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世界で広がるエクソシズム。なぜ?~『悪魔祓い、聖なる儀式』

『悪魔祓い、聖なる儀式』より Ⓒ MIR Cinematografica – Operà Films 2016


シネマニア・リポート Cinemania Report [#72] 藤えりか


エクソシスト、あるいは悪魔祓いと聞けば、かつてのホラー映画の身震いするような映像をつい思い起こす。でもその単純な連想こそ、心の病への偏見や排除の心理につながっているのかもしれない。18日公開のイタリア・フランス映画『悪魔祓い、聖なる儀式』(原題: Liberami)(2016年)は、世界的に需要が増えているエクソシズムの知られざる世界を稀に映像に収めたドキュメンタリー。フェデリカ・ディ・ジャコモ監督にスカイプでインタビューした。


主な舞台はイタリアの地中海に浮かぶシチリア島。約1200年もの間続くというカトリックの「悪魔祓い=エクソシズム」を実践する限られた神父のひとり、カタルド神父のもとに、科学や医療では解明しづらい問題や病を抱えた人たちが各地から続々と集まり、悩みを神父に打ち明け、いわばお祓いしてもらうさまを映し出す。本来はひっそり続いてきたエクソシズムを、賛否いずれの解説も加えない形でドキュメンタリー映像に収めるのは「恐らく世界で初めての試み」だそうで、昨年のヴェネチア国際映画祭でオリゾンティ部門の作品賞を受賞した。

フェデリカ・ディ・ジャコモ監督=本人提供

「自分自身はカトリック信者ではない」とジャコモ監督。だがある時、神父のエクソシスト養成コースについての記事を読んで興味を惹かれたそうだ。今作にもその様子は出てくるが、養成コースを開かなければならないほど、需要が高まっているということだ。「エクソシズムを受けたい人はラテンアメリカでもフィリピンでも、米国でも増えている。エクソシスト神父はイタリアに多いけれど、それはバチカンがあるから。エクソシズム信仰の広がりは世界的な現象だと思う」


エクソシズムはカトリック教徒の多いイタリアでも「あまり知られていないし、一般的ではないですよ」とジャコモ監督。基本的には秘密裏に実施され、撮影許可もめったにおりないためだ。「でも人々がエクソシズムを求める現象はどんどん大きくなっている。一方でエクソシズムを批判する層はいるため、批判に抗い、実際はどんなものなのか説明したい人たちも増えている。一般にはフィクション映画でしか見られないわけだから」。ジャコモ監督はそうやって、カタルド神父や教会に撮影の意義を説いたそうだ。

『悪魔祓い、聖なる儀式』より Ⓒ MIR Cinematografica – Operà Films 2016

悪魔祓いは映画『エクソシスト』(1973年)で広く知られたためもあってか、興味本位のような記事は今も目につく。歴史的には、病を持つ人たちが「悪魔祓い」「魔女狩り」の名の下、死に至らしめられた忌まわしい過去もある。それもあってエクソシズムを否定する人たちは今も目立つ。だが、求めてやまない人がいるのも現実だ。精神的に病んでしまった、あるいはそのように見えたら「変わった人」として「排除」される傾向は今もあるし、病院に行ってもただうつ病薬を処方されるだけ、ということもあるわけだから。



(次ページへ続く)

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