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アメリカの若者も恋愛離れ?~『ポルト』

インタビューに応じるゲイブ・クリンガー監督=仙波理撮影


シネマニア・リポート Cinemania Report [#63] 藤えりか


日本の恋愛離れ、あるいは「疑似恋愛」市場の発達は海外でもニュースになるほどだが、アメリカでも「恋愛離れ」は進んでいるようだ。そんな問題意識を背景に、ポルトガル・仏・米・ポーランド映画『ポルト』(原題: Porto)(2016年)を撮ったゲイブ・クリンガー監督(35)。30日公開を前にインタビューした。


『ポルト』はその名の通り、ポルトガル第2の都市ポルトが舞台。恵まれた家庭に育ちながら、折り合いが悪い家族と離れてひとり暮らす米国人青年ジェイク(故アントン・イェルチン)は、愛犬と心通わせつつ、臨時雇いの仕事を転々とする日々。ある日、考古学を学ぶ年上のフランス人留学生マティ(ルシー・ルーカス、31)とカフェで出会う。マティは年上の恋人、ポルトガル人教授ジョアン(パウロ・カラトレ)に求婚されていたが、自由を求める気持ちも強く、異国の「よそ者」同士、意気投合して一夜の関係を結ぶ。ジェイクは翌日、ジョアンと一緒のマティと鉢合わせになり気まずくなるが、彼女を忘れられないジェイクはしつこくつきまとう。突き放すマティだが、変化が訪れる。

『ポルト』より © 2016 Bando a Parte – Double Play Films - Gladys Glover – Madants

製作総指揮はジム・ジャームッシュ監督(64)。カンヌ国際映画祭カメラドール(新人監督賞)の『ストレンジャー・ザン・パラダイス』(1984年)や、永瀬正敏(51)と工藤夕貴(46)の出演でも話題になった『ミステリー・トレイン』(1989年)などで一世を風靡し、日本では先月『パターソン』(2016年)が公開されたばかりのインディペンデント映画の旗手だ。彼は初のフィクション映画を撮ったクリンガー監督に、「やりたいようにやらせてくれた。彼は何も干渉しないタイプで、脚本や編集を批評することもなかった」そうだ。


クリンガー監督はブラジル人だが、6歳で米国に移住。パリやバルセロナなど欧州にも住んだことがあるが、基本的にはシカゴを長らく拠点としている。いわばジェイクやマティ同様、「よそ者」の視点を持ち続けてきた。「『よそ者』には共感するよ。言葉も文化もわからない異国でつながりを求めようとする感覚は、我がことのように感じる。ジェイクとマティはまさに、孤独から逃れようとし、なじみのない文化でよそ者でいる状況から脱しようとしているんだ」

『ポルト』よりアントン・イェルチン © 2016 Bando a Parte – Double Play Films - Gladys Glover – Madants

「よそ者」の視点は、ジェイクを演じたアントンも幼い頃から意識してきたことだろう。彼は旧ソ連レニングラード(現ロシア・サンクトペテルブルク)出身。両親はかつて、フィギュアスケートの人気ペア選手として1972年の札幌冬季五輪への出場も目されていたが、当局によって出場への道を閉ざされたと伝えられる。イェルチンはその理由について、米メディア「デイリー・ビースト」のインタビューに「ユダヤ人だからなのか、ソ連国家保安委員会(KGB)が出国させたがらなかったということなのか」と語っているが、ともかく両親は後年、生後約半年のアントンを連れて米国に亡命した。


クリンガー監督は言う。 「アントンの両親は米国に移っていきなり、旧ソ連ではなかなかアクセスできなかった映画や音楽などに触れた。米国で育ったアントンに両親は、この世界にいられてラッキーなのだという感じをもたせたことと思う」

『ポルト』より © 2016 Bando a Parte – Double Play Films - Gladys Glover – Madants

そんなアントンのアイデアは、今作に多く取り入れられた。アントンが今作の公開を待たず、27歳の若さで事故死したのはとても残念だ。


それにしてもクリンガー監督、初のフィクション映画監督作を恋愛モノにしたのはなぜ? 米国をはじめ、ラブコメも含めた恋愛直球の映画はこのところ激減しているのに。



(次ページへ続く)

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