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@世界はオタクたちが回している 松井博 #01

シリコンバレーのアップル本社=米カリフォルニア州クパチーノ

オタクたちは何を信じて生きているのか?

この地では、優れたプログラムコードを書く者が誰よりも尊敬されます。毎日会社でコードを書いているのに、週末にも自宅でコードを書いて試作品を作ってくる人も少なくありません。面白いアイデアや優れたコードはすぐに採用され、製品化されていきます。製品が大当たりすれば株価が上昇し、ストックオプションで億万長者です。これが一番わかりやすい、シリコンバレーでの錬金術なのです。


このような環境ですから白人特権など通用しません。生産性が低ければ肌の色がなんだろうと容赦無く職を追われ、さらに優秀な者がその穴を埋めます。上司が有色人種の移民などというのもごく当たり前の風景ですし、私自身、アップル本社で勤務していた時には上司がイラン人やインド人だったこともありました。部下にもあらゆる人種がいました。肌の色で差別されないのは僕ら有色人種にとっては生きやすい環境ですが、ここまでプレイングフィールドが平らだと、これまで特権に守られて生きてきた白人たちにとっては厳しすぎるのかもしれません。その結果なのか、クパチーノ市では、1980年には人口の70パーセントを占めていた白人は、今では24.9パーセントにまで減ってしまっています。


ここはどの国の企業なのか?

またこの地で働いていると、僕はいったいどこの国に住み、どの国の企業に勤めているのだろう?と疑問に思うことさえあります。社内ではあらゆる訛りの英語が飛び交っていますし、アメリカを想起させるものといえば会社の前に立つ星条旗くらいしかありません。食堂の従業員でさえ多人種で構成されており、パスタはイタリア人がゆで、寿司コーナーには日本人です。街中にも日本、インド、韓国、タイ料理など、あらゆる国のレストランが立ち並んでおり、英語がろくに通じないお店も少なくありません。


信じるのはコードだけ

「われわれは王も大統領も投票も拒否する。信じるのは大まかな合意と動くコードだけだ」


これは、インターネットの生みの親と称される科学者デービッド・ダナ・クラーク氏の言葉ですが、シリコンバレーのオタクたちの間で広く共有される意識そのものです。この地がアメリカであってアメリカでなくなってしまったのも、オタクたちが世界を揺り動かすのも、この「動くコード至上主義」による必然なのかもしれません。


「宇宙を凹ましてやろう」はスティーブ・ジョブズの決まり文句でしたが、このセリフもまた、オタクたちの琴線に触れる言葉なのです。



松井 博

米国にて大学卒業後、沖電気工業、アップルジャパンを経て、米国アップル本社に移籍。iPodやマッキントッシュなどの品質保証部のシニアマネジャーとして7年間勤務。2009年に同社退職。カリフォルニア州にて保育園を開業。15年フィリピン・セブ島にて Brighture English Academy を創設。著書に『僕がアップルで学んだこと』『企業が「帝国化」する』など。




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