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女性ポスト、増やせばビジネスにも~『ワンダーウーマン』

インタビューに答えるパティ・ジェンキンス監督=山本裕之撮影



シネマニア・リポート Cinemania Report [#59] 藤えりか


女性ポストが少ないからって、ただ増やせばいいってもんじゃない、という意見がある。でも数はビジネスにもなるのだということを、この映画で改めて痛感させられている。


女性のアクションもの、ましてや女性監督による映画はもうからない、というのがハリウッドの長年の定説だった。アメコミ史上初の女性スーパーヒーローを実写映画化した『ワンダーウーマン』(原題: Wonder Woman)(2017年)は、それを大きく覆して米国で記録的大ヒット、世界各地でも人気を博している。25日の日本公開を前に来日したパティ・ジェンキンス監督(46)にインタビューした。

『ワンダーウーマン』より © 2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC

物語は第1次世界大戦のさなか、女性だけのアマゾン族が暮らす島セミッシラから始まる。一族の王女ダイアナ(ガル・ガドット、32)=ワンダーウーマンは、叔母のアンティオペ将軍(ロビン・ライト、51)に鍛えられ、身体能力も知性も磨き上げられていた。そこへ米国人大尉スティーブ・トレヴァー(クリス・パイン、36)の小型飛行機が不時着。海から救い上げた彼からドイツ軍の毒ガス兵器開発計画を聞かされ、ダイアナは計画を阻止して戦争を終わらせようとスティーブとともにロンドンへ。その後、彼の協力者も伴い、戦地ベルギーへ向かう。


原作は1941年に誕生した米DCコミックスの女性スーパーヒーロー。これまでテレビシリーズ(1975~79年)やアニメ映画などは作られてきたが、主役に据えての実写映画化は初めてだ。ハリウッド大手スタジオ「ワーナー・ブラザース」傘下のDCフィルムズなどが製作、ワーナーが配給。米国の興行収入データベースサイト「ボックスオフィスモジョ」によると、6月に米国で公開されるや、興行収入は最初の週末で1億325万ドルと、女性監督史上で過去最高に。世界的にも計8億ドルを突破する大ヒットとなっている。

『ワンダーウーマン』より © 2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC

今作の構想は1996年にさかのぼる。その後、他の俳優の主演や監督の案が浮上・内定しては変更となり、長引いた。『モンスター』(2003年)でシャーリーズ・セロン(42)にアカデミー主演女優賞をもたらしたジェンキンス監督へのオファーが最終決定となっての映画化だが、なぜ21年もの長きにわたったのだろう? ジェンキンス監督に尋ねると、「ただ恐れていただけだと思う」という答えが即座に返ってきた。「スーパーヒーロー映画はこれまで主に、男性の観客に支持されてきたジャンル。女性のスーパーヒーローなんてとても支持されない、興行収入が稼げないのでは、と恐れたのだと思う。でももはや、興行収入は男性だけでなく、あらゆる人たちによって動く時代。ワーナー・ブラザースも、こうした映画を出す自信をついに持てるようになった」。女性観客が増え、女性の監督や役柄の少なさがメディアなどで取りざたされるにつれ、ビジネスの定説も覆せたということか。


原作が誕生した1941年は、「スーパーマン」や「バットマン」など力強い男性のキャラクターが人気を博していた。そこへ、発明家で心理学者の故ウィリアム・マーストンが「コミック本の潜在的教育効果」を唱え、読者層を広げたいDCが教育コンサルタントとして委託。マーストンは妻のアイデアなども踏まえ、「少年や少女があこがれる女性のスーパーヒーロー」を創造した。マーストンはハーバード大学の学生だった頃、英国で女性参政権運動を率いた故エメリン・パンクハーストに会って触発されたとも伝えられる。今作の劇中、ロンドンの軍事会議に乗り込んだダイアナが「女性がこんなところへ」と不快感を表される場面があるが、パンクハーストの思いと響きあうかのようだ。

パティ・ジェンキンス監督=山本裕之撮影

アメコミの女性スーパーヒーローといえば、「スーパーガール」に「バットガール」もいる。だが、それぞれ「スーパーマン」や「バットマン」がいてこその「周縁キャラ」(ジェンキンス監督)だ。「『ワンダーウーマン』はそうではないからこそ、本当に壮大な映画を作りやすかった」とジェンキンス監督は言う。


とはいえ「ワンダーウーマン」も長らく、誕生当時のフェミニズム的な背景とは違うとらえ方をされてきた。体の線を強調し、露出も多い衣装は「男性目線で過剰に性的」と言われ、米国の星条旗をあしらった色とデザインは「アメリカ帝国主義の象徴」とやゆもされた。


最近は国連で「騒動」が起きた。国連は昨年10月、ワンダーウーマンを「女性のためのエンパワーメント名誉大使」に任命。ニューヨークでの就任式には今作に主演のガルと、テレビシリーズに主演したリンダ・カーター(66)がそろって出席した。だが国連職員が会場に押し寄せ、「女性の身体的イメージを強調すべきでない」「マスコットはいらない」などと、拳を振り上げて抗議運動を展開。反対の署名も4万4千以上集まり、わずか約2カ月で「解任」された。


ジェンキンス監督は言う。「他の男性のスーパーヒーローはそんなことを言われたりしないのに、なぜ彼女だけそんな言われ方をするのか。ダイアナも、自分自身がいいと思う格好をして然るべき。服装で批判するべきではない」

『ワンダーウーマン』より © 2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC
(次ページへ続く)

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