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アメリカ人は9.11映画を拒み始めたのか~『ナインイレヴン 運命を分けた日』

インタビューに答えるマルティン・ギギ監督=山本和生撮影



シネマニア・リポート Cinemania Report [#61] 藤えりか


2001年の米同時多発テロの惨事そのものを、もはや直視したくないアメリカ人が目立っているということだろうか。9日公開の米映画『ナインイレヴン 運命を分けた日』(原題: Nine Eleven)(2017年)をめぐる米メディアやネット上の反応を見て、考えさせられた。来日した監督・共同脚本のマルティン・ギギ(52)に、インタビューした。


今作は、米同時多発テロが起きた2011年9月11日朝、ニューヨークの世界貿易センターのエレベーター内で起きた実話を元にした2010年の舞台劇『Elevator(原題)』の映画化だ。ウォール街の億万長者ジェフリー(チャーリー・シーン、52)が、北棟の弁護士事務所で妻イヴ(ジーナ・ガーション、55)との離婚協議を終えて帰る途中、ともにエレベーターに乗り込む。金持ちの年上男性に別れを告げに来た若いロシア人女性ティナ(オルガ・フォンダ、34)、アフリカ系のバイク便メッセンジャー、マイケル(ウッド・ハリス、47)、ヒスパニックのビル保全技術者エディ(ルイス・ガスマン、61)と乗り合わせた、38階あたりに来たところで強い振動とともにエレベーターが止まる。エディがエレベーターの通信装置を使って同僚メッツィー(ウーピー・ゴールドバーグ、61)とようやく連絡をとり、飛行機が北棟に激突したと知る。続いて南棟に別の飛行機が激突、事故ではないと感づく一同。だがエレベーターはロックされたまま。5人は協力して脱出を図りつつ、立場の違いからいさかいも起きる。

『ナインイレヴン 運命を分けた日』より © 2017 Nine Eleven Movie, LLC

ギギ監督によると、舞台劇は「異なる背景を持った人たちがエレベーターで居合わせ、その違いと向き合いながら生き延びようとするさまを描いている」という。「人種や肌の色、文化や信条の違いを超え、生き延びようという点ではみんな突如として平等になる、舞台劇のそうした観点に惹かれた。どんなにお金があっても自由を買うことはできない。こうした逆境のもとでは、金持ちも貧者も関係ない。最も大事なのは人間の命だ」」とギギ監督は話した。


舞台劇では富裕な白人とビル保全技術者、イスラム教徒が登場するが、映画はヒスパニックとアフリカ系を加えて「より多様性をもたらした」。アルゼンチン出身のギギ監督らしい脚色だ。裕福なジェフリーに反発するセリフが飛び交うほか、英語風のニックネームを名乗るヒスパニックのエディにアフリカ系のマイケルが嫌みを言うなど、格差問題や、非白人層の間で起きがちな相克も描いてとてもリアルだ。そう言うと、ギギ監督は「その通り!」と言い、「多様性による対立を描くのは重要だと思った」と語った。

『ナインイレヴン 運命を分けた日』より © 2017 Nine Eleven Movie, LLC

エレベーターでの対立や会話は、チャーリーや、クリエイティブ・コンサルタントとして迎えたチャーリーの兄エミリオ・エステベス(55)らとも膨らませたという。


ギギ監督は今作の製作をプロデューサーから持ちかけられた当初は、引き受けるかどうか躊躇したそうだ。「今はそんな時期ではないと思ったし、9.11の物語はある種の聖域だと思ったからだ」とギギ監督は言う。

『ナインイレヴン 運命を分けた日』より © 2017 Nine Eleven Movie, LLC

だが、犠牲者や遺族100人以上についてリサーチを重ねるうち、「非常に心が痛むけれど、やはり今やるべきだと思うようになった」という。ギギ監督はリサーチの中で、娘を失ったタクシー運転手に出会った。「娘と朝食をともにしようと世界貿易センターの上階のレストランへ行き、注文後に財布を地下駐車場の車に忘れたのに気づいて1人、下へ降りた。そこへ飛行機が突っ込み、彼は娘を失った。とても心痛む、つらい物語だ」


そんな悲劇に接するにつれ、ギギ監督は、「勇気をもって恐れず、この物語を世に出すべきだと思った」。共同で書いた脚本は、チャーリーの配役を念頭に当て書きした。

マルティン・ギギ監督=山本和生撮影

だがオファーすると、チャーリーも当初、受けるのをためらったという。



(次ページへ続く)

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