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トルコ・エルドアン政権と戦う!…猫の話です~『猫が教えてくれたこと』

東京・新宿の猫カフェ「きゃりこ」でインタビューに答えるジェイダ・トルン監督=仙波理撮影


シネマニア・リポート Cinemania Report [#73] 藤えりか


これは、トルコのエルドアン政権と戦う面々の物語だ。……といっても、人間の話ではない。18日公開のトルコ映画『猫が教えてくれたこと』(原題: Kedi)(2016年)は、イスタンブールのそこかしこで気ままに暮らす猫たちと、猫なしでは生きられないトルコの人たちとの日常を描いている。実はこの猫たち、あわや自由を奪われそうになったらしい。来日したジェイダ・トルン監督にインタビューした。

東京・新宿の猫カフェ「きゃりこ」の猫。意志を感じる目が印象的=仙波理撮影

トルン監督と、東京・新宿の猫カフェ「きゃりこ」で待ち合わせた。撮影の仙波理記者とともに早めに着いて猫たちに近づき、気を引こうとしてみたが、ほとんどスルーされる始末。写真を撮りたい、あわよくば撫でたい!というこちらの勝手な思いを見透かされてしまっただろうか。


ところがトルン監督が到着、一緒に席に座ると、猫たちが何匹も寄ってきた。もちろん、トルン監督めがけて。むむむ、敗北感……。でも、それも当然。トルン監督の猫歴は筋金入りだもの。

ジェイダ・トルン監督が猫カフェにやってきた途端、猫たちが続々集まってきた=「きゃりこ」、仙波理撮影

イスタンブールで生まれ育ったトルン監督にとって、猫は「とても特別な存在」だ。6歳くらいの頃に出あった猫とものすごく仲良くなったのがきっかけだという。「彼女は私を友だちとして選び、私の人生にかかわり、とても特別な間柄となった。私もたくさんの子猫を産んだ彼女を助け、彼女から多くを学んだ」


トルン監督は11歳で一家でイスタンブールを去り、ヨルダンのアンマンやロンドン、ニューヨークなどを経て今はロサンゼルスで暮らす。常に猫を求め、友人の猫たちの世話もしているが、英米では街角で猫に出あうことがなく、寂しい思いをしてきたという。実際、欧米の大都市では野良猫も野良犬もほとんど見かけない。動物福祉のため、あるいは衛生上の懸念から多くは動物保護施設に収容されているためだが、イスタンブールでは清潔そうな猫たちが、人間が住む家の中や街のあちこちを自由に行き交い、気ままに暮らしている。古代エジプトから今のトルコに渡り、欧州に広がったとされる猫は、イスラム教の預言者ムハンマドの逸話にもたびたび登場。トルコの猫はペットでもない、「野良猫」とも言えない形で、人間といわば対等の関係を築いている。「イスタンブールを歩くと誰しも、猫がついてくる経験をする。結果的に、猫なしの暮らしは考えられなくなる」とトルン監督は言う。


『猫が教えてくれたこと』はそんなイスタンブールの猫たちが主役だ。高級レストランのオーナーと関係を築き、客の邪魔にならないよう紳士的に食事をいただく美食家デュマン、ブティック店主を支援者として子猫に食べ物を運ぶ母猫サリ、工場地帯で労働者たちのアイドルとなっているベンギュ……。撮影クルーは地面に這いつくばって、猫目線で彼らの日常を撮り上げた。

『猫が教えてくれたこと』より、レストランでおねだりする美食家デュマン。勝手に店内に入ったりはしない紳士ぶり ©2016 Nine Cats LLC

最近はテロやIS(イスラム国)などの動向を中心に報じられがちなトルコ。だからこそ、「違った観点で見てほしかった。トルコがいかに人間と猫の関係を独自のやり方で築いているか、世界にも知ってほしい」とトルン監督は言う。


米国で今年2月、たった1館で上映されるや話題を呼び、130館へと拡大。英語以外の映画がヒットしづらいと言われる米国で、外国語ドキュメンタリー歴代3位の興行収入を記録した。でも、あれ? 米国って愛犬家大国だったはずでは。

『猫が教えてくれたこと』より ©2016 Nine Cats LLC
(次ページへ続く)

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