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匿名の言葉、実名の言葉

アフリカ研究者 白戸圭一 17

2013年のネルソン・マンデラの追悼式

日本は匿名での発言が好き?


筆者のように文章を書く仕事をしていると、何らかの媒体に執筆したコラムや記事に様々な反響をいただく。とりわけインターネットの時代になって以降、寄せられる反響数は爆発的に増加した。

「自由にモノが言えない社会」よりも「他人の悪口でも自由に言える社会」の方が良いと思うので、インターネット上の書き込みの内容は、それが筆者に対する中傷や罵詈雑言であっても気にしていない。

しかし、日本語のインターネット空間の様々なコメントを眺めていると、内容よりも気になることがある。それは、日本語のインターネット空間における「匿名・ハンドルネーム」の多さだ。筆者がある程度できる唯一の外国語である英語のインターネット空間と比べると、あくまで印象に過ぎないが、日本語空間のコメントは「匿名・ハンドルネーム」のものが圧倒的に多いように感じられる。


インターネット空間だけではない。例えば、事件や事故を伝える日本の新聞の社会面には今日、「近所の男性(43)」や「同じマンションに住む女性(25)」といった匿名のコメントが多く、匿名を多用する傾向が年々強くなっているように感じる。米国や南アフリカで暮らしていた時に読んでいた英字紙では、あまり見かけなかった表記の仕方である。


総務省が毎年公表している「情報通信白書」の2014年版には、ソーシャルメディアの利用の仕方について国際比較した調査結果が載っている。例えば「Twitter」の利用状況を見ると、日本では利用者の実に75.1%が匿名である。他の国の匿名での利用率を見ると、米国35.7%、英国31.0%、フランス45.0%、韓国31.5%、シンガポール39.5%──だ。

同じ調査で「SNSの実名公開における抵抗感」を尋ねた結果をみると、日本では「抵抗感がある」との回答が41.7%に達する。他の国の回答を見ると、米国13.1%、英国11.7%、フランス15.7%、韓国11.2%、シンガポール13.6%──だ。

日本人は匿名での発言が好きなのだろうか。それとも、本当は日本人も実名で好きなことを言いたいのだが、実名で発言すると面倒なことに巻き込まれやすい社会なので匿名で我慢しているのだろうか。あるいは匿名だからこそ「真実」や「真理」に言及できる、ということなのだろうか。


(次ページへ続く)

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