と比較しても、時代に追いつけていないようにみえます。

――時間(TIME)の管理では、個人だけでなく組織として改革に取り組むべきだと訴えていますね。

個人の努力だけではどうにもならない点が多いのです。たとえばベインの調査によれば日本企業はグローバル企業と比較して、会議に明確な目的設定がなく、出席者が準備不足で役割も不明確、出席者が会議中に別のことをするなど十分に議論に参加していないといった非効率なところがみられます。このため内部調整に時間がとられ、機動的な意思決定ができないのです。これらは組織的な取り組みで解決できるでしょう。

――意外だったのが、優秀な人材の比率に優良企業とそれ以外の企業で顕著な差がないということです。

どちらも15%程度です。なので、どう優秀な人材を配置するかが非常に重要なのです。グーグルではすぐれたエンジニアはそうではない人たちに比べ300倍の生産性があるといいます。優秀な人材を生かすも殺すも企業次第。漫然と配置するのではなく、最重要業務に集中的に投下すれば、はるかに大きな成果が得られます。

――働く人の意欲をどのように引き出すかにもモデルや方法論があるのですね。

日本では組織に忠実に見えても、実は働く意欲が低く、組織に「面従腹背」の人も多くみられるようです。改革には、リーダーの役割が非常に重要です。リーダーはこまごまとした日常業務の管理者ではなく、部下のやる気を奮い立たせ、当事者意識をもたせるのが役割です。それから、働く人の自主性と自律性を大事にすること。ネットフリックスやリンクトインといったデジタルネイティブの企業はこれを非常に大事にしています。しかし、デルタ航空などの伝統的な企業もこの手法を取り入れています。

――大企業病は、多くの人が自分の会社のこととして思い当たると思います。なぜ改革できないのでしょうか。

大きな理由の一つが「企業文化」です。うちの社風になじまないから、と改革を拒み、言い訳にするのです。こういった企業は目的や価値観を掲げていますが、それに即した行動が伴っていません。変えようという努力、そして行動を持続させ、パターンとして定着させるに至るのは大変です。しかし、不可能ではありません。

社員のやる気を引き出し機動力を持たせ、創造力を発揮させるようにして、リスクをとることを奨励する。失敗を避けるのではなく、失敗から学べるのであれば、失敗も恐れない。こうして、起業家精神に富む、革新的な組織がつくれます。ハードに、同時に賢く働くことは可能なのです。(聞き手・編集委員 秋山訓子)

エリック・ガートン Eric Garton

1965年生まれ。組織プラクティスのリーダーも務める。約20年にわたり、消費財から通信まで幅広い業界における企業の組織デザインや企業統合、コスト削減等のプロジェクトを手掛けている。