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[第94回]イランのレスリング 敵対する米国との懸け橋に

決勝戦で米国のアンソニー・ラモス選手と組み合うイランのハサン・ラミヒ選手
photo: Kanda Daisuke




政治的に対立を続けるイランと米国。そのイランで開かれたレスリングの国際大会で、イラン人観衆から米国代表の選手たちに大きな声援が送られた。スポーツは政治を超えられるのか。(前テヘラン支局長・神田大介)




イランの首都テヘランからイラクへ向かう街道の途上にある、イラン西部の都市ケルマンシャー。その屋内競技場に特設されたリングの中心で、2人の男が四つに組む。スタンドを埋めた数千人から地響きのような声援が飛んだ。


「U・S・A! U・S・A!」


2月16日、8カ国が参加したレスリング・フリースタイル男子のワールドカップ、予選の米国対ロシア戦。際どい判定で劣勢に立った米国選手を、後押しするように会場を揺らしたのは、イラン人観衆だった。


2週間前まで米国は出場すら危ぶまれていた。トランプ大統領がイランを含む7カ国からの入国を拒否する大統領令を出すと、イランは報復に米国人へのビザ発給を停止。レスリング代表が標的になった。


もとより両国の関係は険悪だ。イランがイスラム革命を起こした翌年、1980年に国交を断絶する。テヘランの米大使館が襲撃された事件が原因で、イランは米国を「大悪魔」(故ホメイニ師)、米国はイランを「悪の枢軸」(ブッシュ元大統領)と呼んできた。


レスリングはそんな両国をつなぎとめてきた。断交後、初めてイランに米国のスポーツ選手が入国したのは98年2月の国際レスリング対抗戦。これまでに米代表はイランを15回、イラン代表は米国を16回訪問したという。今回、動いたのはイランのレスリング協会。米国の参加を求める嘆願書を出すなど政府に働きかけ、ほどなくして米国の連邦地裁が大統領令を差し止めたこともあり、一転して出場が認められた。


一番人気、米国のバローズ選手
photo: Kanda Daisuke

エースのジョーダン・バローズが入場すると、「ジョーダン」「ジョーダン」とコールが起きた。観戦した教師モスタファ・モルサレム(36)は「参加してくれた米代表には感謝しかない。大統領が誰でも関係ないよ」。




(次ページへ続く)

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